(473)設計思想の違い3:ブラジル・豪州・日本の比較から見えてくるもの【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2026年2月13日
前々回までに、牛肉の輸出を例に、ブラジル・豪州・日本の具体的な違いを簡単に記してきました。そこで、今回は良し悪しではなく、国内需要完結型の設計思想が陥りやすい罠を中心に検討してみたいと思います。
牛肉に限らず、モノを売る時に誰を顧客として想定するかは極めて重要である。身近な日常の取引であればわかりやすいが、同じ製品でも規模を拡大したり、国家間貿易になると、一気に本質が見えなくなる。これが牛肉だと考えれば良い。議論がブラジル産牛肉、豪州産牛肉という形に拡大した瞬間に、無意識下でひとつあるいは限定されたいくつかのイメージで我々は対象を考えやすい。そのため、スーパーで肉を購入する場合、産地情報も大事だが先に述べた価格や品質という最もわかりやすい判断基準に戻ることになる。
さて、以前に日本の畜産、とくに牛肉生産は基本的に国内需要完結型ということを述べた。これは国内需要向けに最適化されているという意味である。同様に、豪州の場合には輸出用に最適化されているわけだ。ブラジルは国内・海外向けが併存している。
では、牛肉に限らず、一般にある製品やサービスを提供する仕組が国内需要に最適化されているといかなる特徴が生じるか。言い換えれば、国内需要完結型の仕組みのままで海外需要を狙うと何が問題になるか、これを考えてみたい。
最もわかりやすい罠は、国際基準を「過剰品質」扱いし、「日本ではこれで十分」と解釈する傾向が生じる点である。実際、それでも国内では何の問題もない。これは、以前に述べた英語試験と同じである。TOEICだけで留学可能な国や大学もあるが、海外留学の基本的な制度設計としては、多くの場合通用しない。この派生形に恐らく「国際認証」という仕組みがある。認証取得の有無にかかわらず、国内市場を想定している限りはほぼ問題ないが、少しでも輸出を想定する場合には必要条件(十分条件ではない)が増えることになる。
次に、食品で言えば、「安全であること」と「説明可能であること」を混同してしまう可能性である。日本各地に大昔から伝わる数多くの伝統食品(定義は別として)は、長年の時間という試練に耐えて生き残ってきた以上、安全上はほぼ問題ないはずである。ところが、これを文化や気候、言語や習慣が異なる市場に出荷する場合、「説明可能であること」が不可欠になる。「国際認証」とはこの説明可能性の担保と考えた方が良い。
コスパという最近の流行り言葉をあえて使用すれば、国内需要に最適化した製品やサービスを海外市場向けに出す場合には、そこで新たに「説明可能性というコスト」が生じることになる。誤解してはいけないのは、これは管理能力や品質・製造・提供能力の差ではなく、想定している市場と顧客が異なるために発生する説明コスト、あるいは保険のようなものと理解した方がよいであろう。
ここまでくれば、あとは「使い分け」の問題となる。国内需要に特化した製品やサービスは現状の体系を維持し、輸出を想定する際には先方が最低水準として望むものが何かを考えた設計にすれば良い。そしてこれらのどちらかに焦点を絞るか、あるいは両者を(例えば)異なる製品ラインで製造するかは、まさに農業法人や企業の基本的な設計思想の問題となるだけでなく、恐らくは国家戦略としての日本の高品質牛肉輸出の方向性にも関係してくるであろう。
海外市場を想定する際、単純にグローバル化に迎合するのではなく、多少の付加的な条件を獲得することは、日本農業が自らの基本的軸足を確保したままで、選択肢を増やすための戦略的な構えの修正として考えれば十分ではないだろうか。
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