【クローズアップ Jミルク最新見通し】生乳需給不均衡深刻に 脱粉期末在庫10万5400トンへ 農政ジャーナリスト 伊本克宜2021年10月4日
生乳需給が一段と悪化してきた。Jミルクは1日、最新の生乳需給見通しを発表した。生乳生産が順調な一方で、需要低迷が長引き需給不均衡が深刻だ。このままでは、生乳廃棄も生じかねない状況だ。
■生産上振れ760万トン台に
気温低下に伴い、特に都府県の生乳生産の伸びが目立つ。1日に発表したJミルクの地域別生乳生産見通しは、軒並み上方修正した。全国では760万トンを突破する。
・生乳生産見通し 単位千トン、前年対比、カッコ内は前回7月見通し
・全国 7606(7564) 102・3%(101・7%)
・北海道4285(4269) 103・0%(102・6%)
・都府県3321(3295) 101・4%(100・6%)
前回発表の7月末に比べ、生産は全体的に上振れした。北海道は、夏場に異例の暑さが続いたが、気温低下で生産が回復してきた。ただ、干ばつで自給飼料への品質、収量ともにばらつきが目立ち、今後の生産にどう影響するのか注視が必要だ。見通しでは430万トンに迫ってきた。都府県は気温の低下に伴い、生産の伸びが顕著だ。7月見通しでは2021年度は前年度対比100・6%とほぼ前年並みとした。だが今回は同101・4%と、完全に生産回復基調となっている。
■9月道外送り6万トン割れ
一方で、需要は伸びない。生乳需給がこれまでにない「異例」の事態に陥っている。象徴は全国の生乳生産の6割を占める北海道からの都府県への生乳移出量の推移だ。
・夏場の生乳道外送り推移(見通し)単位千トン、前年対比
・7月 46 74・7%
・8月 45 74・8%
・9月 55 86・1%
・10月 53 93・1%
国内酪農の課題の一つは、夏場の生乳最需要期に、いかに北海道から円滑に生乳供給を実現し首都圏、関西圏など大都市部の牛乳需要をどう賄うかにあった。だが、今年は様変わりした。
7月以降、10月までの生乳道外送りを見ても、軒並み前年対比1~2割減で推移している。特に9月の学校給食向け牛乳再開時の需給が最逼迫時に5万7000トンと6万トンの大台割れに陥った。Jミルクは「これほど夏場に生乳の道外移出が落ち込んだのは二十数年ぶり」と見る。
■18年ぶり脱粉在庫累積
生乳需給で一番深刻なのは脱脂粉乳の在庫積み増しだ。
先に見てきたように、生産は全体で上振れ。一方で、都府県の生産回復から夏場の最需要期に、北海道からの生乳移出が記録的に少なくなった。その結果、道内の基幹工場では保存の利くバター、脱粉を中心に乳製品への製造を増やしている。
問題はヨーグルトの売れ行き停滞によって、原料となる脱粉需要が滞っていることだ。
Jミルクの1日発表の見通しでは、脱粉期末在庫量は10万5400トン、前年度比129・8%と異常事態になっている。この在庫水準は18年ぶりの高さだ。
■中酪の需給動向注視
9月30日、全国連、指定生乳生産者団体などで構成する中央酪農会議は臨時会員総会と理事会を行った。冒頭あいさつで中家徹会長(JA全中会長)は生乳需給緩和に触れた。乳製品在庫は急増しており「生産基盤強化の阻害要因になる懸念が生じる水準に達する見込み」と危機感を表明。このままでは年末年始の生乳廃棄の可能性も「否定できない」とした。
同日の会見で中酪は、「今後の需給動向を注視し、場合によっては必要な対応を協議したい」と説明した。乳製品過剰問題は、秋以降の最大の酪農問題になる見通しだ。
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