JAの活動:未来視座 JAトップインタビュー
「茨城らしさ」新ステージへ(2)JA茨城県中央会会長 八木岡努氏【未来視座 JAトップインタビュー】2025年4月16日
「首都圏の台所」とも言われ、農畜産物生産が盛んな茨城県。JA茨城県中央会会長であり、JA全農副会長を務める八木岡努氏は「茨城らしさ」にこだわる。食料・農業・農村の活性化には"らしさ"を磨くことが必要――と説く。農に対する思いを聞いた。聞き手は文芸アナリストの大金義昭氏。
豊富な篤農事例力を結集し前に
JA茨城県中央会会長(JA全農副会長)八木岡努氏
大金 「人材」と言えば、八木岡さんはどんなご両親に育てられたのですか。
八木岡 父親は1930年生まれです。農学校を出て往時の宇都宮高等農林に合格したんですが、農地解放があって、体が弱かった父親(私の祖父)に泣きつかれ、進学をあきらめている。それを亡くなるまで根に持っていた!(笑)
大金 青春時代の八木岡さんは?
八木岡 高校のラグビー部で「チームワーク」を学びました。今もOB会長です。
大金 ついでに現在の趣味は?
八木岡 大型のバイク「ハーレーダビットソン」や「川崎ZRX」に乗っています。
大金 格好いい!
八木岡 私は母親に心配をかけることもなく、すくすくのびのび育って東京農業大学短期大学農業科を出て就農し、30歳でイチゴを導入して最大で50アールに増やしました。女性にも働きやすい品目がいいと、「親孝行のせがれ」です。(笑)
妻は日赤の看護師でした。父親は孫にずっと「やりたいことをやれ!」と言っていた。私の長女は学校の教員、長男は農研機構で研究員をしています。長男と次男は13歳離れているのですが、次男が去年農業を継いでくれました。
大金 それはおめでたい!
八木岡 水戸中央青果(株)の取締役をしていた父親の退任後、36歳で私は非常勤の取締役になり、そこで農産物(商品)を見る目が培われ、篤農家との交流に恵まれました。
文芸アナリスト 大金義昭氏
大金 JA水戸青年部委員長に推されたのが2001年、42歳でした。
八木岡 4年務めて、2006年にJAの非常勤理事に就任しました。その後、県北6JAの広域合併構想が浮上し、「このままでは、農業を担う自分たちの期待に応えてもらえなくなる!」と危機感を抱いた青年部の盟友たちが3人ほど自ら理事に就任し、私を押し立てて選挙になり、4票差で勝って2012年に組合長に就任しました。
理事会は全会一致で合併に反対し、構想からの離脱を協議会に伝えました。JAが大きくなると、組合員1人ひとりの意思が薄まるという懸念からでした。県連会議などに出席すると、「組合長になったのは20年早い!」と言われました。53歳で一番の若輩でしたから!
「より良く」モットーに
JA水戸では居心地がいいけれど、県連の集まりでは冷や飯食らいの「外様」です。日本文化厚生連や新世紀JA研究会、農協協会などに顔を出す機会に恵まれ、出会った皆さんが「今のJAはもっと良くなれる! どうしたらいいか?」と常に前向きでしたから、そこで学んだ先進事例をJA水戸でいろいろ試しました。
大金 八木岡さんは極上のユーモリストで確かな「聞く耳」を持っておられるけど、曲げないことは曲げませんね! 寡聞にして、怒ったところを見聞したことがありませんが、「水戸の3ぽい」に「理屈っぽい・骨っぽい・怒りっぽい」がある!(笑)
八木岡 「茨城の3ぽい」もある!「忘れっぽい・飽きっぽい・怒りっぽい」(笑)。「話は聞くけど、言うことはきかない!」。そう思われて、始末が悪かったんじゃないですか! ただその時に、JA水戸はすごくまとまった。未だに中央会が言うことに対し、JA水戸だけが「ちょっと待て!」と。「独自でやる!」という空気が残っています。
大金 逞(たくま)しいじゃないですか!
八木岡 それはそうだけど、「今は違うだろ!」と言いたい。私がJA水戸から出ているんだし!
JA水戸が商系業者と共同経営で「農家の店しんしん」という資材店舗をオープンした時のことです。役員OBに「魂売ったのか!」と叱られましたが、1800アイテムだった資材センターが2万アイテム扱えるようになり、休日も開店して組合員の利便性が向上しています。
また当時は太陽光発電が42円/kwhで普及し始めたので、JA水戸が所有していた倉庫の屋根や耕作放棄地、撤退していた施設など17カ所に約6億5000万円かけて太陽光発電設備を導入しました。その時は20年かかる投資に対して、「20年後、誰が責任を取るのか?」と言われました。しかし10年経過した時点で計算上の設備分回収ができました。これも他ではやっていないからと尻込みしていたら、こんな結果は得られなかったと思います。
大金 「茨城らしさ」のステップ・アップに向けては?
八木岡 「現状維持」を変えなきゃいけないんですけど! まいた種が少しずつ芽を吹き出しているとは感じています。県下17JAの「チームワーク」で大会決議を実践し、組合員や地域の消費者の皆さんの期待にこたえていきたいですね。
インタビューを終えて
時代が求める〝快男児〟は、1958年クリスマスの日生まれ。『広辞苑』によれば、この日はもともと「太陽の新生を祝う『冬至の祭り』」の日とか。天命を戴(いただ)き、茨城県のJAグループをけん引する八木岡さんにふさわしい縁(えにし)である。「謂(い)われを聞けばありがたぁき~」という謡曲のひと節が頭をよぎった。バイクウエアで
さっそうと風を切る雄姿が目に浮かぶ。「知行合一」を座右の銘に、食料・農業・農村を持続可能な道へ先導するライダーでありラガーマンの奮闘に期待したい。(大金)
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