神明と木徳神糧が合弁 精米・配送を共同化し効率向上 「共創モデル」で米の流通安定2025年11月10日
米卸大手の神明と木徳神糧とが合弁会社「日本精米センター」を設立し、精米工場を共同運営する。マーケットが縮小しコスト負担がのしかかる中、精米に加え配送も共同化することで効率を高め、コスト負担を軽減し、米供給の安定をめざす。そうした課題は米卸に共通しており、大手2社の協業は業界全体の注目を集めそうだ。
合弁会社「日本精米センター」設立に合意し握手を交わす木徳神糧の鎌田慶彦社長(左)と神明の藤尾益雄社長
日本精米センターを設立
神明(藤尾益雄社長)と木徳神糧(鎌田慶彦社長)は11月10日、東京都内で共同記者発表を行い、藤尾社長と鎌田社長が合弁事業について明らかにした。
神明の九州工場(佐賀県鳥栖市)を同社から分離。神明と木徳神糧とが50%ずつ出資して日本精米センター株式会社を2026年4月1日に設立する。資本金は非公開。会長は鎌田氏、社長は藤尾氏。今野稔氏(木徳神糧取締役執行役員)と舩木秀邦氏(神明執行役員)とが取締役、竹内伸夫・木徳神糧会長が監査役に就く。
同社が旧神明九州工場を日本精米センター九州工場として運営する。敷地面積は1万1442㎡、建築面積は6191㎡。搗精(とうせい)能力は月産6000玄米t。180tのサイロを23基持つ。
効率化で「全農・卸ルート」守る
神明と木徳神糧「協業の目的」
木徳神糧の九州地区での供給を支えてきた同社福岡工場(福岡県糟屋郡新宮町)は、2026年3月に現在の場所から移る必要があった。鎌田社長は「工場建て替えには何十億、100億円単位の投資になる。九州という限られたマーケットでの新工場建設は厳しく、神明に相談したら『九州の工場を一緒に』という話になった」と合弁の契機を説明し、「最大のメリットは稼働率が上がり、固定費が減少することだ」と述べた。藤尾社長は、「神明九州工場の稼働率は50~60%だったが、合弁することで80~90%まで上がる。われわれにとってもこの工場にとっても大きなプラスだ」とし、「効率化しコストを下げることで、JA・全農から米卸を経て実需に回る流通をしっかり守りたい。何が何でも成功させる」と意気込んだ。
神明九州工場(=写真)は、2026年4月1日から日本精米センター九州工場になる(神明ホームページから)。
合弁会社では、太陽光発電活用など「環境対応」、小人数で運営できる「高効率・省力化の実現」、国際認証の取得やSDGsへの取り組みを通じた「高度な工場・品質管理体制」、原料サイロを活用した「柔軟な在庫機能の確保」「共同配送による物流効率化」という5点に注力して工場を運営する。受託精米や他地域への展開も視野に入れる。神明と木徳神糧とは競業する取引先もあることから、ガイドラインを設け守秘を徹底する。
米卸の共通課題に「解」示す
木徳神糧の鎌田社長は、米卸の精米施設の稼働率について「最近では政府備蓄米で瞬間的に搗精量が増えたが、これは一過性で、今は(卸平均で)ほぼ65%だ。固定費が重い」と指摘した。「従来通りのやり方では精米卸売業の継続運営が難しくなっていく。精米施設の稼働率停滞や成長投資の難しさは、われわれ2社だけでなく、卸に共通する課題だ。共同で設備を使っていくニーズは広くある」と今回の合弁の業界的意義に言及。「九州工場をしっかり運営しながら、安全・安心な精米を消費者、実需にしっかりと届け、業界の今後の『共創モデル』をめざす。生産地から食卓をつなぐ中核として、日本のおいしいお米の安定供給と農業の発展のために挑戦を続けていく」と力を込めた。
日本の「農業と食」守るため
米の需給状況に関して神明の藤尾社長は「食糧部会で(臨時委員だった)私もずっと言ってきたが、米は3年前から足りなかった。政府は、増産から減産に変わり現場は大混乱している。全米販の見通しでは2040年、米生産者は30万人まで減り363万tしか生産できない。農水省の予測では同年、需要は493万tになる。このままでは2040年には130万tも米が足りない。人口増や地球温暖化、テロや紛争もあって近い将来、世界的な食料危機が予想される」と具体的な数字を挙げて危機感を吐露し、「日本の農業と食を守る」ことが今回の合弁の大きな目的だと説明した。
【合弁会社の概要】
名称 日本精米センター株式会社
所在地 佐賀県鳥栖市藤木町字若桜6‐8
代表者 代表取締役会長 鎌田 慶彦
代表取締役社長 藤尾 益雄
役員 取締役 今野 稔、舩木 秀邦
監査役 竹内 伸夫
事業内容 穀類の搗精及び精米
設立予定 2026年4月1日
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