JAの活動:今さら聞けない営農情報
土壌改良材(8)【今さら聞けない営農情報】第227回2023年12月2日
みどりの食料システム法が施行され、国内資源を活用した持続型農業への転換が求められ、特に有機質資材の活用に期待が高まっています。いうまでもなく、作物が育つためには、光、温度、水、空気の他、土壌から栄養素を吸収する必要があります。この栄養を供給する土壌の良し悪しが、農作物の品質や収量を左右しますので、作物の生育に適した土づくりが必要になります。
そのためには、土壌診断を実施して土壌の状態を正確に把握した上で、栄養素の過不足を調整したり、土壌の物理性や化学性、生物性の改善作業を行う必要があります。その土づくりで大きな力を発揮するのが土壌改良資材ですが、その使用目的は、土壌の物理性改善、生物性改善、化学性改善の改善が主なもので、本稿では、現在土づくり肥料の特性や使い方を紹介しています。
今回はケイ酸加里肥料です。
ケイ酸加里肥料は、石炭火力発電所で石炭を燃焼した際に煙道で発生するスス(微粉炭燃焼灰・フライアッシュ)に水酸化カリウム、水酸化マグネシウムを反応させて製造します。カリウムを反応させる理由は、微粉炭燃焼灰にはケイ酸が50~60%含まれていますが、そのままでは溶解性が悪く作物が利用しにくいため、カリウムを反応させて溶解性を良くして、併せてカリウムがゆっくり効くようにするためです。
ケイ酸加里肥料の成分は、ク溶性カリ、可溶性ケイ酸、ク溶性苦土、ク溶性ホウ素、石灰、鉄といった成分を含みます。
カリウムがク溶性であるため、カリウムによる濃度障害が起きにくく、塩類集積を回避できます。また、カリウムの贅沢吸収を抑制し、根張りが良くなります。一方、ケイ酸は可溶性であるため作物に吸収されやすく、植物体が強固になって病害や冷害に対する抵抗性を増す効果があります。
水稲はケイ酸をよく吸収し、水稲葉中のケイ酸濃度を高めることが知られています。そうすると、茎葉が剛直になることにより倒伏しにくくなったり、受光態勢を改善して光合成の効率を高め登熟が良くなったります。また、窒素の利用効率を高めて玄米中の窒素濃度が低めに抑えられることから食味の向上にもつながります。
カリウム濃度が高いとマグネシウムの吸収が邪魔されることが知られています。ケイ酸カリ肥料を施用した場合、カリの濃度が必要以上に高まることがないため、マグネシウムがカリに邪魔されることなく作物にスムーズに吸収されて良食味米の生産に役立ちます。
冬期にはほとんど分解しないため成分の流亡はほとんど無いことから、収穫後の秋に基肥として施用することできます。施肥基準に基づき、作物に合わせて、施用量、施用時期を調整して下さい。
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