酪農業の倒産・廃業、3年連続で増加 4割が「赤字」帝国データバンク2024年11月11日
帝国データバンクは11月8日、「酪農業」の倒産・休廃業解散発生状況に関する調査・分析を発表した。酪農業の倒産・廃業は3年連続で増加しており、酪農業の4割が「赤字」。飼料価格の高騰が影響している。
「酪農業」の倒産・休廃業解散件数 推移
帝国データバンクは、「酪農業」の倒産発生状況について、負債1000万円以上法的整理による倒産を対象に調査・分析を行った。集計期間は10月31日まで。
食卓に欠かせない「牛乳」の苦境が続いている。同調査によると、食品スーパーや学校給食向けに、牛乳やチーズなどの原料となる生乳生産を行う「酪農業」の倒産(負債1000万円以上、法的整理)が4件、休廃業・解散(廃業)が12件発生。10月までに計16件が市場から退出した。2023年通年の件数(16件)を超えて3年連続の増加となる見込みで、過去10年で最多を更新するとみられる。
2023年度における酪農業者の業績は「赤字」が約4割を占め、過去20年で最大だった22年度(54.3%)に次いで2番目に高い水準。「減益」を含めた「業績悪化」は7割に達した。
ロシアのウクライナ侵攻や円安による輸入飼料価格の高騰、電気代、人件費など急激なコスト高に対し、乳価の引き上げ幅が追い付かず、赤字幅が拡大するといった酪農業者もみられ、厳しい採算状況を強いられた。
飼料価格の伸びに小売価格が追いつかない状況が続く
なかでも飼料価格は、乾牧草が最も高騰した2022年度で20年度比1.6倍、乳用牛の配合飼料も1.4倍まで高騰した。2024年度は価格上昇ペースが一服し、緩やかに下落しているものの、依然として高値圏での推移が続いている。
他方、パック牛乳の価格(全国平均)は2024年4-9月平均でも2020年度比1.2倍にとどまるなど、生産コストと販売価格の間で大きなギャップが生じている。高齢化や後継者不足、昨今の設備投資による借入負担が重なり、経営体力が乏しい酪農業者で淘汰が進んだ要因になったとみられる。
消費者も物価高の影響を受け「少しの値上げでも購買量が減る」など小売店の思惑もあり、牛乳の適正価格形成に向けた道のりは険しい。今後、飼料高騰と値上げ難を前に酪農家が経営をあきらめる状況が続けば、国産牛乳が入手困難となる「酪農危機」が起きる可能性もある。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日