小泉農政は二兎を追え ・・・ 先物市場で考える【森島 賢・正義派の農政論】2025年6月30日
●消費者と生産者のコメ離れを防げ
小泉進次郎農相が米価問題で国民から支持を得るためには、消費者米価は安く、生産者米価は高くなるような農政を示さねばならない。
そうしなければ、消費者のコメ離れは続くし、生産者のコメ離れも続く。その結果は、主食の座を占めていたコメが、その座を降ろされて、輸入小麦で作ったパンやメンに奪われることになる。それは、食糧自給率のいっそうの低下を招き、食糧安保をさらなる危機に陥れる。
二兎を追う、とは消費者と生産者の両者のコメ離れを防ぐことを意味している。至難の業である。だが、成し遂げねばならない。
せめて、3週間後に迫っている参院選までに、そのための法令化と制度化の骨格を示すべきだろう。
小泉農相に、その意思と力があるか。
●市場原理主義農政と決別せよ
そんなことは無理難題だ、という評論家がいるだろう。この2つの米価は、市場で決まるもので、必ず一致するものだ、という評論家がいるだろう。
この考えは、市場原理主義者の偏った考えである。このような偏った考えで農政を進めている先進国は、世界中のどこにもない。
ここで念のために言っておくが、消費者米価は市場価格のことである。一方、生産者米価は市場価格に政府からの補填金を加えた、生産者手取り単価である。生産者にとっては、市場価格が問題なのではなく、某野党がいうように、手取り単価、さらに言えば、手取り総額が生産者の関心事なのである。
本稿では、小泉農相のコメ離れの政策を、先物市場で評価しよう。下の図がそれである。
●先物米価はコメ政策の鏡である
上の図は、今年の新米が出回る10月を限月にした先物米価の図である。期間は、この先物の取引が始まった昨年11月の月初から、先週の週末までである。
この先物米価は、農水省が公表している業者間の現物取引を基準にしている。しかし、現物取引ではないので、保管費用が云々とか、馴染みの業者だから云々、などという夾雑物はない。10月末のコメ政策を鏡のように反映した買い控えや売り惜しみなどの需給関係を、純粋に、かつ敏感に映しだした米価である。
●コメ政策で揺れる先物米価
この図を、やや詳しく見てみよう。
直近の高値は、5月23日の3万1、300円(玄米60kg当たり)で、安値は、6月13日の2万5、400円(同前)である。これをスーパーなどでの販売米価、つまり、消費者米価にすると、精米歩留まりや輸送費などの流通経費がかかるので、高値が4、743円(精米5kg当たり)で、安値は3、849円(同前)になる。
高値と安値との間で、これほどに大きな差があるのは、コメ政策が大きく揺れているからだ、と考えられる。
●消費者と生産者のコメ離れ
もしも消費者米価が、米価先物市場が予想しているようになったら、どうなるか。たとい、予想したような安値が続いたとしても、まだ高い。消費者のコメ離れは続くだろう。それどころか加速するだろう。
また、もしも生産者米価が、米価先物市場が予想しているようになったら、どうなるか。予想したような安値は安すぎる。これが続いたとしたら、生産者のコメ離れは今後も続くだろう。
どうすればいいか。
●二兎を追え
消費者のコメ離れを防ぐには、米価をもっと下げねばならぬ。その一方で、生産者のコメ離れを防ぐには、米価をもっと上げねばならぬ。二兎を追っているように見える。
だが、そのように見えるのは、論者が市場原理主義を信奉しているからである。だから、政治による生産者への補填金を考えない。
だが、食糧安保を最重要事と考える論者は、そのようには考えない。政治による生産者への補填金の制度化を考える。
いったい、小泉農相は、どちらの論者か。
石破 茂首相が率いる自公政権と、コメ大臣を自称する小泉進次郎農相には、先進国と同様に、補填金を制度化する意思と力があるか。
国民は、ここに刮目して、3週間後の参院選に臨み、厳正な審判を下すだろう。
(2025.06.30)
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 石川県2025年7月4日
-
(442)エーカレッジ(作付面積)から見る変化【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月4日
-
【JA人事】JAながさき県央(長崎県)里山耕治組合長を再任(6月27日)2025年7月4日
-
人的資本を人事制度で具体化する 「令和7年度 人事制度改善セミナー」開催 JA全中2025年7月4日
-
「有機薄膜太陽電池」で発電した電力 ブドウの着色に活用 実証実験開始 山梨県2025年7月4日
-
株主優待制度を新設 農業総研2025年7月4日
-
夏の訪れ告げる初競りの早生桃 福島県産「はつひめ」販売 青木フルーツ2025年7月4日
-
ニッテン「スズラン印」ロゴマークをリニューアル 日本甜菜製糖2025年7月4日
-
「国際協同組合年」認知度調査「生協に参加したい」が7割 パルシステム2025年7月4日
-
洋菓子のコロンバン主催「全国いちご選手権」あまりんが4連覇達成2025年7月4日
-
野菜わなげや野菜つり 遊んで学ぶ「おいしいこども縁日」道の駅とよはしで開催2025年7月4日
-
北海道初進出「北海道伊達生産センター」完成 村上農園2025年7月4日
-
震災乗り越え健康な親鶏を飼育 宮城のたまご生産を利用者が監査 パルシステム東京2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「農政技術(森林)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「獣医師(家畜保健衛生分野)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
信州の味が集結 JA全農長野×ファミマ共同開発商品 長野県知事に紹介2025年7月4日
-
障害者のやりがい・働きがい・生きがい「ガチャタマ」で応援 パルシステム埼玉2025年7月4日
-
参議院選挙に行ってとんかつ割引「選挙割り」実施 平田牧場2025年7月4日
-
作物と微生物の多様な共生が拓く農業の未来 意見論文が米国植物科学誌に掲載 国際農研2025年7月4日
-
国産率100%肥料の商品を販売開始 グリーンコープ共同体2025年7月4日