JAの活動:今さら聞けない営農情報
【今さら聞けない営農情報】第21回 土壌の改良(5) リン酸2019年10月4日
前回までに、土壌改良の基礎として「pH」と「EC」、「CEC」、「塩基類」の意味と改良の仕方を紹介しました。今回は、肥料の3大要素として重要なリン酸について紹介します。
1.リン酸とは
リン酸はP2O2で表され、土壌中では、作物に利用されやすい「有効態(可給態)リン酸」と、作物に利用されにくい「難溶性リン酸」や「不溶性リン酸」のいずれかに変化して存在します。
リン酸が土壌に施用されると、その大半が土壌中にある溶解度の低いカルシウムや鉄、アルミニウムなどと結合してリン酸塩をつくるため、「難溶性」や「不溶性」になります。
このことを「リン酸の固定」と呼び、特にアルミニウムと結合したリン酸は作物にほとんど利用されません。このリン酸の固定に結びつく鉄やアルミニウムは、土壌が酸性になるほど土壌中に溶け出すので、その分固定されるリン酸が増えてしまいます。
黒ボク土を代表とする火山灰土壌は鉄やアルミニウムを多く含んでいるので、リン酸の固定が多く起こり、通常のリン酸質肥料を施用しても、大部分が作物に利用されることなく、土壌に固定されてしまいます。
日本は火山国で火山灰土壌が多いため、多くのリン酸が土壌に固定されています。
リン酸は、作物の生育や開花・結実、果実の甘味に関与しており、不足すると作物の収量・品質が低下してしまいます。このため、何とか作物にリン酸を吸収させようと必要以上にリン酸質肥料や堆肥などが施用されてきました。そのため、日本には、土壌中に有効態リン酸が過剰な田畑が多くなっているのです。
2.リン酸の測定
リン酸は、作物が利用できるリン酸である有効態(可給態)リン酸を、希硫酸(pH3)で抽出するトルオーグ法を用いて測定します。実際の分析は、土壌分析センターなどの分析機関に依頼します。
3.リン酸の改良
リン酸を固定する程度はリン酸吸収係数と呼ばれる数値で表され、土壌の種類によって程度が異なります。その数値は、腐植質黒ボク土が最も高く2000以上、黒ボク土で1500~2000、黒ボク土以外の洪積土壌で700~1500、同じく沖積土壌で700以下です。
これらは、土壌の種類によるため改良できません。リン酸が土壌に固定された後に、作物が生育するのに不足している分だけリン酸を施用してあげる必要があります。
そのためには、リン酸1~2.5mg/100g乾土となるように施肥量を調整するのが一般的ですが、実際には、下記の目標リン酸から土壌分析で得られた有効態リン酸の量(実際にほ場に存在する量)を差し引いて、不足する有効態リン酸量を算出し、それに合わせて施肥量を調整します。もし、土壌分析値が目標値より高い場合は、リン酸質肥料の施用を控えます。
この時、土壌の酸性度によっては有効態リン酸が思うように増えない場合がありますので、土壌のpHに合わせて使用するリン酸質肥料を使い分けると効果的です。
また、黒ボクなどリン酸固定力が大きい土壌の場合には、リン酸固定が起こりにくく、作物の根の先から出る有機酸によって溶ける性質を持った"く溶性のリン酸"を含むリン酸質肥料(「ようりん」など)を施用すると効果的です。
本シリーズの一覧は以下のリンクからご覧いただけます。
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