JAの物流 新ビジネス創造へ JA経営ビジョンセミナー 静岡で第2セッション(2)2022年10月7日
JAの物流 新ビジネス創造へ JA経営ビジョンセミナー 静岡で第2セッション(1)から続く
「生産者の息遣いが聞こえる」野菜
国の重要文化財「大日本報徳社」でセミナー
やさいバスは単に農産物を運ぶだけでなく、生産者の情報を消費者に、消費者の情報を生産者に伝える役割もある。相互の情報のやり取りのなかで、消費者にとっては、バスに積み込まれた野菜を通じて「生産者の息遣いが聞こえる」と加藤社長は言う。不特定のユーザーを対象とするネット販売では難しい「やさいバス」の強みだ。
コーディネーターを務めた奥村昭博・慶応大学名誉教授は少量多品目を扱うネット通販のアマゾンを例に挙げ「量の問題ではない。情報を制するものは市場を制する。これからは、情報をキーワードとしたバリューチェーンを確立すべきだ」とコメントする。
こうした新しい事業に取り組む場合の障壁としてJAの縦割り構造が議論になった。消費者のニーズに応えるための少量多品目の供給は、そうしても人手がかかる。「物流・情報の共有化にデジタル化は欠かせない」という意見があった。
また品質の良い野菜を作るには、土壌管理が必要。加藤社長は「JAはこの面で遅れを感じる。品質のよい野菜を、価値の高い時、適時販売する必要がある」と指摘した。一方、「やさいバス」は少品目大量販売を原則とするJAの共選共販との間に矛盾があるが、「集荷の範囲を一定のエリアでくくって取り組めるのではないか」などの意見があった。
デジタル化で「変革」
セミナーでは国保祥子・静岡県立大学経営情報学科准教授が「DX(デジタル・トランスフォーメーション)は農業・農村にどのような革新をもたらすのか」で講演した。DXとは、「デジタイゼーション(デジタル化)+トランスフォーメーション(変革)」を意味する。
同教授は、DXとは「新しいデジタル技術を利用して業務プロセスを改善するだけでなく、製品やサービス、ビジネスモデルそのものを変革し、組織、企業文化・風土も変革し、競争上の優位性を確立すること」と指摘する。野菜の発注をデジタル化し、新しいビジネスを確立したモデルとしてやさいバスの取り組みを挙げた。
道徳と経済の心構えも
大日本報徳社本部の「道徳門経済門」(掛川市で)
セミナーでは会場になった大日本報徳社の鷲山恭彦社長が「報徳思想と現代」のテーマで講義。この中で同社長は、「万象具徳」「以徳報徳」「積小為大」「一円融合」「天道と人道」(怠れば廃る)などの報徳思想を説明した。
なかでも道徳と経済の関係について、報徳思想の「経済のない道徳は労多くして功少なし、道徳のない経済は永遠の道保ちがたし」を紹介。また、金融事業では、仁・義・礼・智・信じるによる金の活用を説いた尊徳思想の「五常講」の知恵を強調し、無限に自己増殖する資主義の貪欲さに警鐘を鳴らした。
◇
セミナーの会場になった大日本報徳社は二宮尊徳の「報徳」を現代に伝え、道徳と経済の調和した社会の実現をめざす全国の報徳社の本部。国の重要文化財である大講堂を始め、明治時代を中心に建てられた仰徳(こうとく)記念館・仰徳学寮・冀北(きほく)学舎などがある。見学でき、研修会場としての貸室もある。
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