パーパスを実現する「地域」と「差別化」の意味 静岡で第4セッション【全中・JA経営ビジョンセミナー】(2)2025年1月24日
JA全中教育部は1月15、16日に静岡県で「JA経営ビジョンセミナー」の第4セッションを行った。フィールドワークとして、15日は浜松市でソースを生産・販売する鳥居食品、16日は掛川市で二宮尊徳の報徳思想を伝える大日本報徳社を訪問。今回のテーマに設定された「パーパスを実現する『地域』と『差別化』の意味」の議論を深めた。
報徳思想と現代:大日本報徳社

大日本報徳社 石野茂子専務理事
大日本報徳社は、二宮尊徳の「報徳」を現代につなげ、道徳と経済の調和した社会を目指す全国組織の本社。国の重要文化財である大講堂を始め、明治期を中心に建てられた歴史的建造物の管理・運営も行っている。建造物や同社の歴史を石野茂子専務理事から説明を受けたのち、鷲山恭彦社長(9代目)が報徳の考え方を解説した。

大日本報徳社 鷲山恭彦社長
報徳の四大項目である「至誠・勤労・分度・推譲」は、市民としてのどう生きるかという「市民道」の中核であり、江戸時代の農村再生の取り組みは「世界最初の信用組合」とも言われる。鷲山社長は報徳の考え方のうち「積小為大」を「蓄積したものが量から質に転換する、人間の無限の発展」を保障するもの。また「一円融合」は「対立するものを円に入れ、共通項を見出すこと」と解説。こうした考え方が「(国家間の紛争など)現代の課題解決に生かすことができる」とした。
国の重要文化財である大講堂
例えば、ロシアとウクライナの紛争を巡っては、かつて東西陣営の対立を緩和してきたドイツのメルケル元首相が目指した政治姿勢を「一円融合の考え方」と見る。東アジアでは台湾有事の危険性に触れ「有事が起きれば沖縄が最前線になってしまう。東アジア共同体のような一円融合の考え方」が必要とした。
利害関係者とのつながりで価値を生む
2日間のフィールドワークを受け、落合教授はイノベーションについて「異質なものから生まれる。それを社会課題の解決や社会的価値としてビジネスの手法でどう生み出すか」という討論テーマを提案。参加者は3つのグループに分かれて、まず自らのJAの差別化の発見とそれをどう具体化するか、意見を出し合った。

落合教授と参加者が議論
参加者からは差別化のポイントとして「地域特性を生かした農産物」「農業を守る、営農指導中心の活動」といった意見が出された。落合教授は「戦略作物の展開」や「営農活動での新規就農者との関係性」などをアドバイス。続いて「強みはあるが、JAだけでは完結しない。利害関係者とのつながりで価値を生み出す」必要性を述べ、参加者に利害関係者の抽出を求め「新しい関係を作るための顧客は誰か、どのような商品を提供するか」を問いかけた。
続いて、落合教授は改めてパーパスの重要性に触れ「鳥居食品は差別化した提供価値を社会課題の解決につなげており、それは大日本報徳社の考え方にも通じる」と説明。参加者にJAならではの提供価値とは何か、課題は何かを問いかけた。これに対しては、農家の減少や高齢化、大規模化などに伴う課題が数多く出され、落合教授が一つ一つにアドバイスを送った。

トータルコーディネーター 奥村昭博慶応義塾大学名誉教授
最後に、落合教授は第5セッションに向けて「パーパスのさらなるブラッシュアップ」を呼びかけた。奥村名誉教授は「パーパスは社会課題の解決であり、経営課題ととらえるのは誤解。JAが社会にどう貢献するかが問われている」。また「事業化により経済が成り立って初めて社会的意義につながる」とのべ、第5セッションに「卒業論文として持ち込んで欲しい」と期待を述べた。
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