コメ輸入で岐路に立つ小泉農政【森島 賢・正義派の農政論】2025年6月16日
●小泉農相のジレンマ・・・コメ輸入と食糧安保
小泉進次郎農政が、順調に走っているように見える。
就任直後に直面した米価高騰の問題を、鮮やかに処理しつつあるように見える。だが、まだまだこの問題は予断を許さない。高騰を抑える手段として使った備蓄米が、底を見せようとしているからである。
次に農相が考える手段は何か。
首相が言うには、国内に備蓄米が無くなれば、外国からの輸入米に頼るしかない。そのように言って、農相とその近辺にいる政治家は、輸入するしかない、と国民に思い込ませようとしている。
しかし、これは事実と違う。
●「国内にコメがない」は官製のフェイクニュース
政府は、国内に備蓄米が無くなるというが、これは事実と違う。無くなるのは、政府の備蓄米であって、民間にも備蓄米がある。その他に後日の供給のための流通在庫米もあって、備蓄米の役割りを担うこともできる。
そうした国産米が国内にあることを、先週、報道各社が映像つきで報じていた。映像には、米屋さんの店の棚に国産米が大量に積み上げられていた。
それなのに、なぜ政府は国内にコメが無くなると誤解させるように言うのか。それは、コメの輸入はやむを得ない、と国民に思わせるためだろう。そのために、国内にコメが無くなるという、いわば官製の(あのトランプ大統領が大嫌いな)フェイクニュースを流しているのだろう。
ここには、小泉農相の、食糧安保を軽視する姿勢が透けてみえる。
●食糧安保論の神髄
薩摩隼人である川野重任先生が言われた、食糧安保についての言葉を、ここに記しておこう。
先生は、ある酒席で「戦いに敗れた将兵が、敵将に対して「命だけはお助け下さい。食糧は自分たちで調達します。」と言えば許してくれるかもしれない。しかし、「・・・食糧も下さい。」などと乞えば、首をちょん切られるか、奴隷として売り飛ばされるだろう」と言われた。
われわれ若い学生は、農学の核心である食糧安保論の神髄に触れた思いで、心に深く刻んだ。
●コメ輸入の賛成派と反対派の意見
小泉農相は、いま、米価高騰を鎮静化するためにコメを輸入するか否か、という岐路に立っている。賛否両派の主張を聞いてみよう。
• 【輸入賛成派の主張】国産米は生産費が高い。緊急時だから安価なコメを輸入し、安価で市場へ出して、事態を鎮静すべきだ。その方が効率がいい。
• 【輸入反対派の主張】主食のコメまで外国に依存することは、食糧安保を危機に陥れるものだ。国産米で事態を鎮静化させるべきだ。緊急時というなら、せめて時限を明示すべきだ。
このように、両派の主張は、効率を重視して食糧安保を軽視するか、それとも、国家の安泰のために食糧安保を重視するかで、真っ二つに分かれている。
●米価は仮需で上下している
農相や、その近辺にいる政治家は、市場に於ける「仮需」の意味が、まったく分かっていないようだ。分かり易くいえば、今後、値上がりすることが予想されるものを、売り急ぐことはない、ということである。これは、正常な市場行動である。
米価が上がっているのは、今後も米価がさらに上がることを予想して、市場への供給量を、さらに減らすからである。そうすれば、米価はさらに上がる。こうした悪循環に陥っているのだろう。
さらに言えば、米価が上がっているのは、いつになれば、米政策の刷新によって需給が正常に戻るか、が分からないからである。
中・長期的に言えば、農業者の農業離れが進み、供給量が需要量よりも少なくなることで、つまり、仮需が相対的に大きくなることを予想して、米価が高騰しているのである。
輸入反対派が、「緊急事態」の期限を明示せよ、と言っているが、これは、この点を突いた要求なのである。
つまり、農業離れを阻止する米政策の要求なのである。
●野党の意見がわからない
参院選を前にした野党はどうか。野党も2つに割れている。それだけではない。コメ問題を、それほど重要な政治課題ではない、と考えている政党が多い。
これでは、農村だけでなく多くの国民の支持は得られないだろう。
一部の論者や政治家は、野党には政権奪取の意気込みが無いのではないか、と疑っている。
●参院選で国民の審判が下る
1と月後には参院選がある。逡巡してはいられない。目先の対策だけでなく、小泉農政の真価が問われるだろう。その対策が拠って立つ小泉農相の農政哲学を聞かねばならない。小泉農相は、食糧安保をどう見ているのか。重視するのか、軽視するのか。
どちらの道を進むのか。それによって、国民が参院選で厳正な審判を下すことになる。
食糧安保を軽視する政治が横行すれば、やがて日本人は、奴隷として売り飛ばされるかもしれない。(本稿はChatGPTから貴重な示唆を得た)
(2025.06.16)
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 石川県2025年7月4日
-
(442)エーカレッジ(作付面積)から見る変化【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月4日
-
【JA人事】JAながさき県央(長崎県)里山耕治組合長を再任(6月27日)2025年7月4日
-
人的資本を人事制度で具体化する 「令和7年度 人事制度改善セミナー」開催 JA全中2025年7月4日
-
「有機薄膜太陽電池」で発電した電力 ブドウの着色に活用 実証実験開始 山梨県2025年7月4日
-
株主優待制度を新設 農業総研2025年7月4日
-
夏の訪れ告げる初競りの早生桃 福島県産「はつひめ」販売 青木フルーツ2025年7月4日
-
ニッテン「スズラン印」ロゴマークをリニューアル 日本甜菜製糖2025年7月4日
-
「国際協同組合年」認知度調査「生協に参加したい」が7割 パルシステム2025年7月4日
-
洋菓子のコロンバン主催「全国いちご選手権」あまりんが4連覇達成2025年7月4日
-
野菜わなげや野菜つり 遊んで学ぶ「おいしいこども縁日」道の駅とよはしで開催2025年7月4日
-
北海道初進出「北海道伊達生産センター」完成 村上農園2025年7月4日
-
震災乗り越え健康な親鶏を飼育 宮城のたまご生産を利用者が監査 パルシステム東京2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「農政技術(森林)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「獣医師(家畜保健衛生分野)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
信州の味が集結 JA全農長野×ファミマ共同開発商品 長野県知事に紹介2025年7月4日
-
障害者のやりがい・働きがい・生きがい「ガチャタマ」で応援 パルシステム埼玉2025年7月4日
-
参議院選挙に行ってとんかつ割引「選挙割り」実施 平田牧場2025年7月4日
-
作物と微生物の多様な共生が拓く農業の未来 意見論文が米国植物科学誌に掲載 国際農研2025年7月4日
-
国産率100%肥料の商品を販売開始 グリーンコープ共同体2025年7月4日