養豚廃水の窒素除去効率を5倍以上に改善2018年4月20日
連続曝気式活性汚泥処理で研究成果、農研機構
農研機構は、養豚廃水の処理に多く用いられている「連続曝気(ばっき)式活性汚泥処理」で処理槽の溶存酸素濃度を低く保つことで、窒素除去率が5倍以上に改善することを実験とシミュレーションで明らかにした。これにより今後は、曝気槽中の溶存酸素濃度の測定や管理装置を付け加える簡単な改修のみで、窒素除去能力を大幅に改善できるメドがついた。
家畜ふん尿を主体とする畜舎廃水には、高濃度の窒素が含まれる。畜舎廃水を河川などに排出する場合、水質汚濁防止法により「アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物および硝酸化合物」の濃度を基準値以下にすることが定められている。畜産農業の場合、現在は暫定基準値(600 mg/L)が適用されているが、一律排水基準(100 mg/L)に移行することが早急に求められている。
特に現在の処理施設では連続曝気式の活性汚泥処理施設が広く普及しているが、窒素除去能力の向上が求められている。
そこで農研機構畜産研究部門では、フランス国立環境・農業科学技術研究所(IRSTEA)と共同で、標準的な施設の6万分の1の小規模実験とシミュレーションにより、連続曝気式活性汚泥処理における窒素除去の至適条件を調べた。その結果、処理槽の溶存酸素濃度を低く保つと、通常の処理条件に比べて窒素除去率が約50ポイント上昇し、60%以上になることが分かった。
また、畜舎廃水の浄化処理では生物化学的酸素要求量(BOD)も同時に低減する必要があるが、溶存酸素濃度が低い条件でもBODは良好に除去された。さらに、溶存酸素濃度が低い条件では曝気動力を抑えることができ、施設の運転に要するエネルギー消費量が抑制されるため、ランニングコストも削減できる。
(画像)汚泥処理の図
(クリックすると大きな画像が表示されます)
この技術により、養豚現場ですでに普及している活性汚泥処理施設に対して、処理槽中の溶存酸素濃度の測定や管理装置の付加という簡易な改修のみで、窒素除去能力を大幅に改善できる可能性がある。現在、パイロットプラントでの実験に取り組んでおり、農研機構では平成31年度からの現場での実証実験開始をめざしている。
(画像)連続曝気式活性化汚泥処理装置運転による処理前と処理後の無機態窒素(曝気槽中)とBOD濃度(処理水中)
(クリックすると大きな画像が表示されます。)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(150)-改正食料・農業・農村基本法(36)-2025年7月12日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(67)【防除学習帖】第306回2025年7月12日
-
農薬の正しい使い方(40)【今さら聞けない営農情報】第306回2025年7月12日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 茨城県2025年7月11日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 新潟県2025年7月11日
-
【注意報】果樹に大型カメムシ類 果実被害多発のおそれ 北海道2025年7月11日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 福島県2025年7月11日
-
【注意報】おうとう褐色せん孔病 県下全域で多発のおそれ 山形県2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】出会いの大切さ確信 共済事業部門・全国共済農協連静岡県本部会長 鈴木政成氏2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】農協運動 LAが原点 共済事業部門・千葉県・山武郡市農協常務 鈴木憲氏2025年7月11日
-
政府備蓄米 全農の出荷済数量 80%2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA加賀(石川) 道田肇氏(6/21就任) ふるさとの食と農を守る2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA新みやぎ(宮城) 小野寺克己氏(6/27就任) 米価急落防ぐのは国の責任2025年7月11日
-
(443)矛盾撞着:ローカル食材のグローバル・ブランディング【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月11日
-
【2025国際協同組合年】協同組合の父 賀川豊彦とSDGs 連続シンポ第4回第二部2025年7月11日
-
米で5年間の事前契約を導入したJA常総ひかり 令和7年産米の10%強、集荷も前年比10%増に JA全農が視察会2025年7月11日
-
旬の味求め メロン直売所大盛況 JA鶴岡2025年7月11日
-
腐植酸苦土肥料「アヅミン」、JAタウンで家庭菜園向け小袋サイズを販売開始 デンカ2025年7月11日
-
農業・漁業の人手不足解消へ 夏休み「一次産業 おてつたび特集」開始2025年7月11日
-
政府備蓄米 全国のホームセンター「ムサシ」「ビバホーム」で12日から販売開始2025年7月11日