JAの活動:農協時論
【農協時論】農協は専門家になり本来の役割を果たすこと 仲野隆三 元JA富里市常務理事2021年9月28日
生産者の高齢化で農協の経済事業が伸び悩む一方で、稼ぎ頭である信用事業の収益減が続いている。信用事業の収益で農業関連事業の赤字を補填することは難しくなる。経営意識の改革が必要である。
仲野隆三
元JA富里市常務理事
5年間の営農経済事業改革はいまも継続して取り組まれているが、組合員の高齢化が気になる。農協の営農経済事業に影響をもたらすのではないか思慮する。農水省は重要野菜など野菜指定産地の面積要件を25haから20haに改正した。産地の高齢化が進み面積要件が維持できないことによる。特に農協の農業関連事業(販売および生産資材購買事業等)の慢性的な赤字は組合員の高齢化と相まって営農経済事業が縮小するのではないかと心配する。
もう一つは総合経営の稼ぎ頭の信用事業の収益減にある。すでに承知のように農林中金は農協預金に対して奨励及び配当率を0.2%引き下げ決定した。合併などにより預金規模は1千数百万円から数千億円まで農協信用収益額は数億円になり信用事業改革も行われていると聞く。これまでのように農業関連事業の赤字を信用事業で賄うなどという安易な経営意識を改めなければならない。
ではどうするか。「営農改革の継続」と「信用事業の再編」「農業関連事業」の三つの改革再編改善に取り組まなければならない。高齢化する組合員と農業、農地の利用集積と共販促進を推し進め、農業関連事業「販売手数料等の見直しと組合員の役割など再検証して」収支均衡を計り農協の持続発展を考えねばならない。
信用事業はこれまでの系統預金運用から組合員の営農生活事業融資に結びつけ、そのための人材育成を図り、リテールバンキングに集中すべきだと申し上げたい。
気になることは「販売はサービスで、信用で稼ぐなど」既成概念が組合員や役員の頭の隅にあることだ。いまだ役員の一部に元来営農経済事業は赤字だから信用事業は農協から切り離せないなど暴論があることも事実だが、間違いだ。組合員の数百億円から千億円の信用資産をマネージメントできなければ金融事業から退出させられると戒めるべきだ。また農協法改正で公認会計士が導入され、経営リスクがあれば監査で質される。
農業関連事業収支の改善は喫緊課題だ。多くの農協の営農経済事業は総じて多くのスタッフを用し、機械施設の過剰投資などで収入費用の採算性がとれていないと思慮する。手数料率はコメ手数料率だと聞くが、農協の弱みは手数料率の引き上げなど組合員負担を強いることだと認識する。営農経済事業の改革を推し進めるためにも農業関連事業の収支改善は欠くことができない。手数料率を引き上げることで組合員が系統外販売に逃げることを恐れる役員もいるが、販売事業に係る維持管理費や人件費など固定費を組合員に説明して合意を得ることが必要だ。
もう一つは共販現場で組合員のやるべき作業と職員のやるべき作業を創意工夫してスタッフ数を減らすことだ。また若干の手数料引き上げと相互の荷受け作業負担により組合員の金銭負担を減らすことも共同活動の意義に適うのではないか。
共販は卸売市場経由の無条件委託販売のため、農協にとって売掛債権回収のリスクなく、競売等で公平性が保たれ専門知識は必要ない。それゆえに天候等で需給バランスが崩れた時は暴落、高騰がつきもの。軌道敷の上の機関車みたいなものだと組合員は不満を漏らす。
某農協の生産部会の販売手数料はいまだ1.0%、しかし農業関連事業は営農指導事業費用を直接配賦しても税引き前当期利益は1.6億円。信用事業利益は2000万円、共済事業利益6000万円と農業関連事業で生きている。
何故か! 生産部会と手数料引き上げ交渉は決裂、そこで新たな販路開拓した取引に際して低温倉庫および通関コンテナ使用量、スタッフなど人経費、販売費を手数料に加えることで交渉した。直接販売(買取り)手数料を最大10%として年間平均5.0%を組合員から徴収している。販売実績は委託販売(生産部会扱い)40億円、買い取り販売40億円で大手小売店数社と取引先している。
生産資材購買は生産部会と予約共同購買(出来秋払い)による集荷場直送方式により一括引き取りでコスト削減、出来秋払いは年内11月、年明け6月の2回として組合員利用を推し進めている。
ポイントは農協が販売のプロになり実需情報を収集し、常に組合員作付け情報を把握して旬の野菜をいち早くマーケットに売り込むことだと。いまだ人事異動で専門スタッフが育たない農協は時代遅れの感が否めない。農産物価格にインセンティブがつき、担い手の経営安定が図れることで若者は農業農村に残る。
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