プロ並みの肉質に逆風の畜産業への目標力強く 3年ぶり実参加の「和牛甲子園」で高校牛児たち2023年1月23日
全国の農業高校の「高校牛児」が育てた和牛の肉質などを競う「第6回和牛甲子園」(JA全農主催)が1月19日と20日の2日間、東京・港区で開かれ、総合評価部門の最優秀賞は岐阜県の県立大垣養老高校が受賞した。出場した「高校牛児」らは畜産業をめぐる厳しい情勢を肌に感じつつも、3年ぶりの実参加主体の大会を終えて、「将来は肥育経営に取り組みたい」「勉強して親戚農家の後継者になりたい」などと力強く将来への目標を語った。
総合評価部門で最優秀賞を受賞した岐阜県立大垣養老高校の生徒
今回の大会には23道府県から過去最多となる40校が出場し、各校の提出した動画をもとに取り組み内容を競う「取組評価部門」と、生徒が育てた和牛の肉質を競う「枝肉評価部門」に分かれて審査が行われた。2日間にわたる成績を合わせた「総合評価部門」では、岐阜県立大垣養老高校が最優秀賞に選ばれ、初めて高校牛児の頂点に立った。
大垣養老高校では、先輩から受け継いだ地元の優良雌牛系統「なぎさ系」の牛の肥育に挑戦、枝肉評価部門に出品した。長期肥育になることで病気リスクの高まりや飼料費増加という課題に直面したが、エコー検査などにようる牛のきめ細かい体調管理や学校の水田からの稲わら調達などで克服、県内他校や農家への視察を重ねて技術を吸収し肉質向上に努めた。「枝肉評価部門」でも優秀賞を受賞し、「岐阜県の風土にあう飛騨牛を育てたい」と改めて今後の意気込みを語った。
飼料高騰など畜産をめぐる厳しい情勢の中にあって、表彰後、同校の生徒たちは和牛飼育の魅力や将来の目標を力強く語った。鈴木聡さん(2年)は「生き物を扱う中で生命の重さや食のありがたみを直に感じられることが魅力です。将来は先代から受け継いだ飛騨牛の特色を大事にして独自の肥育経営に取り組みたいと思います」と夢を語った。栗田煌斗さん(3年)は「牛は飼育を続けると名前を呼ぶと来てくれたりブラッシングで気持ちよさそうにしたりととてもかわいく、毎日見ていたいと思います」と飼育体験の魅力を話し、川島弓子さん(3年)は「牛と関わる大学に進むので、農業高校の教師になって先生として学校に学校に戻ってきたいです」と目標を語った。
枝肉評価部門で最優秀賞を受賞した栃木県矢板高校の出品牛は「バランスのとれたずばぬけた枝肉で、一般共励会でも入賞に値する」と審査で高く評価された。同校では、地元で生産される規格外のリンゴを飼料として与える試みに挑戦。乾燥することで栄養価が飛躍的に高まるリンゴはそのままでは牛が食べないため、パウダー状にして稲わらにふりかけるなど工夫を重ね、食欲の落ちてきた牛の肉質の改善に取り組んだ。
受賞後、毎朝、飼育する牛の給餌役を務めてきた針生雄央さん(3年)が取材に応じ、「地元の農業大学校に進学するので、しっかり勉強してホルスタインを飼育している親戚の後継者になりたいです」と目標を語った。
取組評価部門では、鹿児島県立市来農芸高校が最優秀賞を受賞した。鹿児島黒牛のさらなる肉質の改良を目指し、きな粉やおからを給餌するなどしておいしい赤身づくりに挑戦したほか、「麹の給餌」などで内臓廃棄率の大幅減少につながった成果を発表した。
表彰後、取材に応じた3年生のメンバーらは「最優秀賞は本当にうれしい。総合優勝できなかったことは悔しいけど後輩に頑張ってほしいです」と後輩たちへの期待を語ったうえで、今後の進路について目標を語った。家で農業を営んでいる森川裕介さんは「農業大学校で学んだあと家を継ごうと思います」と話し、佃隆太さんも「家は農家ではありませんが、農業大学校で学んだあと鹿児島黒牛を継承して生産に取り組みたいと思います」と語った。
第6回和牛甲子園の結果は次の通り。
【総合評価部門】
●最優秀賞 岐阜県立大垣養老高校
【取組評価部門】
●最優秀賞 鹿児島県立市来農芸高校
●優秀賞 広島県立西条農業高校、北海道倶知安農業高校
●優良賞 京都府立農芸高校、栃木県立栃木農業高校、神奈川県立中央農業高校
●高校牛児特別賞 愛知県立渥美農業高校
●審査委員特別賞 鹿児島県立鹿屋農業高校
【枝肉評価部門】
●最優秀賞 栃木県立矢板高校
●優秀賞 岐阜県立大垣養老高校、鹿児島県加世田常潤高校
●優良賞 福島県立磐城農業高校、岐阜県立飛騨高山高校、島根県立出雲農林高校
●審査委員特別賞 愛知県立渥美農業高校
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