新規就農支援 計画的に継続を JA全中が実践セミナー2023年1月27日
JA全中は1月26日、東京・大手町のJAビルで「新規就農支援実践セミナー」をオンライン併用で開き、JA担当者ら約90人が参加し実践報告などをもとに地域にあった新規就農支援を計画的に続ける必要性を確認した。
JAグループは、将来の食料・農業・農村を担う次世代組合員を確実に育成・確保していくことを目標に「次世代総点検運動」に取り組むことにしており、新規就農支援を重点事項の1つとしている。
新規就農支援は、行政をはじめ関係団体と支援体制を整備する「事前準備」から「募集」、「研修」、「就農」、「定着」までをパッケージとして取り組むことを提起している。
セミナーでは日本協同組合連携機構(JCA)の和泉真理客員研究員が「JAが主導する新規参入支援」と題して講演した。
和泉氏は地域の根差し、多様な販路の提供や生産部会を通じた技術指導、中古農機具の斡旋や青年組織を通じたネットワークづくりなど、「さまざまな機能を持つJAは新規参入支援に最適」と指摘し、「先行している地域はどこも将来の担い手に対する危機感が元。地域に偏りはなく、危機感を具体化できるかどうか」だと強調した。
具体的には地域の将来展望を現在の担い手へのアンケートなどで明らかにし、10年後の姿を農地マップに落とし込んで「見える化」するとともに、外からの就農希望者を受け入れようという地域の合意・体制づくりが急務で「JAが合意形成を後押し、実践策を具体化することが求められている」と提起した。
事例報告ではJA愛知東営農部の清水啓行統括課長が、地域一丸となった就農支援の取り組みを話した。
同JAは新城市と森林組合などと担い手支援協議会を設置し、就農相談会を開いて希望者と複数回面談するとともに、生産部会員の圃場でも見学会などで「見て聞いて感じることができる研修」と審査を経て、意欲ある就農者を確保することに力を入れている。収支の試算イメージも示し農業経営を意識してもらう。最近では若い新規参入者が新技術導入の原動力にもなってきた。この10年で84人が新規就農。清水課長は「継続した就農者の確保が地域活性化になる。JAの役割がより重要になる」と話した。
JA山梨みらいの出資法人である(株)あぐり甲斐の新規就農者確保の取り組みを取締役の渡辺信氏が話した。
同社は地域の遊休農地を集積しトウモロコシ栽培や飼料用米生産などを行っている。社員のなかには独立して就農を希望する若者もおり、13年間で27名が独立し、大部分が地域に定着している。
ほ場一筆ごとの詳細な作業記録が研修にもなり、独立後の経営マニュアルとして役立つ。就農時には研修生自身が任意の農地約1haを選ぶ。販売先はJAと直売所を確保。高齢農家のリタイアにともなって増加する遊休農地を引き受け、一方で雇用を確保し、そのなかから独立就農を希望する研修生を送り出す事業であり、渡辺氏は「一層重要性を増す。農家の目線で地域に貢献していきたい」と話す。
JAえひめ中央営農支援課の林諭課長は同JAの新規就農支援の取り組みを報告した。JAでは研修園地を整備し年間18名の新規就農研修生を受け入れてきた。
研修は原則2年間で農水省の就農準備資金を活用している。座学で栽培の基礎知識や経営指標、就農計画などを学ぶとともに、果樹、野菜ともJAが専門の技術指導者を派遣し指導する。
林課長は「就農計画をもとに金融部門と相談しスムーズに就農できる支援している」とJAならではの対応を強調、新規就農者を対象にした青壮年部も立ち上げ地域への定着を支援している。
JA全農岐阜は県本部としていちごの新規就農者研修を行っている。研修生は一人当たり10aのほ場を担当し、経営者になる自覚と責任を持って栽培管理することが求められる。営農対策課の高木美奈課長は「いちごファーストの研修生活をするなかで、すべての作業を熟知し、生育状況の問題点などいち早く発見する観察力が身につく」などと研修の特徴を紹介。就農に向けては、農林事務所、市町村、JAと全農が一体となった「就農支援会議」を研修生ごとに開き準備を進める。15年間で53名が卒業し全員就農した。
セミナーでJA全中の元広雅樹営農・担い手支援部長は「新規就農支援は就農希望者の人生を背負う重い役割を担っているが、10年後を見通せば避けて通れない。がまん強くしぶとく地域にあった取り組みを計画的に継続していくしかない」と強調した。
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 石川県2025年7月4日
-
(442)エーカレッジ(作付面積)から見る変化【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月4日
-
【JA人事】JAながさき県央(長崎県)里山耕治組合長を再任(6月27日)2025年7月4日
-
人的資本を人事制度で具体化する 「令和7年度 人事制度改善セミナー」開催 JA全中2025年7月4日
-
「有機薄膜太陽電池」で発電した電力 ブドウの着色に活用 実証実験開始 山梨県2025年7月4日
-
株主優待制度を新設 農業総研2025年7月4日
-
夏の訪れ告げる初競りの早生桃 福島県産「はつひめ」販売 青木フルーツ2025年7月4日
-
ニッテン「スズラン印」ロゴマークをリニューアル 日本甜菜製糖2025年7月4日
-
「国際協同組合年」認知度調査「生協に参加したい」が7割 パルシステム2025年7月4日
-
洋菓子のコロンバン主催「全国いちご選手権」あまりんが4連覇達成2025年7月4日
-
野菜わなげや野菜つり 遊んで学ぶ「おいしいこども縁日」道の駅とよはしで開催2025年7月4日
-
北海道初進出「北海道伊達生産センター」完成 村上農園2025年7月4日
-
震災乗り越え健康な親鶏を飼育 宮城のたまご生産を利用者が監査 パルシステム東京2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「農政技術(森林)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「獣医師(家畜保健衛生分野)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
信州の味が集結 JA全農長野×ファミマ共同開発商品 長野県知事に紹介2025年7月4日
-
障害者のやりがい・働きがい・生きがい「ガチャタマ」で応援 パルシステム埼玉2025年7月4日
-
参議院選挙に行ってとんかつ割引「選挙割り」実施 平田牧場2025年7月4日
-
作物と微生物の多様な共生が拓く農業の未来 意見論文が米国植物科学誌に掲載 国際農研2025年7月4日
-
国産率100%肥料の商品を販売開始 グリーンコープ共同体2025年7月4日