JAの活動:今さら聞けない営農情報
有機農業とは76【今さら聞けない営農情報】第195回2023年4月8日
前回まで、肥料原料の価格の高騰に対応した、政府の肥料価格高騰対策事業の支援を受けるための化学肥料低減取組メニューの内容についてご紹介してきました。その中で、今後の農業の発展・維持のためにも国内の肥料資源を活用する必要があり、そのためには、堆肥、汚泥肥料、食品残渣、有機質肥料、緑肥作物といった有機質資材の活用が重要になります。そこで前回より、有機質資材を有効活用するために必要な知識についてご紹介しています。
今回は「化学性の改善」に関することです。
土壌の化学性の改善とは、一般的に土壌pHの矯正のことを指します。作物それぞれには生育に最適なpHの範囲を持っており、その範囲を超えた土壌では生育が悪くなります。例えば、水稲やバレイショであればpH5.0~6.5の弱酸性、小麦やホウレンソウであればpH6.5~7.5のほぼ中性といった具合に、弱酸性から中性を最適pHにしている作物がほとんどです。中には、ブルーベリーのようにpH4.0~5.0と酸性域で、アスパラガスのようにpH6.0~8.0という弱酸性~弱アルカリ域を生育に最適なpHにしているものもありますが、そう多くはありませんので、作物の最適pHは微酸性~中性と覚えておけばいいでしょう。
土壌中に含まれる肥料成分の溶解性はpHによって異なり、例えば、窒素、リン酸、カリといった必須3要素であれば酸性域になると溶解が少なくなり、それに応じて作物が活用できる肥料成分が少なくなってしまい、結果として作物の生育も悪くなってしまいます。つまり、土壌に施用した肥料をしっかり効かせるためにも、pHを適正に保つ必要があるのです。
この土壌pHは土壌中の水素イオン濃度によって決まりますが、日本の土壌は火山灰土が多いために有機質が少なく、加えて多雨な気候であることが災いし、雨水による溶脱が起こりやすいことから、酸性になりやすいという特徴があります。また、アブラナ科野菜根こぶ病のように土壌が酸性になると発生が多くなる病害もありますので、豊かな収穫を得るためには、できるだけ土壌を微酸性~中性に保つように努めなければなりません。
酸性やアルカリ性の土壌pHを中性に近づけることをpH矯正といい、酸性を中性に矯正するのであれば炭酸カルシウム等の石灰質肥料を、アルカリ性を中性に矯正するのであれば、硫黄華やピートモスといった酸性資材を施用します。施用する量は、pH値と土質、使う資材によって異なりますので、緩衝曲線を作り、施用量を決めます。自身で決めるのが不安な場合は、JAなどの指導機関に指導を仰ぐようにして下さい。
◇ ◇
本コラムに関連して、ご質問や取り上げてほしいテーマなどがございましたら、コラム・シリーズ名を添えてお問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)よりご連絡ください。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(173)食料・農業・農村基本計画(15)目標等の設定の考え方2025年12月20日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(90)クロロニトリル【防除学習帖】第329回2025年12月20日 -
農薬の正しい使い方(63)除草剤の生理的選択性【今さら聞けない営農情報】第329回2025年12月20日 -
スーパーの米価 前週から10円上がり5kg4331円に 2週ぶりに価格上昇2025年12月19日 -
ナガエツルノゲイトウ防除、ドローンで鳥獣害対策 2025年農業技術10大ニュース(トピック1~5) 農水省2025年12月19日 -
ぶどう新品種「サニーハート」、海水から肥料原料を確保 2025年農業技術10大ニュース(トピック6~10) 農水省2025年12月19日 -
埼玉県幸手市とJA埼玉みずほ、JA全農が地域農業振興で協定締結2025年12月19日 -
国内最大級の園芸施設を設置 埼玉・幸手市で新規就農研修 全農2025年12月19日 -
【浜矩子が斬る! 日本経済】「経済関係に戦略性を持ち込むことなかれ」2025年12月19日 -
【農協時論】感性豊かに―知識プラス知恵 農的生活復権を 大日本報徳社社長 鷲山恭彦氏2025年12月19日 -
(466)なぜ多くのローカル・フードはローカリティ止まりなのか?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月19日 -
福岡県産ブランドキウイフルーツ「博多甘熟娘」フェア 19日から開催 JA全農2025年12月19日 -
α世代の半数以上が農業を体験 農業は「社会の役に立つ」 JA共済連が調査結果公表2025年12月19日 -
「農・食の魅力を伝える」JAインスタコンテスト グランプリは、JAなごやとJA帯広大正2025年12月19日 -
農薬出荷数量は0.6%増、農薬出荷金額は5.5%増 2025年農薬年度出荷実績 クロップライフジャパン2025年12月19日 -
国内最多収品種「北陸193号」の収量性をさらに高めた次世代イネ系統を開発 国際農研2025年12月19日 -
酪農副産物の新たな可能性を探る「蒜山地域酪農拠点再構築コンソーシアム」設立2025年12月19日 -
有機農業セミナー第3弾「いま注目の菌根菌とその仲間たち」開催 農文協2025年12月19日 -
東京の多彩な食の魅力発信 東京都公式サイト「GO TOKYO Gourmet」公開2025年12月19日 -
岩手県滝沢市に「マルチハイブリッドシステム」世界で初めて導入 やまびこ2025年12月19日


































