JA全農が酪農体験発表会2017年9月27日
JA全農は9月22日、東京都内で全農酪農経営体験発表会を開いた。35回目を迎える発表会には、全国のJAや県連や全農県本部から審査推薦を受けた北海道、栃木、群馬、奈良、香川、熊本県の酪農経営者6人が発表し、香川県の有限会社赤松牧場の赤松省一さんが、耕畜連携・循環型農業のスキームを地域に定着させたとして最優秀賞に選ばれた。併せて酪農の将来を担う学生を対象にした」第11回全農学生『酪農の夢』コンクール」で最優秀賞を受賞した愛知県立農業大学校2年・酒井太朗さんの表彰式を行なった。
(写真)酪農体験発表と「酪農の夢」コンクールの受賞者
この発表会の目的は、優秀な酪農経営体験発表を通じて経営内容や経営技術等を広く関係者に紹介し、酪農経営の安定・発展につなげようというもの。農水省・(独)農畜産業振興機構・農協・県連などの後援で毎年開いている。主催するJA全農の桑田義文常務は「高齢化、後継者不足による酪農家の減少など、生産基盤の縮小に歯止めがかからず、一方で日欧EPAなど、効果的な対策が求められる」などとあいさつした。
今回、最優秀賞を受賞した赤松牧場は、経産牛125頭、育成牛80頭の規模で、ジェラートの販売などを行なっている。父親から引き継いだ乳牛1頭から始め現在の規模まで拡大。2男1女の子どもは全員が後継者として就農し、牧場運営や6次産業・店舗事業など、家族・従業員一丸となって酪農経営を展開している。
近隣の耕種農家と連携し、水分量や発酵度合いを調整した堆肥を供給し、耕種農家からは飼料用稲(WCS)を餌としてもらっている。またJAや県・市などを巻き込んで耕畜連携・循環型農業を拡大。また果樹農家にも堆肥を通じて連携し、生産した果実をジェラートとして使ったり、WCSの収穫後、ブロッコリーやナバナなどの野菜を栽培したりする作付体系が考え出されるなど、その影響は一部地域にとどまらず、広がっている。
審査委員長の小林信一・日本大学教授は「耕種農家との連携で地域コミュニティがしっかりしており、親子4人がそれぞれの役目を持って運営しており、日本の酪農経営のモデルになり得る」と評価した。赤松さんは「畜産で大事なものは糞尿。われわれは国家の肥料を背負っていると思っている。日本の農業は酪農、畜産が変えていく」と意欲を示した。
(写真)最優秀賞の表彰を受ける(有)赤松牧場の赤松省一さん
◇ ◆
経産牛54頭と約1haの水稲を経営する栃木県真岡市の手塚佑一さんは、近隣の酪農家3戸と共に機械の共同購入、耕耘・収穫などの作業補助を行い、エン麦、イタリアンの飼料を自給している。また後継牛は全頭、自家育成で安定して確保。さらに飼養管理についての技術習得等の努力で、分娩間隔13.5か月、平均産次数2.3産と優れた成績を上げている。審査では「水田地帯の酪農で、繁殖成績もよく、ヘルパー利用等で家族との団らんの時間を確保している」と評価した。
北海道音更町で経産牛104頭を飼育する河田敬貴さんは、早くから搾乳ロボットを導入し、経営規模の拡大につなげている。ロボット導入前に、本場のヨーロッパ視察や、GMSを利用した牛群改良など、入念な準備をして導入した。また牛舎のレイアウトでも、2台1群管理など、省力化メリットを最大限に活用するよう独自の工夫を凝らしているところに特徴がある。審査評は「全頭ロボット搾乳にするなど、チャレンジ精神が旺盛」とされた。
熊本県菊池市で経産牛97頭を飼育する宮上徹也さんは、発酵飼料TMを外部から購入し、飼料給与時間を大幅に短縮、また所属するJA菊池の運営するCBS(キャトルブリーディングステーション)に6か月から分娩前2か月の育成・初任牛を預けて育成管理の省力化を計画している。さらに自給飼料の畑の管理を外部委託し、省力化につなげている。審査では「大型換気扇サイクロンを導入し、南国にもかかわらず1万キロの高い乳量をあげている」と評価された。
群馬県東吾妻町の富澤裕敏さんは牛舎内に監視カメラを設置し、リアルタイムに牛群を観察できる仕組みを構築。またキャリロボ、自動給餌機、育成牛預託など、作業の自動化、外部化で労働負担を軽減し、実質夫婦2人で80頭の飼育管理を可能にしている。「所得率25%以上を実現しており、飼養管理が行き届いている」との評価だった。
奈良県安堵町の芳野義康さんは、ベッドタウンに囲まれた中で経産牛180頭を飼育する都市型の酪農家。徹底した労務管理で休日確保等など従業員への配慮が行き届いている。また小学校の牧場見学引き受けや、近隣農家への堆肥無償譲渡など、「周辺住民とのコミュニケーションを大切にしている」として評価された。
(写真)表彰を受ける最優秀賞の酒井太朗さん
◇ ◆
体験発表会に併せて、第11回全農学学生「酪農の夢」コンクールの表彰が行なわれた。コンクールには全国の農業大学校や農業関係の高校で学ぶ学生218の応募作品があり、その中から最優秀賞に選ばれた愛知県立農業大学校の2年生・酒井太朗さんが、作品「青い将来」を発表した。
応募作品について、副審査委員の小澤壯行・日本獣医生命科学大学教授は、(1)女性が半分を占め、非農家の学生が多く、新規就農を希望している、(2)乳製品やデザートなど6次産業への関心が高い、(3)酪農そのものでなく獣医師、人工授精師、あるいはJAや畜産クラスターで働く志望が多いなどの特徴を挙げた。体験発表会は最後に発表者と「酪農の夢」入賞者が意見交換した。
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