JA自ら農業経営を 後がない生産基盤弱体化 新世紀JA研究会が提案2022年12月19日
全国のJAの常勤役員らでつくる新世紀JA研究会(代表=三角修・JA菊池組合長)と東京都JA世田谷目黒は12月15日、これからのJA運動のあり方を考える全国セミナーを都内で開いた。特に農業生産基盤の弱体化が急速に進む中、JAは直接農業経営を行うことを含め、農業振興に積極的に関与すべきだとのアピールを発し、全国的な議論を呼び掛けた。また、フランスで取り入れている生産費を販売価格に反映させるエガリム法の制定をめざすことを確認した。オンラインを含め約70人が参加した。
JA運動の方向性で議論した新世紀JA研のセミナー
セミナーでは鈴木宣弘・東京大学教授が「農業の基本的価値とJAの役割」で基調講演。八木岡努・JAグループ茨城5連会長の「JAグループ広報の新展開」、飯田勝弘・JA世田谷目黒経営管理委員会会長が「都市農業におけるJAの役割」でそれぞれ講演し、問題提起した。
このなかで鈴木教授は「農業は〝生業〟であるとともに、食料安全保障に加え、洪水防止・水質浄化など多くの多面的機能を発揮して地域社会に貢献している」と、農業の「基本的価値」を強調。そのためには、農協が農業振興をはかる使命を果たすべきであり、そのことが、国民の命・環境・地域・文化・国土を守ることにつながる」と、JAの奮起を促した。
すでに現場では、農業従事者の高齢化、荒廃農地の増加で、農業の生産基盤は弱体化はもう待ったなしの状況で、「農業振興」という使命のためには、JAが担い手として直接農業生産に関わる必要性が高まっている。しかし、作業請負などはあっても、特に重要となる水田農業でJAの直接参入する事例は少ない。
アピールでは、JAは農業振興を旨とする組織であるとの基本理念のもと、JAが直接農業経営に関わり、農業を核とした地域社会をつくる「ニューアグリビレッジ創生運動」(仮称)を提案し、今後検討すべき課題として挙げた。また、昨今の生産コストの急騰に対して、エガリム法の導入を、食料・農業・農村計画見直しのなかで検討するよう求めた。
また、セミナーではJA世田谷目黒の飯田会長が、東京都区内にあるJAとして、自らの体験をもとに農地を守ってきた取り組みを報告。同管内の農地は1972(昭和57)年、新都市計画法によって全国で最初の宅地並み課税の対象となった。同会長の農地も含まれ、相続税の負担などで農地を減らすなか、新生産緑地法によってブドウ園経営を軌道に乗せ、地域の農家とともに都市農業を守っている。
その過程で課税、相続に関するすべての相談に対応したJAの「資産サポート」事業の支援は大きかった。こうした経験から、同JAは農地(土地)を持つ正組合員との相談業務をもっとも重視していることを強調した。
また、JAグループの広報について話した八木岡会長は、コロナ禍で対面のコミュニケーションできにくくなったなかで、動画を活用して成果をあげていることを報告。特にJA会館内に「クオリテLab」という情報発信基地を設けて活用している。
なおアピールではこのほか、①飼料用米の生産拡大、?信用事業の早期警戒制度への対応、③信用・共済事業の収益に依存しない事業の確立、④再生可能エネルギーの活用・脱原発に向けた循環型社会の確立、⑤貯金保険制度の掛金凍結などを挙げた。
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