【スマート農業の風】(12)ドローン散布とデータ農業2025年3月7日
農業に限らず、産業用ドローンの活躍の場面が増えてきました。特に空間撮影は、ドローンの登場で新しいアングルの撮影ができるようになり、いままで制限のあった狭い空間の立体的撮影も可能となりました。皆さんも映画やコマーシャルフィルムでドローン撮影だよなぁと感じることが多いと思います。
例えば、トンネルの中に自動車と一緒にカメラが入って行って、自動車の屋根越しで撮影しながら、自動車を追い越して、正面からの撮影を続ける映像は、手持ちのカメラやヘリコプターを使ったカメラでは絶対不可能なものでした。狭いところを飛ぶ技術や、カメラを制御する技術は、撮影するドローンの進化といえます。
撮影するドローンの進化は、ジンバルやカメラのレンズ振動制御技術にも応用されていて新しいスマートフォンでは、ジンバルを使わないでジンバルを使っているようなカメラの制御効果を期待できるものもあります。有名スマートフォンのコマーシャルフィルムで実際のスマートフォンを使って撮影された映像は衝撃的でした。撮影者は激しくジャンプをしながら体を動かして被写体を追っかけて行くけれど、撮影された被写体はずっと中央にいてぶれませんでした。実際、この原稿の筆者も動きのある動画撮影の時に使用し、大変役立っています。まさにジンバルなんていらない、スマートフォンがあれば、動画撮影用のカメラもいらないと言えるほどです。
農業でドローンといえば、数年前から導入が期待されているリモートセンシングドローンと農薬散布ドローンがあります。
センシングドローンは、ほ場を空中から撮影することでほ場作物の状態を確認し、生育の判断をおこなうものです。これらのデータは追肥にも生かされ、作物の生育ムラをなくし、収量を上げることにつながります。選択収穫の多かった大型葉物野菜も、一斉に収穫をおこなう機械の登場で、生育ムラのない作物の育て方が重要になってきています。そのため、可変施肥や的確な追肥など、生育ムラを作らない精密農業が期待されています。
ただ、前回お話しした人工衛星画像のリモートセンシングなどもあり、データの価格差・画像の入手しやすさなど、いろいろな場面で比較されています。この点は、ユーザーが正しく理解し、自分たちの生産方式にどちらがあったサービスか見極める必要があると言えます。
農薬散布のドローンは、無人ヘリに代わり最近よく使われています。当初は、無人ヘリの得意としない山間地など狭小地での代用作業として、ドローンを活用してきましたが、ドローンの大型化、無人ヘリの代替え問題などもあり、ドローンの農薬散布も多く見られます。
ドローンの大型化は、大手ドローンメーカーだけでなく、様々なドローンメーカーではじまっていて、積載量の大型化と空散時間の長期化が期待できます。ドローンの精密散布技術は可変施肥データを読み取り、散布する技術です。ブロードキャスターや田植え同時施肥機のような大きな面積をいっぺんに作業する可変施肥とは違いますが、追肥の可変施肥など新しい技術で役に立っています。ドローンの個人所有は、自分のやりたい作業のタイミングで散布ができるのが魅力です。所有に関するコストも無人ヘリに比べて安価となりますが、購入にはそれなりのコストがかかります。補助金などもよく調べて導入の際に役立てる必要があります。
個人所有のドローンは筆者の周りにも増えていて、当初は自分の所有するほ場作業だけの予定でしたが、周りの作業を請け負ったり、作業受託の手伝いをしたりと使用場面がどんどん増えているようです。ドローンなどの作業用に購入した機械は、自分たちの作業はもちろん、請負作業など広く作業をおこなうことで、購入コストの一部を充てんしながら、地域農業のお手伝いをおこなうというのが理想だと思います。
途中でも少し話しましたが、無人ヘリによる農薬防除から、ドローンによる農薬防除に切り替わっている地区が増えています。その理由は、無人ヘリの更新ができないことや、農薬散布ドローンの数が出そろったなど、様々です。切り替わりの理由は、ドローンの手軽さと作業手順の簡単さ、自動操縦、があると思います。加えて、データを利用した散布計画・散布依頼の明確化などあり、現場での作業の手軽さが普及のキーです。
Z-GISを使って、散布請負をしているドローン散布業者は、「いままでの白地図を使った作業指示書は、現場の土地勘がないと作業しづらく不便でした。Z-GISを導入することで、作業場所がタブレットに表示され、現在位置表示で作業場所の間違いがなくなりました」と言っています。また、作業を依頼する農家や防除組合も「いままで散布ほ場に旗を立てるなど事前の準備が必要でしたが、現在では旗立ての必要もなく、ほ場指示のための現場立ち合いもなくなりました」と言っています。
これらはドローンに限ったことはありませんが、ドローンをきっかけに新しい技術を導入し、スマート農業化に貢献できるひとつの事例と言えると思います。
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