コメの輸出は生産者の理念頼みになってしまうのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年2月12日
2024年(1月~12月)のコメ輸出量は前年より21%も増えて4万5112tになった。直近5年間で2.6倍に拡大した。さらにはパックご飯の輸出量も2298tで前年より44%も増え、直近5年間で2.8倍にもなっている。まさにコメの輸出は順風満帆に見える。コメの輸出業者の中でも扱い量が多い(株)クボタが2月5日に開催された農政調査委員会主催のコメ産業懇話会で講演した。講演では同社の全体的な輸出事業の説明に加え、ハワイとWebで結んで現地の状況が具体的に説明された。講演後の質疑応答で「7年産米の取組み」について問われたが、同社の答えは「輸出の理念を生産者に理解してもらうしかない」というものであった。

講演で「コメ輸出の現状と今後の可能性」について、(株)クボタの農機国内営業部アグリ生販推進部宇部善男部長が、ハワイのコメ事業について㈱クボタハワイの住中卓史社長がそれぞれ30分ずつ概要を話した。
それによると同社が日本米の輸出を手掛ける意義として「日本産米の販路を海外に拡大させ、輸出量増大を図り日本の農業支援並びに発展に貢献すること」を掲げ、事業内容の特徴としては「海外に日本産米を輸入・精米・販売会社を設立し、日本から輸入した玄米を海外で精米・販売する」、さらに業務用自動洗米炊飯器などを用いて、販売後の炊飯指導まで行うことにある。玄米での輸出を選択したのは、精米輸出では品質劣化を招き食味が落ちるためで、玄米を保冷コンテナで輸出している。輸出事業をスタートさせたのは2011年で、香港向けに輸出、2013年にはシンガポール向けを開始、昨年2024年にハワイ向けの輸出をスタートさせた。
海外と日本のマーケットの違いについては、日本は家庭内消費が約7割を占めているが、香港やシンガポールは真逆で家庭内消費は3割で外食が7割を占めており、外食産業向けの拡大施策が必要になっている。現地では品質が劣化しないように自社で玄米保冷倉庫供え、ここで保管しており、精米工場は香港、シンガポールとも精米ラインが2ラインあり、それぞれ年間4000tの精米能力がある。玄米の管理システムは輸出する際、日本で玄米袋にバーコードを張り付け、トレサビリティを確保するとともに精米袋にもラベルを張るようにして最終製品まで誤混入を防止、安全性を担保している。また、炊飯に関しては現地では日本式の炊飯には馴染みが薄いため、コメの品種や店舗に合わせた炊飯方法を提案・指導している。さらには洗米機や酢合わせ機など業務用厨房機器の導入も提案している。輸出実績は、初年度の2011年は40tであったが、年々増加、2024年度では香港が3600t、シンガポール3017t、ハワイ232t、その他2792t、合計で9641tになっている。
現地では硬めであっさりしたコメが好まれるが「10年やってコシヒカリが美味しいという人が出てきた」と言うほどで食文化が変化するのには時間がかかるが、日本食レストランが世界中に広がっていることなどをあげ「今後、日本米が世界に広がっていくと思う」と述べた。
ハワイは人口140万人でコメの生産は行われていないが、1人当たりの消費量はアメリカで最も多い。これまではカリフォルニア米が市場を占めてきたが、最近は日本米のほかベトナム産米も増えている。日本米の市場としては日本食レストラン(515軒)や日系小売店(ドン・キホーテ、ニジヤ、ミツワ)がある。精米工場はオワフ島にあり900tを精米できる。
国内でのコメ調達は、全国19道県から調達しており、集荷は各地の集荷業者に委託して連携しながら集荷量の増加に努めている。今後については「香港、シンガポール、ハワイでの顧客拡大」と「アジア、アメリカ本土、中東など各拠点からの近隣国への再輸出」などを示した。直近の課題としては「主食用米の価格高騰により生産者の輸出用米離れの懸念」をあげ、7年産米をどれだけ確保できるのか見通せないとした。
講演後、出席者からも「輸出用米の価格のベースは1俵9000円程度だと思うが、7年産米はどう対応するつもりなのか」という質問が出たのに対して「まさに悩んでいる最中で現在の価格では現地で捌くのは難しい。生産者に輸出の理念を理解してもらわないと満足できるような価格を提示できない」と述べた。また、ズームで参加していた新潟の農業生産者は、台湾に日本米を輸出しており、近日中に値上げ交渉を行うが取引が成立しなくなる恐れがあるとしていた。シンガポールに輸出している卸も「新規需要開拓米の助成金は今の状態では焼け石に水で、現地で炊飯して稲荷寿司として提供、定着し始めたが、コメがなければ成り立たない」と述べるなど、日本米輸出に取り組むところはいずれも7年産米をどうするのか大問題になっている。
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