JAの活動:JA 人と事業
【JA 人と事業】第9回 園田俊宏・JA熊本中央会会長に聞く2013年10月10日
・次代へ繋ぐ人材育成
・人が育つ職場風土を
・総合力発揮に向けて
・原点をきちんと学ぶ
・実践通じ問題解決を
JAが目標とする経営成果を実現するには、実際に事業に従事する職員の教育が重要である。明確なJA職員像を描き、育成のためのプログラムづくりが求められる。これまで先進的に人材育成に取り組み、昨年の第26回JA全国大会の方針に併せて、いち早くJAMP(階層別マネジメント研修)を導入している熊本県JAグループの取り組みを、JA熊本中央会の園田俊宏会長に聞いた。
自律創造型職員の人づくり
地域貢献通じ事業展開へ
◆次代へ繋ぐ人材育成
―JAグループ熊本では、JAの将来を担う人づくりに、どのように取り組んでいますか。
熊本県もJAグループで人材育成の基本方針の策定にとりかかっています。今年の6月からJAの関係課長等による「JA人材育成基本方針策定研究会」を開き、「熊本県JAひとづくりビジョン」と併せて、内容と手順を研究してきました。10月から各JAに出向き支援しています。
どのような組織も同じだと思いますが、運営していくにはきちんとした人材の育成が必要です。さかのぼってJAの広域化・大規模化を考えてみると、その原点は人づくりにあったのだと思います。旧市町村範囲の30?40人の職員では人材育成はできません。合併は組合員1万人規模で、500?600人の職員を想定し、自己完結型のJAを目指そうというものでした。特に経済事業は自己完結をめざす必要があり、しっかりした人材が必要です。これが、今日の社会の変化にJAが対応していくための最も重要なことです。しかし、これまでそれぞれのJA組織が、きちんと人材を育ててきたのかというと、残念ながら十分とは言えなかったように思います。
そこで熊本のJAグループは、昨年10月のJA全国大会の決議を踏まえて出た「『次代へつなぐ協同』を担うJA人づくり」全国運動方針を受けて、職員を対象とした「熊本県JA人づくりビジョン」(JAグループ熊本人づくり3ヶ年運動方針)を打ち出していこうと思っています。
◆人が育つ職場風土を
この方針では、各JAが職員を対象とした人材育成方針の策定に当たっての留意点を示しました。まず「目指す職員像」を明確にした上で、[1]「人材育成」を大きな経営資源戦略として位置づけたJA独自の戦略をたてる[2]現場での意思決定を左右する職場風土改革を根底に見据えた戦略をたてる[3]仕事と人事管理および教育研修制度との連携、人事教育体系の強化を図るーの3つです。
さらに、仕事を通じて職員が自然と育つような職場にするため、支所・支店ごとの地域事情を踏まえたチームワークのとれた自律性の高い職場づくりや、自ら改善・改革を行う「人が育つ職場づくり」を明記しました。具体的には[1]仲間と連携し、組合員の視点を加えた「活力ある職場づくり」の取り組み[2]「職場づくり」を経営戦略と捉えた役職員の強い意識・共通認識の醸成[3]仕事の進め方や職場常識、体質の改善を伴う職場風土の改善を推し進めようというものです。
支所・支店の置かれた環境は、高齢者が多いところやそうでないところなど、それぞれ違います。それをきちんとつかんで対応することが大切です。今回、出身JAのJA熊本うきでは、全支所で独自の広報誌第1号を発行しました。職員の思いを組合員に伝えようというものです。こうした活動が活力ある職場づくりにつながります。また、職員同士、また来店のお客さんにも大きな声であいさつするよう呼びかけています。大会決議案をできることからやろうということで、少しずつ動き出したところです。
この「方針」や「ビジョン」の基本にある考えは「人が育つ職場環境づくり」にあります。つまり仕事を通じて職員が自然と育つような職場にしよう。特に人事管理など、「なあなあ」ではだめです。教育制度をきちんと作り、着実に実践していこうということです。また広域・大規模化したJAでは、特に高度なマネジメント能力を持ち、事業部門を含む企画分野を担う人材の育成も求められます。このため戦略的中核人材育成として、平成16年度から5年間、「戦略デザイン研修会」、その後、現在まで「未来塾」を開いてきました。その成果も出て来つつあります。
―これまで人材の育成がなかなかできなかったということですが、どのような問題があったのでしょうか。
◆総合力発揮に向けて
基本的にはあまり取り組んでこなかったということではないでしょうか。しかし今、JAの置かれた状況は、それではすまされません。JAグループは10年以上、改革に取り組んで来ましたが、実際の事業は縮小しています。これでは将来のJAが危うくなります。
JAは信用共済から経済、生活事業まで幅広く総合事業を行っています。従って、総合事業を通じて人を育てていくべきだと思います。総合力を発揮できる人材を育成しなければなりません。民間の企業のように、一つの部門だけできる人材でなく、信用・共済も、経済や企画管理も分かる職員を育て、総合力を発揮できるようにすることが重要です。そこが民間の株式会社と違うところです。そうした人材を育てるのはなかなか難しいのが現実ですが、それができるかどうかが、いまJAグループに問われているのではないでしょうか。
―協同組合組織の理念をどのように教育していきますか。
◆原点をきちんと学ぶ
「協同組合とは何か」という原点から教育していく必要があります。しかし今日の経済・社会環境の変化のなかで、協同組合の理念・組織を維持していくことは大変です。経済事業でみた場合、生産資材など一律価格では、大口の利用者の不満が出てきます。理念と事業が矛盾するところがあるのも事実です。
JA職員ならだれでもこの矛盾に突き当たるでしょう。しかし大事なことは、組織としてJAは地域に根差した協同組合であり、地域に密着した事業を展開することがその役目であるということを認識することではないでしょうか。それがないとJAの意義がぼけてしまうでしょう。地域のみなさんに奉仕し、それを働きがいとする人材育成することが大事です。
TPP問題ひとつみても、農業・JAをめぐる環境の厳しさは、これからさらに加速するでしょう。我々は地域に貢献し、奉仕するのだということをしっかり押さえた教育をしておかないと、JAの将来が心配です。検討中の県の「JA人づくりビジョン」で、「組合員・利用者ニーズ・地域に根ざした創造的な事業展開」のできる「自律創造型の人材育成」を掲げているのはそのためです。それが結果的に事業の拡大につながるのだと考えています。
◆実践通じ問題解決を
従って教育の基本は、協同組合とは何かについて、入会(組)した職員にまず教えておくことです。そしてなぜJAは総合事業をやっているのか。これが地域に奉仕するためのもっともよい組織形態であること。このことを常に教育研修で教えていくことが大事です。協同組合の理念が現実の事業ではなかなか実現しないことで矛盾を感じることは、さまざまな面で出てくるでしょう。しかし、悩むことで新しい考えが出てくるのではないでしょうか。これを地域に貢献・奉仕する事業・活動の中で見つけて欲しいですね。
地域への貢献は、直接経営に結びつかないこともあって、政府の規制改革会議などでは無視、あるいは余計なことで、JAの経営の負担になっているとみているようですが、総合事業を展開するJAにとっては欠かせない活動です。地域や環境への貢献の程度を数値化して、よく見えるようにしたらどうかと思っています。地域社会にJAの存在をアピールするにも必要です。場合によっては通常の決算書と地域貢献の決算書の2つを考えてもいいのではないでしょうか。
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