JAの活動:今さら聞けない営農情報
土壌診断の基礎知識(27)【今さら聞けない営農情報】第257回2024年7月6日
みどりの食料システム法の施行によって国内資源を活用した持続型農業への転換が求められ、国内資源の有効活用に期待が高まっています。作物が元気に育つためには、光、温度、水、空気に加え、生育に必要な栄養素を土壌から吸収しますが、作物が健全に生育するには土壌の健康状態を正確に把握することが必要で、そのために土壌診断があります。現在、本稿では土壌診断を実施して土壌の状態を知り、正しい処方箋をつくるために必要な土壌診断の基礎知識を紹介しています。
前回から施肥量の決め方の基礎知識をご紹介しましたので、今回は施用量を決める要因の5つ目、⑤肥料の利用率を紹介します。
肥料の利用率とは吸収率とも呼ばれるもので、施用した肥料がどれだけ作物に吸収されるかを示すものです。土壌に肥料を施用すると、その一部は、土壌に固定されて作物が吸収できなくなったり、雨水とともに溶脱したり、窒素などはガス化して気中に放出されるなどして、作物に吸収されないものが出てきます。このように、「肥料の利用率」とは、土壌に施用した肥料がどの位の割合で作物に吸収されるか、つまり肥料として利用される割合を示す数値です。
例えば、窒素肥料の水田での利用率は基肥で60%、追肥で70%、穂肥で80%とすると、それぞれに10kg/10aの窒素質肥料を施用したとすると、基肥ではその60%=6kgが稲に利用され、4kgが流亡や土壌固定によって利用されないということです。同様に、追肥であれば7kgが稲に利用されて3kgが流亡・固定、穂肥であれば8kgが稲に利用されて2kgが流亡・固定されることになります。
このように、施肥量を決める際には、作物に吸収させたい肥料分量が土壌に入るように肥料の利用率を計算に入れなければならないことになります。
例えば、稲の生育に4kgの追肥窒素が必要な場合、追肥の利用率は70%なので、4÷0.7=5.7kgの窒素が必要になります。5.7kgの窒素をアンモニア態窒素21%の硫安で施用しようとすると、硫安の施用量は5.7÷0.21=27kg/10aとなります。このように、肥料の施用量を決める際に肥料の利用率は重要な数値になります。また、肥料利用率は、土壌の質によって異なるので、事前に土性を把握しておく必要があります。稲の追肥の例では、窒素利用率70%は、圃場が肥料成分の流亡しやすい砂土の場合0.7をかけて算出することになっており、それに従うと70×0.7=49%が利用率となって、砂土では施用した窒素のおよそ半分しか作物に利用されないことがわかります。
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