経営を可視化し事業拡大やJAとの関係も強化 担い手コンサルコンペティション 農林中金2025年3月18日
農林中金は3月17日、東京・大手町のJAビルで「担い手コンサルコンペティション」を開いた。24年度も全国では約300件のコンサルが実施され、このうち48事例を審査し、上位の4県域(栃木、長野、鳥取、熊本)を優良事例として表彰し、各事例が紹介された。オンラインでも全国のJAや信連、農林中金の関係者など226人が視聴した。
4県域の優良事例を表彰
担い手コンサルティングはJAや県域の営農経済部門とともに、担い手の経営分析や課題解決提案を行うため、2021年度から本格展開している。コンペティションは全国で取り組みを共有する目的で行われたもので今回が2回目。
栃木県は、農林中金宇都宮支店などによる肉牛を主力として「循環型農業」を行う法人に対する事業承継の事例が紹介した。同法人は経営を後継社長に移転したが、ヒヤリングと財務分析から創業者の会長が現場業務の多くを担い、会長引退後の労働力不足が課題だった。そこで、JAの専門職員が現場指導のサポートや、経理事務の請負などを支援。生産品目別の収支から作付計画の再検討も行い、計画的な事業承継につなげている。
長野県は、JA上伊那などによるリンゴ生産農家に対する収益性向上と、将来の法人化を視野に入れた経営基盤強化の事例が紹介した。この農家では10以上のリンゴの多品種栽培によりリスクを分散しているものの、品種ごとの収益差や凍霜害による収量低下などに直面していた。そこで品種ごとに収益を分析・試算し、品種構成の見直しや、JAによる早期出荷情報の提供などを提案。短期的な営業利益の黒字化から、中長期的な法人化への道筋をつけた。
鳥取県は、JA鳥取いなば、JA鳥取県信連、農林中金中国営業部による県域独自の担い手コンサルティングを実施している。これを活用した農事組合法人に対する事例を紹介した。同法人は主食用米を主力に生産し、出荷はJA、商系、自社販売がほぼ3分の1ずつ。ほ場の拡大も進めていた。財務分析から品目ごとの収支分析作業マニュアルを提案し、ほ場拡大による収支シュミレーションも実施。JAを通じたライスセンター建設やアグリビジネス投資育成からの投資も支援し、法人の事業拡大だけでなく、JAグループとの関係強化にもつながっている。
熊本県はJAくまなどによる、農業者の法人化に向けたコンサルティングを紹介した。農業者はイチゴと栗を中心に生産し、栗は単価が上昇しているものの選別に手間暇がかかり、イチゴは収穫時の傷など出荷ロスや病害虫の被害も大きかった。そこで、イチゴは「質の向上」に向けて、ほ場整備や営農指導と連携した病害予防など、栗は「両の向上」で安定利益の確保を目指すことを提案した。法人化に向けては就農環境の整備と収支の目途も示している。
JA全中、JA全農、農中総研が講評を受けた。最後に、農林中金の川田淳次常務は「農業は構造変化による系統離れの話もあり、取引形態の変化で担い手にも危機感がある。経営の"見える化"は経営者にとっても価値があり、何を"見える化"するかを必死に考え、提案できるかが問われている。今後も連合会が一体となって取り組みたい」と締めくくった。
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