JAの活動:今さら聞けない営農情報
【今さら聞けない営農情報】第5回 肥料価格に影響する国際市況の数々2019年5月24日
ご存じの通り肥料は、農作物の大切な栄養源であり、豊かな収穫を得るためには絶対に必要な生産資材です。そのため、日本国内への安定的な供給が何より求められます。
ところが、日本は肥料原料のほとんどを海外に依存しており、輸入の際には、様々な海外市況に影響を受けているようです。今回は、肥料価格に影響する海外市況にはどんなものがあるのか調べてみました。
(1)原油とナフサ
原油は、肥料の製造工程で乾燥や機械を動かす電力の元になりますので、原油価格が上がれば、肥料価格の上昇につながります。この原油価格は、世界の原油需給バランスによって上下します。
世界経済が減速し原油余りになったら価格が下がり、それに対抗するために産油国は一斉に減産し、産出量を減らすことによって価格の維持を図ろうとします。逆に、経済が活性化すると需要が増えて供給が不足するので価格が上がり、産油国は儲けたいので増産に転じます。このように需要と供給の関係で価格が上下します。
次にナフサです。一般的にはあまりなじみのないものですが、ナフサは、原油を蒸留分離して得られるもので、粗製ガソリン、直留ガソリンなどと呼ばれています。石油化学工業では、このナフサを原料にして様々な石油化学製品を製造しています。
肥料では、窒素質肥料の原料であるアンモニアを製造する時に、空気中の窒素と反応させるための水素の原料としてナフサを使っているため、窒素質肥料はナフサの国際市況に影響を受けます。
ところで、このナフサは、海外で精製されてナフサとなって輸入されるものと、国内で原油精製の過程でできるナフサと半々の割合になっています。国産のナフサ価格は、輸入ナフサの通関価格平均値をもとに決定されるため、輸入であれ国産であれ、ナフサの価格は結局、国際市況の影響を受けることになります。
(2)尿素
アンモニア以外の窒素質肥料として多く使われているものに尿素があります。この尿素はアンモニアと炭酸ガスを反応させて製造しますが、その原料であるアンモニア、水素、炭酸ガスは、天然ガスを使うと効率よく経済的に製造できます。
天然ガスが豊富に出る産出国での製造が増えているため、尿素についても輸入が多く国際市況の影響を受けるのです。
(3)リン安・リン鉱石
リン安は、主要なリン酸質肥料として知られ、リン鉱石とアンモニア、硫酸を原料として製造されます。主にリン鉱石産出国でリン安に加工された形で輸入されるので、国際市況の影響を受けます。特に、インドやブラジル、中国の大需要国の需要に影響されることが多いようです。
リン鉱石は、リン酸質肥料の原料であり、砂状の鉱石の形で輸入されます。リン安同様に国際市況の影響を受けます。
(4)カリ肥料
カリ肥料は、天然由来のカリ鉱石と塩酸や硫酸と反応させて作られる塩化カリや硫酸カリの形で輸入されます。カリ鉱山はカナダやロシアなどに偏在しており、インドや中国のような大量需要国と鉱山山元との交渉が国際市況に大きく影響します。ここ近年は、ほとんど高値市況が続いています。
(5)有機原料
有機質肥料は、大きく分けて植物質肥料と動物質肥料の2つがあります。植物質肥料は、菜種油粕や大豆油粕が主なもので、搾油の原料である、菜種や大豆の相場に影響を受けます。国内にもありそうな菜種や大豆ですが、搾油用の多くは輸入に頼っています。
一方、動物質肥料で海外市況の影響を受けるものにフェザーミールと皮粉があります。
フェザーミールは、ニワトリなどの食鳥を食肉とする時に発生する羽毛を蒸して乾燥させたもの。皮粉は皮革工場等から出る裁断屑を加圧過熱し乾燥させたもので、いずれも緩効性の高窒素肥料になります。これらも主に海外からの輸入のため、国際市況の影響を受けます。
(6)海上運賃
肥料原料は船で運搬されるため、海上運賃の影響を直接受けます。この海上運賃にも市況があって、世界の景気が活発になると荷動きが盛んになり、船腹数がひっ迫して海上運賃相場も上昇します。また、当然のごとく原油が上がると燃料油も上がり、海上運賃の上昇につながります。
(7)外国為替
海外との取り引きはドル建てで行われることが多いため、為替相場の影響をもろに受けます。
円高になると輸入品である肥料原料を安く調達できるようになりますが、円安になると輸入品は高くなります。現在は、米中貿易摩擦、イギリスのEU離脱の影響による世界景気の減速懸念など、為替相場の見通しが難しい状況にあります。
ちょっと調べただけでも、これだけ肥料価格に影響する要因があるものかと驚かされました。肥料原料の輸入を担当する方々のご苦労は相当なものなのだろうと感じ入った次第です。
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