JAの活動:今さら聞けない営農情報
土壌診断の基礎知識(15)【今さら聞けない営農情報】第245回2024年4月13日
みどりの食料システム法の施行によって国内資源を活用した持続型農業への転換が求められ、国内資源の有効活用に期待が高まっています。作物が元気に育つためには、光、温度、水、空気に加え、生育に必要な栄養素を土壌から吸収しますが、作物が健全に生育するには土壌の健康状態を正確に把握することが必要で、そのために土壌診断があります。現在、本稿では土壌診断を実施して土壌の状態を知り、正しい処方箋をつくるために必要な土壌診断の基礎知識を紹介しています。
今回は、土壌診断項目の1つである鉄です。
日本の土壌には鉄が多く含まれていますが、水田の場合、老朽化が進むと土壌から鉄分が溶脱し、鉄が少なくなっている場合があります。
水稲栽培では、土壌中に発生した有害な硫化水素が原因となって根ぐされを起こし、秋口に急激に生育が悪くなる「秋落ち」現象を引き起こすことがあります。この時、土壌中に鉄分が十分にあると、鉄分が硫化水素と結合して無害の硫化鉄に変化させ、根ぐされを防いでくれます。稲自体が鉄の欠乏によって生育障害を受けることは少ないのですが、土壌中の鉄が不足すると、土壌中の硫化水素を無害化しきれずに根ぐされを起こし、秋落ち現象が発生してしまいます。このため、水田では適正な鉄レベルを保つように管理する必要があります。
一方、畑土壌では鉄自体が欠乏していることは少ないため、鉄欠乏が発生することはあまりありません。畑土壌で鉄欠乏が発生する時というのは、土壌のpHが高くアルカリ性になっていて鉄が土壌中に溶けにくくなっている場合がほとんどです。このため、このような時にはまずpHを中性~弱酸性に矯正する必要があり、pHを矯正しないと、いくら鉄資材を投入しても鉄欠乏症が改善することはありません。
作物体内で鉄の働きは大きく、各種重要な酵素をつくって酸化還元反応や光合成に関与しています。また、葉緑素の原料となるポルフィリンの合成に関与するなど、比較的少ない必須元素である微量要素として知られています。鉄欠乏を起こしやすい作物は、水稲、陸稲、麦類、キュウリ、トマト、ナス、ミカンです。
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