花屋あっての花農家【花づくりの現場から 宇田明】第67回2025年8月28日
令和のコメ騒動が世間を騒がせています。
農業傍流の花産業は、本流のコメ問題にコメントをする立場にありません。
ただ、花農家が違和感を覚えるのは、生産者の論理ばかりが優先され、消費者と直接向き合う小売の視点が置き去りにされていることです。

農業は生産者だけで完結するものではありません。
農産物もまた、「つくって終わり」ではなく、「売れてなんぼ」の商品。
その需要を喚起し、消費者の購買意欲を引きだすのは小売の大切な役割です。
特に、食糧安全保障の観点からは「不要不急」と見なされている花産業は、小売、すなわち花屋なくして成り立ちません。
鉢ものは完成した商品ですが、切り花はただの素材にすぎません。
いわば、自動車や電化製品の部品のようなものです。
1輪のバラも、花屋が水あげをして萎れを回復させ、下葉やトゲをとり除き、ラッピングをしてリボンを添えて、ようやく消費者の心を動かす商品になります。
花屋の技術力、デザイン力、センス、そして販売力があってこそ、花の魅力が伝わり、消費へとつながるのです。
「失われた30年」で花が売れなくなり、全国の花屋の数が減りつづけています。
その結果、花農家もおなじように減っています。
当コラム第11回で紹介したように、花屋が1店減ると花農家は4戸減ります。
逆に、花農家が4戸減ると花屋が1店減るということもできます。
両者はまさに不離一体の関係。
花の生産を回復させるには、まず花屋が儲かることが必要不可欠です。
花屋が1店減ると花農家が4戸減る【花づくりの現場から 宇田明】第11回
https://www.jacom.or.jp/column/2023/06/230615-67349.php
ところが、コロナ禍以降は花農家が急激に減り、花屋が必要とする花が手に入らない「品薄単価高」が続いています。
結果として、花屋の経営が悪化するという悪循環に陥っています。
生産と小売はクルマの両輪です。
どちらが欠けても前に進むことはできません。
それにもかかわらず、現状の行政施策は生産振興一辺倒です。
いくら生産を増やしても、小売が衰退していては消費者に届かず、市場は広がりません。
これは、川の流れにたとえることができます。
川下の川幅が狭まっているのに、上流から大量の水を流しても水はあふれるばかりです。
花産業の再生に必要なのは、生産振興だけの「一本足打法」ではなく、小売支援との「二刀流」です。
花屋が元気でなければ、需要拡大や新規顧客の獲得ものぞめません。
行政は、既存の枠組みである都道府県の花き振興協議会において、生産振興と並行して、花屋の販売促進や経営改善を支援すべきです。
「花屋あっての花農家」。
両者の共存共栄なくして花産業の再生はありません。
行政には、生産と小売の両輪を支える視点を取り入れた施策転換が求められています。
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