JAの活動:今さら聞けない営農情報
みどりの食料システム戦略14【今さら聞けない営農情報】第110回2021年7月17日
令和3年5月12日に決定された「みどりの食料システム戦略」(以下、「みどりの戦略」と略します)では、「食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現」を目指し、2050年までに目指す姿と取組方向が示されました。前回より、それらの考え方とその具体的な方法についての掘り下げを試みており、前回から「有機農業」を掘り下げており、今回はその戦略を紐解いてみます。
みどりの戦略で示す有機農業の取組面積100万ha(耕地面積の25%)は、大変高い目標であり、これまでの戦略だけでは、達成のためのハードルがかなり高いと言わざるをえません。では、国はどんな戦略で達成しようとしているのでしょうか?
みどりの戦略の工程表(下図)では、2020年から段階的に新たな技術革新を加えていき、目標を達成する内容になっています。
図にあるとおり、2020年~2030年までの10年間に(1)地力維持作物を組み入れた輪作体系の構築、(2)水田の水管理による雑草の抑制、(3)土着天敵や光を活用した害虫防除技術、(4)緑肥等の有機物施用による土づくりといった4つの技術革新、2030年~2040年までの10年間には、(5)除草の自動化を可能とする畦畔・ほ場周縁の基盤整備、(6)AI等を活用した土壌病害発病ポテンシャルの診断技術の2つの技術革新、2040年~2050年までの10年間に、(7)主要病害に対する抵抗性を有した品種の育成、(8)先端的な物理的手法や生物学的手法を駆使した害虫防除技術の2つの技術革新、2050年以降に(9)土壌微生物機能の完全解明とフル活用による減農薬・肥料栽培の拡大、(10)幅広い種類の害虫に対応できる有効な生物農薬供給チェーンの拡大の2つの技術革新と、計10個の技術革新を10年ごとに加えていきながら目標を達成することになっています。これらの技術革新は、有機農業というよりも日本農業を維持拡大してくためにも活用できるものであり、一日でも早く実現してもらいたいものばかりです。
ただ、目的である有機農業の取組面積を拡大することに対し、それぞれの技術革新がどのくらいの拡大効果を持つのか示されておりません。有機農業であればこそ、作付けする作物や作付けする時期、地域が異なれば、採用する栽培方法や採用したい技術革新が異なってきます。
例えば、(2)番の水田の雑草抑制に関する技術革新は、水田で使用できても畑地では使用できません。畑地での雑草害は収量に大きな影響を与えますので、畑地(特に畝内)での雑草防除に関する技術革新が望まれます。国内の水田の60%を有機農業化することを目指しているのなら(2)の技術革新は大きなちからとなるでしょう。
まずは、どの作物でどのくらいの面積で有機農業に転換するのか、農産物供給量からも考えて具体的な目標設定が必要なのではないでしょうか?
次回から、(1)~(10)の技術革新について紐解いてみます。
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