9割方が成約したクリスタルの取引会【熊野孝文・米マーケット情報】2024年11月5日
クリスタルライスが10月30日に開催した取引会は、上場数量は52産地銘柄5万9142俵で前回(10月2日)に比べ半分以下に減少、加重平均の売り唱え価格は前回に比べ3%値上がりして2万7626円(関東着1等基準 税別 以下同)になった。驚くのは売り唱え価格で9割方が成約したことで、成約したものの中には来年の6月末まで渡し条件というロングの契約もあり、この成約状況を見る限り、買い手の卸は、需給は緩和するとは見ておらず、むしろ先行きの玉確保にシフトしたと見ることが出来る。

取引会での主な銘柄の上場価格は表の通りだが、いずれの産地銘柄も値上がりしており、加重平均価格は前回より788円の値上がりしており、前年同期比では1万2306円、率にすると80%高にもなる。個別銘柄の売り唱え価格は、青森まっしぐら2万6400円~2万6650円、岩手ひとめぼれ2万6700円~2万7450円、宮城ひとめぼれ2万6750円~2万8100円、宮城つや姫2万6800円~2万8100円、秋田あきたこまち2万6800円~2万8800円、山形はえぬき2万7200円、山形つや姫2万9750円、福島会津コシヒカリ2万7100円~2万7600円、福島中通ひとめぼれ2万6800円~2万6900円、福島天のつぶ2万5950円~2万6600円、茨城コシヒカリ2万6650円~2万7550円、茨城にじのきらめき2万6150円~2万6650円、栃木コシヒカリ2万7200円~2万7950円、栃木とちぎの星2万6300円~2万6600円、千葉コシヒカリ2万6850円~2万7100円、千葉ふさこがね2万6000円~2万6400円、新潟魚沼コシヒカリ3万1500円、新潟一般コシヒカリ2万9500円~3万円、富山コシヒカリ2万8450円、石川コシヒカリ2万8150円。
取引主催者や参加者の情報を総合すると、今回の取引会での上場数量の減少はある程度予想されていたが、主催者が産地に働きかけても売り玉が増えなかった。増えなかった理由は前回上場した分の多くは買い手が付いたことと農協系統の集荷量が減少したことから、その減少分の手当てが急がれたことが上げられる。そのことが典型的に現れたのが値がり額が大きかった新潟コシヒカリで、系統玉の提示数量は県内卸でさえ事前に言われていた数量の4割カットで、販売価格も2段階価格を提示されている。卸の中には新潟一般コシヒカリの数量がそれほどまでに減少するのなら代替として魚沼コシヒカリの提示を求めるところもいるほどでコシヒカリ確保が急務になった。取引会前に大手卸が通年玉として新潟コシヒカリを確保するために3万円を産地側に示したという噂があったが、それが現実のものになっている。さらに卸の関心を惹いたのが取引会前に公表された9月末現在の6年産米の検査実績で、新潟コシヒカリの検査数量は13万9621tで、品質が低下した5年産米前年同期よりも5万tも少なかったこと。地元の業者に言わせると農協のカントリーにも入っていないし、どこに行ったのかわからないというが、降雨で検査が遅れているというには大きな数量だ。また、コシヒカリの全国合計の検査数量も67万7998tで前年同期に比べ10万㌧も少ない。このためコシヒカリの産地の中には卸と事前契約したコシヒカリの販売を減らすため他の代替品種を提示するところもあるほど。
家庭用精米の御三家である北海道ななつぼしの検査数量は10万4871t(前年同期比1万7085t増)、秋田あきたこまち10万6489t(同1万3189t)で、昨年同期より多く検査されているが、コシヒカリだけが大きく減少している。
取引会が開催された10月30日には農水食で食糧部会が開催された。ポイントは令和5/6年の主食用米需要量が705万tあったのに対して、令和6/7年の需要量をそれよりも31万tすくない674万tと予想していることで、このことに関しては出席した委員からもなぜそれほどまで需要量が落ち込むのかという疑問の声も上がったが、農水省側はこれまで用いてきた回帰式による需要見通しを変えず、逆に前年度の需要が増えた理由について①値ごろ感、②歩留まりの減少、③インバウンドの3つの要因を上げ、令和6年産米ではいずれも解消、もしくはダウントレンドを覆すほどではないと説明した。
さらに過去米価が値上がりして30万㌧程度需要が落ち込んだ例を示し、傍聴した人からは農水省の担当課長がわかりやすく整然と流れるように説明することに感心する声も聞かれた。ただし、その説明がいま日本で起きているコメ問題の核心に触れているかというとそんなことはない。
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