「農協改革」で危機感共有 新総合JAビジョンづくりで提言 新世紀JA研究会セミナー2016年7月25日
全国のJA常勤役員を中心に、自己研鑽と情報交換を目的とする新世紀JA研究会(代表=八木岡努・茨城県JA水戸組合長)は7月21、22日、秋田県のJA秋田しんせいで第20回セミナーを開いた。全国のJAや地元JAの役職員ら約150人が、「地域創生はJAの力で」のテーマで、JA秋田しんせいの事業・活動をもとに地域農協としての存在意義をどう発揮するかについて意見交換し、その方策を探った。今回は特に農協が置かれた今日の危機的状況について、JAの役職員、組合員の問題意識共有の必要性が明確になり、提言の形で「新総合JAビジョン」を示し、早急に取り組むべき課題をまとめた。
開催地のJA秋田しんせいは、由利本荘市と、にかほ市をエリアとするJAで、主な農産物は米、和牛、豚、それにアスパラガスやミニトマト、リンドウなどの野菜栽培が盛んなところ。米・野菜と畜産を組み合わせた資源循環型農業の確立を目指している。
特に米では商標登録した「土づくり実証米」として、タンパク値6.5%以下の米を買い入れ、有利販売に努めている。また品種は秋田県が育成した新品種「つぶぞろい」を、JA独自の土づくりしたほ場で作り、安全・安心かつ良食味の米を栽培。さらに園芸では小ギク、アスパラガスなどで2つの園芸メガ団地をつくり、生産を軌道に乗せている。
同JAの畠山勝一組合長は、こうした農業振興のもとに「農魂躍動」の精神があることを強調し、「農は国を守るもの。誇りを持って取り組んできた。激変、迷走する農政に振り回されず、これからも必要とされる組合づくりに努めたい」と報告した。
次いでJA東京中央会の須藤正敏会長が「このままでいいのか~座して死を待つわけにはいかない~」で講演。同中央会はこのタイトルでパンフレットを作成し、組合員や役職員などに政府が進めようとしている「農協改革」への危機感を訴えている。
須藤会長は、税制面での優遇や独禁法の適用除外などの批判に対して、「自分たちの都合のよい解釈を続け、他人ごととしてとらえていたのではないか」と指摘。その上で「私たちが取り組む改革は、自らが評価するのではなく、社会から求められ、評価を受けるものでなければならない」と強調した。
このほか、農林中金総合研究所基礎研究部の清水徹朗部長がTPPについて講演。米国におけるTPPの批准は大統領選、上下院選挙を控え、二人の大統領候補もTPPに反対していることから、「2016年中に批准できない可能性が高く、議会での批准手続きが17年1月の大統領就任後にずれ込んだ場合、批准は新大統領がどのようなスタンスで臨むかにかかっている」と指摘。先行き不透明なことから「戦いはこれから」と力説した。
2日目のパネルディスカッションでは資源循環型農業、園芸メガ団地の造成、女性組織の活動、由利組合総合病院との連携の4テーマでJA秋の担当者が、それぞれの取り組みを報告し、意見交換した。
最後に、(1)TPPに関する情報開示、(2)食に対するアピールと農業生産資材の価格引き下げ、(3)新総合JAビジョンの確立と力強いJA運動の展開、(4)JA全中の機能・体制の整備、(5)教育活動、ネットワークづくりの強化、(6)東日本・熊本大震災への対応、(7)貯金保険制度の掛金凍結の7項目の大会アピールを採択した。
このほか今回は、これまでの研究会セミナーの成果をまとめる形で「新総合JAビジョン確立への提言」をまとめた。併せて「農協改革」に伴う課題を、より具体的に詰める課題別研究会の開催を提案した。
◆研究会に感謝状 全中
JA全中は新世紀JA研究会のこれまでの活動に対して、奥野長衛会長名で感謝状を贈った。21日の第20回セミナーの会場でJA全中の加賀尚彦常務が新世紀JA研究会の八木岡努代表に手渡した。
同研究会は、全国JAの常勤役員を中心とする役職員を対象に相互研鑽と情報交換の場として平成18年に発足した。年2回、全国のJA持ち回りでセミナーを開き、JAの抱えるさまざまな問題・課題を議論してきた。
その内容は大会アピールとしてまとめ、JA全国連や農林中金、農水省などに要請し、政策として実現したものも少なくない。こうした活動が評価され感謝状の贈呈となった。
◆新代表に八木岡氏(JA水戸組合長)
新世紀JA研究会は7月21日、JA秋田しんせいで開いた総会で新執行体制を決めた。新代表に八木岡努氏(JA水戸代表理事組合長)が就任した。任期は平成30年まで。他の役員は次の通り(敬称略)。
▽副代表=竹下正幸(JAしまね代表理事組合長)、山口政雄(JAはだの代表理事組合長)
▽幹事=久慈宗悦(JAいわて中央代表理事組合長)、完賀浩光(JA土浦代表理事専務)、薄葉功(JA東西しらかわ代表理事組合長)、勝田実(JAちば東葛代表理事組合長)、河合勝正(JA愛知東代表理事組合長)、吉田康弘(JA兵庫六甲代表理事組合長)、福山巌(JA鳥取中央代表理事組合長)、黒田義人(JAえひめ南代表理事組合長)、三角修(JA菊池代表理事組合長)、佐々木昌子(一般社団法人・農協協会常任理事)、山下保(元協同組合経営研究所研究員)、高橋英俊(常任幹事・前協同組合経営研究所 常務理事)
▽監事=高橋信茂(JA東京みどり代表理事組合長)、藤井晶啓(JA全中教育部長)
▽顧問=白石正彦(東京農業大学名誉教授)、佐藤喜作(一般社団法人・農協協会会長)、福間莞爾(総合JA研究会主宰)
▽特別相談役=萬代宣雄(前JA島根中央会会長)、鈴木昭雄(JA東西しらかわ前代表理事組合長)、足立武敏(JAにじ前代表理事組合長)、上村幸男(JA菊池会長理事)、藤尾東泉(岩手県5連会長)、宮本幸男(JA土浦前会長理事)
※JAちば東葛の「葛」の字は正式には内側は「ヒ」です。
(写真)地域におけるJAの存在意義で意見交換したセミナー、JA全中から感謝状を受ける八木岡代表
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