【インタビュー・比嘉政浩JA全中専務理事に聞く】自己改革から新たな農協運動へ(前編)2018年5月21日
・全組合員とコミュニケーションを
・(聞き手)阿部勝昭・JAいわて花巻代表理事組合長
政府が定めた農協改革集中推進期間である来年5月まで残り1年を切った。JAグループは改革への取り組みとその成果について組合員から評価を得る全国1000万人の全組合員調査を実施する方針で、これをJAの組織基盤を強固にするJA役職員によるコミュニケーション活動と位置づけて臨む。30年度は第28回JA全国大会も控える。自己改革の現状とその取り組みを通じた新たな農協運動をどう展望するか、比嘉政浩JA全中専務と阿部勝昭JAいわて花巻代表理事組合長が話し合った。
◆大事な地域の空気感
阿部 当JAは10年前に合併し27支店あります。支店はそれぞれ旧JAの本所で、そこには育まれた伝統文化があり、私たちはそれを大事にしながらも、いかに1つのJAとしての空気を生み出すかに非常に心血を注いできました。
田舎の空気は新鮮なのが当たり前ですが、地域の空気感ということを考えると、どんどん変わってきたと思います。JA改革に取り組むなかで感じるのは、そうした受け皿としての地域の空気感が大事であり、それが薄かったり無かったりすると、いくら改革の風を起こしても受け止めてもらえないのではないかということです。
農協改革集中推進期間が残り1年を切るなか、JAそれぞれが持っているこの空気感というものをどう考えるかが大事になるのではないかと思っています。
比嘉 何をするにも組合員や地域とJAとの間に基礎となる空気がなければならないということですね。「土壌」というのともまた違いますか。
阿部 土は耕し肥料をやれば芽が出てきますが、空気というのは捉えどころがありません。あって当たり前で、なければ命にかかわる。そういう意味で農協もあって当たり前でありなくなるなんて私たちは考えてきませんでした。ただ、組合員にとってはこの当たり前というのは、時代変化のなかで農協はもっと努力して当たり前だということにもなります。批判というよりも期待だと捉えて応えていかなければならないと考えています。
比嘉 JAグループに対する批判のなかには意図的なものもあり、そうしたものにはしっかりと反論し情報発信もしていかねばなりません。
一方、現実に農業者は世代交代期を迎え、たとえば雇用で大規模化を図るといったこれまでにない経営も出てきています。そうしなれば地域の農地が守れないという実態もあります。そういうなかではニーズに応えてJAの事業方式も変わらざるを得ないと受け止めています。
JAいわて花巻では、すでに農業者のみなさんに施設の運営を任せるという事業方式を採用しておられます。これまでは集落営農組織と作物別組織をしっかりと作るということが協同の具体的なかたちだったわけですが、時代が動けばこのように新たな事業方式を生み出していく。日本中のJAがチャレンジせざるを得ないことだと思います。
(写真)比嘉政浩JA全中専務(右)、阿部勝昭JAいわて花巻代表理事組合長
◆組合員にも変化
阿部 今、お話しいただいた施設の自主運営については、ここまで組合員がしっかり運営してくれるのかという思いです。今までは組合員組織の活動については、あまりにもJA職員が準備し過ぎてきたのではないか。
今、共乾施設を自主運営している人たちをみると、自分たちでどう運営したらいいか、自ら勉強し事業計画を作っています。会計も自分たちで税理士に頼み、経営内容も把握するようになっている。今までにはなかったことで、すばらしいと思っています。
比嘉 かつては販売も共販一本槍でしたが、その後、組合員が自分で値段をつける直売所を展開していきました。それも販売品目に幅が出るように出荷者組織をつくり品質向上にも努めるなど、組合員参加の新しい事業方式として全国のJAが取り組んでいます。
このように構造が変われば、それに応じた事業方式を生み出す。それが改革だと思います。
阿部 直売所への出荷も当初は栽培したものを出荷するだけでしたが、最近は買わせるためにどうするか出荷者が勉強するようになっています。 レタスにしても持ち運びやすいようにスーパーバックに入れて自分の棚に並べるなど、買う側の目線で考えるなど、直売所が売り方を工夫するトレーニングセンターの役割も果たすようになっています。そういう気づきが組合員に生まれてきているということです。
◆全組合員調査の意義
比嘉 そのような自己改革をそれぞれのJAが進めるなか、今、全中は全組合員調査を実施しようと提起しています。
農水省は繰り返し認定農業者等に対してアンケートをしており、このアンケートでJAが評価されることはもちろん重要です。一方で、私たちは自ら納得できるデータを持たなければJAはしっかりやっているのかという外部の声に向き合えないから、JAは全組合員調査をしようというのが全中の提起です。
しかし、この提起に対しては全組合員調査をするのであれば、この機会を組合員のみなさんとJA役職員がしっかりコミュニケーションする機会にすべきと、もっと高い次元で捉えて運動を提起する県やJAが出てきました。その通りだと思います。
続きは、【インタビュー・比嘉政浩JA全中専務理事に聞く】自己改革から新たな農協運動へ(後編)をご覧ください。
重要な記事
最新の記事
-
【欧米の農政転換と農民運動】環境重視と自由化の矛盾 イギリス農民の怒りの正体と運動の行方(2)駒澤大学名誉教授 溝手芳計氏2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内で多発のおそれ 熊本県2024年4月26日
-
【注意報】核果類にナシヒメシンクイ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2024年4月26日
-
【注意報】ムギ類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 愛知県2024年4月26日
-
「沖縄県産パインアップルフェア」銀座の直営飲食店舗で開催 JA全農2024年4月26日
-
「みのりカフェ博多店」24日から「開業3周年記念フェア」開催 JA全農2024年4月26日
-
「菊池水田ごぼう」が収穫最盛期を迎える JA菊池2024年4月26日
-
「JAタウンのうた」MV公開 公式応援大使・根本凪が歌とダンスで産地を応援2024年4月26日
-
中堅職員が新事業を提案 全中教育部「ミライ共創プロジェクト」成果発表2024年4月26日
-
子実用トウモロコシ 生産引き上げ困難 坂本農相2024年4月26日
-
(381)20代6割、30代5割、40/50代4割【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年4月26日
-
【JA人事】JA北つくば(茨城県)新組合長に川津修氏(4月20日)2024年4月26日
-
野菜ソムリエが選んだ最高金賞「焼き芋」使用 イタリアンジェラートを期間限定で販売2024年4月26日
-
DJI新型農業用ドローンとアップグレード版「SmartFarmアプリ」世界で発売2024年4月26日
-
「もしもFES名古屋2024」名古屋・栄で開催 こくみん共済coop2024年4月26日
-
農水省『全国版畜産クラウド』とデータ連携 ファームノート2024年4月26日
-
土日が多い曜日まわり、歓送迎会需要増で売上堅調 外食産業市場動向調査3月度2024年4月26日
-
鳥インフル 英国からの生きた家きん、家きん肉等 一時輸入停止措置を解除 農水省2024年4月26日
-
淡路島産新たまねぎ使用「たまねぎバーガー」関西・四国で限定販売 モスバーガー2024年4月26日