「協同」から「連帯」へ 社会的経済のあり方探る JC総研が公開研究会2016年7月11日
(一社)JC総研は7月9日、東京都内で「協同から連帯へ~協同組合と社会的経済」のテーマで第48回公開研究会を開いた。「連帯」を協同・互恵・団結・救済・協力・支援・合意などを含む概念としてとらえ、それを基本とした新しい「社会的経済」のあり方を探った。
◆理念実現の制度を
研究会では津田直則・桃山学院大学名誉教授が包括的な「連帯」の概念を説明。この言葉が持つ意味について「資本主義の矛盾が拡大し、経済体制論の視点から連帯の概念が必要になった」という。つまり、競争を超える社会の理念であり、その実現のための制度・システムをつなぐ概念と考える。
それは参加、民主主義、社会的公正、連帯、互恵等を理念とする社会であり、私益よりも共益・公益、自助よりも共助を重視する。その仕組みは協同組合法体系、社会的経済の法体系だとする。
そのひな形として、市民による『自然、歴史、文化を創造・保全するネットワーク」(大阪府和泉市)、森林の多様な活用を進める「大阪森林の会」などの取り組みを紹介。そのうえで、理念・価値レベルの連帯に基づいた、「経済体制としての社会的経済の制度・メカニズムの研究が必要」と指摘した。
◆新しい協同を支援
また、NPO法人地域と協同の研究センターの向井忍専務は、1992年に東京で開かれた国際協同組合同盟(ICA)の大会がきっかけとなって東海地方の生協が呼び掛けてつくった同研究センターの取り組みを報告。
地域における協同や協同組合についての調査・研究・教育・研修等を目的とする組織で、「暮らしや地域が求める多様な課題を協同の力によって担おうとする人々を軸に、地域での新しい協同の誕生を積極的支援し、協同組合にリファイン(精錬)を促す役割を担っていく」とうたっている。
さらに「協同組合セクターの社会的認知を広げ、さらに発展させる道筋を整え体系化し、働きかける」として、協同組合のナショナルセンター的な機能も視野に入れる。向井専務は「協同組合がお互いのつながり方を変えるだけでできることがある。まず、ナショナルセンターの基本であるローカルセンターのつながりをどうつくるかを追究したい」という。
◆現場立脚の議論を
福島県の協同組合は2011年の東日本大震災のときいち早く、各組合が連携して土壌の汚染測定を行った。
林薫平・福島大学特任准教授は、原発事故による福島復興に果たす協同組合間提携について報告。農産物の検査結果に基づいて対応しようとする福島県の協同組合に対して、遠方の協同組合は福島県産に対して全面拒否するケースも少なくなかった。それも食の安全・安心に対して積極的に取り組んでいる組合が多かった。
林特任准教授は「ローカルでは風評被害に対して何とかしなければと思っても、ナショナルレベルでは受け入れられない。この矛盾をどうするかの矛盾がある」という。そのうえで「全国段階でも、現場に立脚した論議に持っていかなければならない」と指摘した。
写真=連帯による社会のあり方を追究する研究会
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