農業の労働力不足 地域ぐるみで解決 次世代担い手育成システムも開発 農作業請負と農家間連携を進めるJA全農ふくれん2025年11月18日
JA全農ふくれんは、減少と高齢化が進む農業現場への対応として、農作業請負や農家間連携の仕組みづくり、次世代担い手育成システムの開発・普及を進めている。11月17日にJA全農が開いた説明会で、JA全農ふくれんの行武大樹氏(営農直販部担い手支援課・本所耕種総合対策部バックオフィス事業リサーチ室兼務)が報告した。
報告するJA全農ふくれんの行武大樹氏
基幹的農業従事者は現在54万4000人で、このうち70歳以上が59%、60歳以上を含めると89%を占める。一方、49歳以下はわずか3万人(6%)にとどまり、「食料安全保障の危機であり、特に稲作が衰えれば麦や大豆も作れなくなる」と指摘する。担い手不足に対して、JA全農ふくれんでは短期的には農作業請負の活用、中長期的には農家間連携を柱に解決策を進めており、大分県豊後大野市清川町の3つの集落営農法人の事例を紹介した。
作業連携で信頼構築
「グリーン法人中野」は平均年齢43歳と若く、受託作業に積極的である一方、山間地に位置し経営面積の拡大が課題だった。「なかむら」「おはる」は平均年齢75歳以上で、オペレーター不足や経営継続への不安が大きかった。行武氏は「合併は組織協議による合意に時間と調整が必要」だと説明し、まず草刈りや機械作業などの「作業連携」から着手したという。
具体的には、法人間で草刈りの共同作業やオペレーターの融通を行い、農作業請負方式で外部労働力も導入した。機械故障時の賃貸、更新計画の共同協議も進め、麦作付けについては「おはる」の畑を「グリーン法人中野」が受託した。
こうした連携により信頼関係が形成され、繁忙期の作業効率が改善。「グリーン法人中野」は翌年度に経営面積を大幅に拡大し、「なかむら」は農地を「グリーン法人中野」に譲渡する判断に至った。行武氏は「外部の農業者の力を借りる効果が現れた」と強調した。
繁忙期に労働力を確保
農業者は作付け面積を「収穫・調製できる労働力の範囲」で決めるため、担い手不足は耕作放棄地の発生につながる。それを防ぐには、営農計画段階で労働力確保策を取り入れ、耕作面積の維持・拡大を可能にする必要がある。手段には直接雇用や派遣、特定技能外国人、農作業請負などがあり、福岡・大分では農作業請負の活用が進んでいる。
農作業請負は、都市部から農村部へ人材を安定供給することで、「繁忙期に確実に労働力を確保し、農家が安心して営農を継続できる」点がメリットだ。農家は必要な時だけ依頼でき、雇用ではないため労務管理が不要で、依頼した作業以外に経営者が専念できる。一方で指示系統が限定される、人員固定が難しいといった課題もあるが、全体として利点が大きい。
具体的には、請負会社が労務管理や求人・面接を担い、採用者をプールし、農家の依頼に応じて作業チームを派遣する。労働者には「現金日払い」「農業現場への送迎」「1日から契約可能」「面接で落とさない」といった条件を提示し、労働者側のメリットも確保している。
地域ぐるみで農業を守る
中長期的には、農家間で「人・機械・農地・営農計画」を共有し、地域ぐるみで営農を継続できる体制をつくることが重要だ。まず現状を共有して助け合いの可能性を検討し、草刈り・機械作業など人手不足の作業を明確化する。保有機械の賃借や更新計画を共同協議し、営農計画を共同作成し、最終的には「合併も含めて経営体のあり方を協議」する。
多品目農家と連携することで繁閑期を補い合い、地域全体の労働力を最適化する。なお、それでも不足する場合は農作業請負で他産業から多様な人材を確保する。こうした段階的な取り組みにより、安定した営農と農地の維持、持続可能な地域農業の基盤が強化されるとしている。
シフトや情報管理を効率化
JA全農ふくれんは、同志社大発スタートアップ「AGRI-PASS」と共同で、次世代担い手育成システム「アグリコ」を開発し普及を進めている。従来は手作業だったシフト作成や労働者情報・依頼者情報の管理を効率化するもので、請負会社の菜果野アグリ大分(大分市)では、月2000人超のシフト管理が約3分の1の作業時間に短縮された。
2025年度には、同社のほかアグリパスサポート(福岡市)、そうしんアグリ(神戸市)でも本格稼働し、労働力支援人数を前年度比で延べ2万人以上増やす計画だ。
国民全体が農業を支える社会へ
担い手確保に向け、JA全農では「91農業」を提唱している。本業・学業・子育てなど「9」に対し、「1割の農的生活を取り入れる」という考え方で、国民一人ひとりが食料安全保障を担うものだ。消費者が農業に参加することで農業への理解が深まり、国産品を選ぶ行動にもつながるとしている。
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