全農は協同組合 画期的な「全農リポート 2016」2016年9月20日
JA全農は、全農グループの経営・事業活動・社会貢献活動などを伝える「全農リポート 2016」をこのほど作成したが、その内容は従来にはない画期的なものとなっている。
何が画期的か? まず表紙が良い。JAグループが発行するこの種の冊子は多いが、どちらかというと地味で面白味とか明るさとか楽しさを感じるものは稀ではないだろうか。
今回の全農レポートは、明るくて楽しい。さらに日本農業の中心は米であり、畜産だというイメージが子どもでも分かるものになっている。
表紙を楽しんだ後に、ゆっくりと表紙をめくると、「一人は万人のために、万人は一人のために」というやや大き目な文字が目に飛び込んでくる。その下には「21世紀の協同組合原則――協同組合のアイデンティティーに関するICA宣言」の定義・基本的価値・協同組合原則と、第1原則「自発的で開かれた組合員組織」から第7原則である「地域社会への配慮」までが記述されており、その下には農業者をはじめ日本を支えるさまざまな職業の人びとの姿が描かれている。
次の頁は定番のトップコメントだがそのタイトルは「たくましい農業づくりに貢献」と全農の役割を強調するものになっている。
その次の見開きからは、「協同組合としてのJA全農」として、「地域とくらしを支える協同組合」「国際社会でも発揮される大きな力」「世界の協同組合におけるJA全農」「世界中の有力な農協組織と連携」の4つのテーマで、日本そして世界で果たしている全農・協同組合の活動。全農3か年計画重点とそれを取り巻く情勢などについて簡潔に説明している。
そして、このレポートの白眉ともいえるのが、米穀・園芸・生産資材・畜産・生活関連という全農の各事業ごとの推移が年表形式の図表で分かる「JA全農のあゆみ」だ。
各事業別に1960年(昭和35年)から今日までの「事業を巡る動き」と「全農の動き」が年表として示されると同時に、年表の上に各事業ごとの推移がグラフ化されて表示されている。
例えば米穀事業のグラフを見ていくと、米の消費量が年々減少し米価が下がっているのに、常に一定量の輸入米があることがひと目で読み取れる。さらに、米消費が減少しているのに小麦の消費量が年々増加しており、「食の変化」とよく言われるが、「粉食」が「米食」を侵食し、日本の食文化を変えてきていることも読み取ることができる。米の消費拡大は、粉食からに奪われた米食の地位を回復することであり、それが自給率向上への道でもあるのではと考えさせられてしまう。
最近、とみに話題となる生産資材をみると、除草や施肥を含めた農作業の総時間が大幅に軽減され、生産コストが着実に削減され、「農家手取り最大化」に向けた確実な取組みがされていることが、誰にでも分かるグラフになっている。同様なことが他の事業でもいえ、そのあとに記述されている各事業ごとの重点施策や技術開発の動向、流通の仕組みとあわせて読むことで、全農の仕事というよりも「日本農業」についての簡潔なテキストだともいうことができるのではないだろうか。
最後にもう一つ触れておきたいのは、このレポートの最後の頁・66頁をぜひ見て欲しいということだ。
この頁の最下段に、小さな文字で遠慮がちに「大企業との合併事業等」として、伊藤忠商事、丸紅、豊田通商、三菱商事、三井物産といった日本のトップ商社、キユーピー、サントリーホールディングスといった食品・飲料メーカー、日産化学、住友化学、三菱化学、日本軽金属といった資材メーカー、その他、日本有数の企業との合弁事業(一部子会社の出資も含む)を展開していることが記されている。
こうした資本系列を超えた事業ができるのは、全農がまさしく協同組合だからであり、このことで、配合飼料や肥料原料の海外調達が可能になり、国内の生産者を支え、日本農業に貢献するエネルギーともなっていることを知ることができた。
再び繰り返せばこのリポートは、全農は協同組合であり、協同組合だからこそ「たくましい農業づくりに貢献」できているということを、改めて教えてくれる格好なテキストだといえる。
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