JAの活動:農協時論
【農協時論】明日のJA築く "新芽"育てよう 日本協同組合連携機構 基礎研究部主席研究員 小川理恵氏2022年9月2日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様などに胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は、日本協同組合連携機構・基礎研究部主席研究員の小川理恵氏に寄稿してもらった。
日本協同組合連携機構
基礎研究部主席研究員 小川理恵氏
人口減少が本格化し、超高齢社会が到来するなか、世界的な新型コロナウィルス感染症の拡大が追い打ちをかけて地域の持続性を脅かしている。この状況を打破するためには、多様な人材が活躍できる土壌を整えることが必須であり、その突破口の一つが「女性の活躍」である。
2020年12月に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」では、2020年代の可能な限り早期に「指導的地位に占める女性の割合を30%」とする目標が新たに掲げられた。JAグループでも、JA運営への女性参画比率について、正組合員30%、総代15%、役員15%という独自の数値目標を設定し取り組みを進めているが、達成はいまだ遠い。役員に占める女性比率をみても、2021年7月現在の達成率は9.4%にとどまる。
歩みの遅れの背景には、女性がJA運営に参画することの成果が見えづらいことや、女性が自信をもって活躍できる支援体制が不足していることが挙げられる。まずは女性登用がもたらす効果をしっかりと示し理解を深めることが必要だといえる。
JAながの女性部ながの地区長野平支部では、女性部員であり同JA理事の小滝(おたき)愛子(あいこ)さんが先導する「おしゃべりカフェ」が大きな成果を上げている。ながの地区唯一の女性理事である小滝さんは、自分に続く女性リーダー育成の第一歩として、立場や年齢の枠を超え、女性が自由に意見を発信できる場をつくろうと、女性部員・女性職員・女性理事が一堂に会するワールドカフェ形式のおしゃべりカフェを企画した。これまでに2回実施し、参加者数は、第1回(2019年)56人(うち職員6人)、第2回(2020年)86人(うち職員9人)に上る。第2回おしゃべりカフェは、前年秋に発生した長野県の大雨被害を受け、「防災」をテーマに開催した。小滝さんら被災した女性が体験談を発表し、全員で「自分は何ができるか? 女性部は何ができるか?」を話し合った。その結果、有志の女性部員による「長野平地区女性部ボランティアチーム」が誕生し、炊き出しやタオルの配布など、積極的に支援活動を展開している。
おしゃべりカフェの経験から女性たちに大きな変化が現れた。2度のおしゃべりカフェを経たのちに開催された女性部員のSDGs勉強会では、活発に意見が飛び交い、担当講師も驚くほどだったという。「自分の思いを発信できるようになること」という当初の目標はすでに達成されつつある。これは女性職員も同様で、JA支所全体として女性が発言しやすい空気が醸成された。
こうした成果は、表面的には見えづらいことだ。しかし確実に未来に向けた種まきとなっていることは間違いない。そしてこの種まきは、小滝さんが理事という決定権のある立場にいるからこそ実現したことではないだろうか。
全国のJAには、小滝さんのように、強い責任感を持ち、JAの未来のために自分にできることは何かを真摯に考えて取り組む女性リーダーが数多くいる。まずはその事実に目を向けるべきだ。
農水省が、女性役員のいるJAを対象に「女性役員がゼロであったときと比較して、組織や事業に良い効果があると感じるか」を尋ねたアンケートでは、多くのJAがあらゆる場面において「よい効果が実感されている」と答えている。チャンスを与えられた女性の管掌分野は広がりを見せる一方だ。女性たちの新たな芽を潰してしまわずに、良質な水や栄養を注ぎながら共に育む。それこそが、閉塞感のただよう今、JAの"明日"を切り開く扉の一つになるのではないか。
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