人・組織・地域をつなぎ ともに創ろう豊かな未来 第59回全国家の光大会2017年2月28日
(一社)家の光協会が主催する第59回全国家の光大会が2月15日に広島市で開かれた。28年度のJA普及実績表彰、平成28年度家の光文化賞促進賞表彰と第67回家の光文化賞表彰のほか、体験発表(記事活用の部、普及・文化活動の部)の審査、表彰が行われた。大会では「JA教育文化活動」への取り組みと、農業者の所得増大、農業生産の拡大、地域活性化を基本目標とする自己改革をすすめ、組合員のアクティブ・メンバーシップの確立をめざすことなどを参加者全員で申し合わせた。
今大会のスローガンは「人・組織・地域をつなぎ ともに創ろう豊かな未来」。
主催者の(一社)家の光協会・木村一男代表理事会長は、昨年11月に「協同組合の理念と実践」がユネスコの世界無形文化遺産に登録されたことを紹介し「私たち農協組織を含め世界で評価されたことを誇りに思う。『家の光』をはじめ本会が発行する媒体で今まで以上に協同組合の素晴らしさを発信していく」と述べ、また『家の光』創刊100周年ビジョンとして掲げた「人・組織・地域の幸せづくりをめざす農協運動の底力」となるため「家の光協会の役職員一同が総力を挙げて、JAを拠点とした仲間づくりや、地域の元気づくりにつなげていくためにJA教育文化活動の取り組み強化をすすめていく」とあいさつした。
広島市での開催は21年ぶり。来賓の湯﨑英彦広島県知事は、広島で多様な農業が展開されていることに触れ「大会を通じて農業や地域への熱い思いを共有し、全国で地域を活性化する新たな取り組みが生まれることを期待します」とあいさつ。
奥野長衛JA全中会長は「私たちは農業を中心とし、地域の方々のための活動をしていく協同組合であることを確認したい。『家の光』を活用した活動は地域の暮らしの向上につながっていく」とJA教育文化活動の取り組みに期待した。
香川洋之助JA広島中央会会長は、昨年、G7外相と米国オバマ前大統領が広島を訪れ核兵器のない世界を追求していくと訴えたことに触れ、参加者に「協同の輪を広げるなかで平和への願いを新たにしていただきたい」と呼びかけた。
◆ ◆
第67回家の光文化賞を受賞したのはJAあいち尾東、JAしまね、JA延岡。大会では各JA組合長らが表彰を受けた。同賞は昭和24年に制定され、教育文化活動の取り組みが創意工夫に富み、家の光事業がJAの事業・活動のなかで明確に位置づけられ成果を挙げているJAを顕彰するもので、これまでに延べ275組合が受賞した。
◆記事活用で「起業」
体験発表の全国大会には「記事活用の部」に6人、「普及・文化活動の部」に3人が出場し9人全員に「家の光協会会長特別賞」が贈られ、発表に対する審査によって最優秀賞、審査委員会特別賞が選ばれた。
「記事活用の部」で最優秀賞の志村源太郎記念賞に選ばれたのは、山形県JAさがえ西村山の海野澄子さん。
海野さんはJA女性部の仲間とともに生活改善や食農教育などに取り組むとともに、農産加工部で「凍み餅」づくりも行ってきた。凍み餅とは餅を寒風にさらして干し、油で揚げて味付けした伝統食。「6次産業化という言葉などない時代」から女性部の先輩たちが郷土の味として守ってきた加工品を受け継ぐ。
その後、組織活性化と所得増大につなげようと、りんごジュースづくりにも取り組んだ。直売所や温泉などで販売、売上げ高も伸びるとともに、加工所が交流の場となり部員減にも歯止めがかかった。さらに口コミで人気が出てきたこともあって、所得向上と地域の雇用のため今まで以上に加工事業を拡大しようと、女性部から独立した法人にすることを考える。
情報を集め仲間と話し合うなか『家の光』記事で、女性部組織から起業した福井県の70代女性グループの事例を知る。
「すごい。私たちより年上じゃない」と海野さんたちは視察やJAへの相談などに取り組み、平成28年に企業組合「ぱれっと」を設立した。"ぱれっと"とは心が晴れシャキッとした気持ちを表す。商品開発のための研修会にも積極的に参加するなど14名の仲間で研鑚を続けている。
海野さんは「農協改革が叫ばれ農業所得の増大が強調される時代に、私は『家の光』を道しるべとして学び続け、豊かな農産物を活かして価値を生み出し郷土の味を次世代に伝えていきます」と話した。
審査委員長の村田武九州大名誉教授は「グループ活動を粘り強く続けるなかで起業につなげた」と評価した。
◆購読者から行動者へ
「普及・文化活動の部」で最優秀賞のJA全中会長賞に選ばれたのは、熊本県JA菊池の生活指導員、佐藤昭子さん。同JAは縦割りの事業に横糸を通し、地域になくてはならないJAになろうと教育文化活動に力を入れており、佐藤さんはそのなかで『家の光』の普及率ではなく活用率の向上をめざす「家活」(いえかつ)に取り組んできた。
現場の女性部員からボトムアップで『家の光』活用が広がるようサークル活動に力を入れ、趣味の集まりでも休憩時間には記事を読んでもらうなど工夫もしている。購読者5名以上で『家の光』を活用した活動を行うグループは51にまで増えた。一方で役職員には温度差があることから、『家の光』の良さを知り業務に活かすよう、おすすめ記事を紹介するチラシを配付するなど、役職員に読んでもらい「家活」をしてもらうきっかけづくりも始めた。
佐藤さんは「"家活"は購読者から行動者に変える、まさにアクティブ・メンバーシップを促す取り組み。TPPや農協改革といった向かい風が吹くなか、役職員はどれだけ危機感を感じていますか。変わろうとしていますか。協同組合の意義と必要性を地域の人々に理解してもらうためにも『家の光』に学び普及することで向かい風を追い風に変えることができるはず」と力強く訴えた。
村田委員長は「迫力に圧倒された」と評価するとともに参加者に向けて「厳しい状況のなか、総合農協の総合性を発揮し、農協つぶしに対して断固たる姿勢で農家と地域住民全体の暮らしの活性化に貢献しなければならない。教育文化活動はまさにその焦点だ」と強調した。
主な受賞者(敬称略)
【第67回家の光文化賞】
○JAあいち尾東(愛知県)
○JAしまね(島根県)
○JA延岡(宮崎県)
【平成28年度家の光文化賞促進賞】
○JAいちかわ(千葉県)
○JA広島市(広島県)
○JA佐伯中央(広島県)
○JAかごしま中央(鹿児島県)
◆体験発表
【記事活用の部】
〈最優秀賞=志村源太郎記念賞〉
「"ぱれっと"いこう ! 仲間とともに 新しい朝の光を目指して」海野澄子(JAさがえ西村山)
〈審査委員会特別賞〉
「人生を仲間とともにフェルマータ【延長】」福本アヤ子(JA尾道市)
〈家の光協会会長特別賞〉
大橋幸子(JAしもつけ)
判治純代(JA遠州夢咲)
古川由美(JA兵庫西)
村上ユリ(JAしまね)
【普及・文化活動の部】
〈最優秀賞=JA全中会長賞〉
「『家活に挑む!』~みんなの笑顔が見たいから~」佐藤昭子(JA菊池)
〈家の光協会会長特別賞〉
髙橋のぞみ(JAいわて花巻)
熱田由香(JAしまね)
※都道府県代表体験発表大会で発表された記事活用の部47人および普及・文化活動の部13人、計60人には、家の光協会会長賞が贈られた。
※大橋幸子さんの「橋」の字は正式には異体字です。
(写真)大会ではJA教育文化活動に取り組み豊かでくらしやすい地域社会の実現をめざそうと参加者全員で申し合わせた、木村一男会長、第67回家の光文化賞受賞の(右から)JAあいち尾東、JA延岡、JAしまねのみなさん、JAさがえ西村山・海野澄子さん、JA菊池・佐藤昭子さん
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