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2015.07.10 
【農協人文化賞】記念シンポ どう立ち向かうか? 農協改革一覧へ

 農協運動の仲間達が贈る第37回農協人文化賞は7月2日、表彰式に続き受賞者をパネリストにした恒例の記念シンポジウムを開いた。今年のテーマは「どう立ち向かうか?農協改革」。政府の規制改革会議が農業・農協改革を打ち出してからほぼ1年、これを受けた農協法改正案が国会で審議されるなか、JAグループは10月の第27回JA全国大会に向けた組織協議案「創造的自己改革への挑戦」を決定した。シンポジウムでは「農協人」として農協改革にどう取り組んでいくか、挑戦すべき課題は何かなどが話し合われた。

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◆再度「協同組合」学び 自己改革を現場でリード


 今回の「農協改革」についてどう受け止めておくべきか--、この点は、シンポジウムでも総括的な指摘があった。
 JA金沢市の上坂英善代表理事組合長(JA石川県中央会会長)は「規制改革会議の提起は、信用・共済事業の位置づけ、全中の廃止、全農の株式会社化など、どの項目を見ても農協解体という印象しか持ち得ない」と実態をふまえない改革論だったことをあらためて批判し、たとえば「中央会が地域農協の自由な競争を妨げているという意見があったが、石川県には一切そのような実態はない」と強調、これを国会の地方公聴会でも言明したことなどを紹介した。
 ただ、同時にJA金沢市では自己改革のために特別委員会を立ち上げ、米以外に野菜の増産に取り組もうという運動を展開している。直売所の積極活用や、6次産業化に取り組む事例としてカボチャの加工品づくりも手がけていることなど、JAグループが大会議案で掲げる「農業者の所得増大」への取り組みに力を入れていく。
 JA高岡の穴田甚朗会長理事(JA富山中央会会長)は「今回の農協改革は、そもそも安倍総理が掲げた成長戦略のなかに農業の成長産業化があったから。しかし、これまで国の政策で成長できなかったのに、今回は農協をなんとかしなければだめということになったと思う」と問題を振り返り、その改革は「農業者にも競争原理を導入する、ではないか」と指摘した。
 これに対して「われわれの自己改革は、食と農を基軸とした協同組合として、農業者の所得増大などを図る。協同組合として、という点を役職員がどう考えるかが重要だ」と強調した。
 もうひとつの課題は准組合員問題。穴田氏は「事業利用制限問題は5年後に必ず出てくる」として「准組合員を農と地域の活性化のためのパートナーとして位置づける、とはどういうことかを十分検討していく必要がある」と提起、正組合員と同じように定期的に訪問するなど関係づくりが必要と話した。

(写真)シンポジウムで報告する受賞者


◆農業所得増大が課題


nous1507101504.jpg 第27回JA全国大会組織協議案では「農業者の所得増大」、「農業生産の拡大」、「地域の活性化」を3つの基本目標にしている。そのための新たな生産体制や販売事業方式への取り組み、さらに准組合員も含めた組合員との関係づくりとJA運営への意思反映も課題となる。
 JAみっかびの後藤善一代表理事組合長は、地域農業を支えるには多様な農業者が必要ではあるが、「やる気と経営能力の高い農業者に集約化されていく」動きもあるとして、所得増大のためには「ブランド力を持つこと」も重要だという。また、4月からの機能性食品表示制度を活用して、三ヶ日みかんを販売する。この取り組みが他産地や他の果樹類にも波及することを期待した。
 JAさがえ西村山の古沢明代表理事組合長は「有利販売のためには、やはり産地、JAサイドが値決めをして販売する方式に切り替えていくしかない」と強調したほか、農業所得1000万円の目標を立て「それを実現している農家の営農類型を提示し、指導しながら農家と一緒に努力をしている」など現場の実践を紹介した。
 JA庄内みどりの伊藤千春理事は、同JAのカントリー・エレベーターは組合員自身が自主運営してきたことに触れ、その組織をベースにJAが米の独自販売にも取り組むようになったことを紹介した。その体験から「農協は何かをしてくれる組織ではなく、自分たちの覚悟を示せば動く組織。組合員教育が大事で1人1人の意識を高めることしかない」と話した。また、米依存から脱却するため地域に立ち上がってきた法人の経営支援の観点からJAが園芸作物の生産と販売を進めるべきと話す。「これだけ米価が下がっているなかで、いくら農地を集めてもプラスになるわけがない。農協としても産地づくりのチャンスと捉えるべき」と指摘した。
 JAおきなわの仲村繁代表監事は、沖縄の基幹品目であるサトウキビとパイナップルは単一JAへの合併によって「スケールメリットを発揮。農家の所得向上に貢献してきた」と話した。ただ、毎年大きな台風被害を受ける。そこで災害に強い農業に向けてJAが政策支援も活用してハウスを幅広く導入、安定出荷を毎年広げてきて農業振興も図っている役割も報告した。同時に離島の生活を支えているJAの役割も強調した。JAには改革が求められ、また地域自体にも変化があるが、仲村氏はJAは「変わりながら変わらずにあるもの」として必要とされる組織であるべきと話した。

(写真)「理念」の理解を促す石田教授


◆准組合員にどう対応


 JA運営への正・准組合員の意思反映も課題だ。JAおちいまばりの田坂實経営管理委員会会長によると、人口は減少しているものの組合員が昨年4000人増えたという。「3分の2が准組合員だがJAは地域協同組合として地域のインフラを担う組織だと感じている」と話した。その組織の意思決定のため、今年の総代会で経営管理委員を2名増員、1人を准組合員にしたという。「地域を巻き込んだ組織として地域に認められる活動を展開していきたい」という。
 JA京都丹の国の荒木隆義常務は、農協改革に向けて臨時総代会を開いて准組合員総代65名を選出したと報告した。総代会にも出席してもらい意見を述べてもらったという。また、支店活性化委員会を立ち上げて、支店が生活の拠点となるような活動を組合員と一緒に探っていると話した。
 旧JAくにびきの井上嘉保留代表理事組合長は農協法改正は「農協に職能組合的な面を強めることが求められ地域組合的な面が削がれる改革ではないか」と懸念。島根県内では「今までも准組合員の声をJA運動にどう生かすかに取り組んできたが、目に見えるものになっていなかったことも確か」と指摘、「今後は県単一JAとして(准組合員の意思反映などで)先行的な取り組みを」と期待した。


◆福祉・医療にも危機感


nous1507101502.jpg JAくるめの大久保明美福祉事業所所長は「福祉の現場で大問題になるのは准組合員の利用制限」と訴えた。「福祉事業にも員外利用調査か、という思い。しかし、地域の高齢者を誰が支えるのかといえばJAしかない」として、地域包括ケアシステムにJAがどう貢献できるか取り組みを進めたいと話した。
 山口県厚生連周東総合病院の守田知明名誉院長は、農業・農協と合わせて医療も岩盤規制の対象になったことに触れた。そのうえで厚生連病院としての「職員の意識改革は必須と考え、30歳前後の元気のいい若手を組織横断的に集めて話し合う場をつくった」ことを紹介した。そのなかから病院祭りが生まれるなど、少しずつ病院も変わり、さらに病院を支える人材を育てることにもなったという。
 日本文化厚生連の武藤喜久雄経営管理委員会副会長は「規制改革は弱肉強食のためではないか。規制を悪のように言うが、弱者を守るための規制は大事」と強調した。
 農協法改正で厚生連病院が員外規制を受けないために社会医療法人に移行できる規定が入るが、この点について武藤氏は「そもそも員外利用規制を医療に行うことがおかしい。医師法19条では来る患者を拒んでいけないとの規定がある」と批判。また、厚生連病院は地域の人々の暮らしに即した協同組合の医療機関として全国的に「協同」しているが、社会医療法人は行政から公的医療機関と位置づけられはするものの、結局それぞれ独自経営になるのではという。「人々がまとまって力を発揮しようという考え方はなくなっていく」と危惧した。
 司会の石田正昭・龍谷大学教授は「JAにとっては組合員ときちんと話し合って合意したうえでその戦略についての説明責任を果たすことが重要になる」と指摘したほか、そのための職員教育を最重点に掲げるべきとの指摘も多かったが、その教育も協同組合とは何か、その理念を理解することがもっとも大切などと指摘した。

(写真)熱気あふれた会場

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