原子力村は村仕舞い【小松泰信・地方の眼力】2026年1月28日
開いた口がふさがらない。中部電力で発覚した原発がらみの不正行為である。

間抜けな原子力規制委員会に規制は無理
冒頭の文章で始まるのは、元村有希子氏(科学ジャーナリスト)による「サンデー毎日」(2月1日号)のコラム。
怒り心頭の文章はこう続く。「原子力規制委員会は、うその書類を審査し『揺れの想定はおおむね妥当』と結論づけていた。原子力安全の番人が、いい面の皮だ。『世界一厳しい安全基準』という金看板も地に落ちた」と。そして、「動かすなら、現状を批判的かつ客観的に分析し、想定外を排除して、あたう限りの安全を確保しなければならない。中部電力は、その客観性という生命線を踏みにじった」と断罪する。
返す刀で、「ほかの原発の再稼働審査は大丈夫なのか?」と疑問を呈し、「間抜けぶりを露呈した」規制委員会に対して、「自らの限界を認めて全電力会社を再調査すべきだ」と訴え、「安全軽視の組織文化は、なまなかな対策では改善しない。(中略)性悪説で臨まない限り、同じ事が再び起きる」と予言する。
しかし、原子力規制委員会委員長の定例会見(速記録・1月8日) で、ほかの電力会社を対象とした審査の横展開について問われた山中伸介委員長は「これまで他の事業者につきましては、審査・検査の中で、類似した不正の兆候というのは生み出されておりませんし、また組織上のその安全文化の劣化ということも、特にその検査の中で見いだされているわけではございませんので、何かこの事案を受けて、水平展開をするつもりはございません」と、のんきなことを語っている。
調査もせず再稼働など論外
ところが、しんぶん赤旗(1月21日付)は「原発不正データ算出の事業者 他原発関与の疑い」を報じた。日本共産党の小池晃書記局長と辰巳孝太郎衆院議員は20日、国会内で記者会見し、浜岡原発の「基準地震動」のデータを意図的に操作していた問題に関し、データ算出の委託を受けた事業者が他の原発にも関与している疑いがあることから、すべての原発の調査を行うことを求めた。
辰巳議員らが公開情報を調査した結果、中部電力が規制委に提出した浜岡原発の「原子炉設置変更許可申請書」の資料の中に、地震動の解析の基礎となる地質調査を委託した3社のうち、2社が東京電力柏崎刈羽原発の設置変更許可申請書にも地質調査の委託先として名前があがっていた。四国電力伊方原発を除く11原発の地質調査には、3社のいずれかが関わっていることも明らかにした。
小池氏は、「この3社を代表とする、いわゆる『原発コンサルタント』は、電力会社の意をくんで、あるいは電力会社から求められて都合のよい計算結果を出していたのではないかとの疑いがある」ことから、「調査もせず再稼働など論外であり、運転中の原発はいったん止めてでも調査すべきだ」と、強く求めた。
やめる勇気に村仕舞い
1月21日、東京電力は柏崎刈羽原発6号機を再稼働した。同社が原発を再稼働させるのは福島第1原発事故後はじめて。いわく付きのこの原発、設定ミスから制御棒に関する警報が正しく鳴らないトラブルが17日に発生。同様の問題がないか確認作業のため、当初予定していた20日の再稼働を見送っていた。ところが、わずか1日で解決したことには驚いた。のんきな原子力規制委員会は21日、6号機の制御棒全205本と警報動作の設定ミスが解消されていることを確認。これを受け再稼働となる。
めでたし、めでたしと行かないところが、この国の原子力村のだらしなさ、無責任さ、能天気さ。
翌22日の夕方、東京電力は当該原子炉の停止を発表。同日未明に原子炉から制御棒を引き抜く際に警報が鳴ったため。記者会見した同原発の稲垣武之所長は「1日、2日で片が付くとは思っていない。何日かかるか全く言えない」と述べた。
毎日新聞(1月23日付)によれば、新潟県内では再稼働を懸念する声が根強く、更なる不安拡大を招きかねない事態とのこと。
今回は制御棒の動きを制御するインバーター(直流電流を交流電流に変換する装置)の不具合。今後は、納品している東芝と原因を究明するが、インバーター自体の問題が見つかれば、残る204本の部品も含めて対応を検討する必要がある。このため、調査にかかる期間や2月26日に予定していた営業運転開始時期への影響は不明。
国の原子力委員長代理を務めた鈴木達治郎氏(長崎大学客員教授・特定非営利活動法人ピースデポ代表)は「前代未聞で普通では考えられない事態だ」「10年以上稼働していなければ、どの原発でもトラブルは起こり得る」「これまでなぜ見つからなかったのか。再稼働を急ぐために慌てて確認作業をしたのではと言われても仕方がない」とのコメントを寄せている。
この日の会見で出された、東電が原発を動かす資格を問う質問に対して、稲垣所長は「我々は事故の反省を生かす義務がある。それが私たちが原子力をやる意味だと思っている」と述べそうだが、意味不明。
福島原発がもたらし続けている災禍を考えれば、「東京電力、そして中部電力を含むこの国の原子力村に存在意義はない」と断言する。
今求められるのは、やめる勇気に原子力村仕舞い。それが、世のため、人のため、もちろん未来のため。
島根県知事の怒り
中部電力浜岡原発の安全審査をめぐるデータ不正問題で、中国電力島根原発が立地する島根県の丸山達也知事は22日の定例会見で、「怒りを覚えていますよ」と語りながら、溜飲が下がる見解を披瀝した。要約すれば次の3点。
①元村氏と同じく、性善説ではなく、性悪説に立った、徹底した審査・検査の実施。
②不正を働いている事案に関しては、再稼働に必要な審査は不許可。そして廃炉。
③当該電力会社の役員の総辞職。
丸山知事は、「ほかの原発は大丈夫なのかという疑念を生んでいる」「不許可なり廃炉にしないから、役員がいまだに居座っている。なんでみんな辞めないの。社長がノコノコ静岡県知事のところに謝罪に行くなんて、ちゃんちゃらおかしいよね」と、舌鋒鋭い批判の数々。これら、決して言いすぎではない。ひとたび事故が起こった時のことを考えたらわかること。
中国電力に対しても、同様の不正が起きた場合、「社長ら役員の辞職を求める」「辞職を含む適切な対応無き場合は、それ以降の事前了解願は受け付けない」など、すでに伝達したとのこと。立派!
「地方の眼力」なめんなよ
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