JAの活動:今さら聞けない営農情報
農薬の正しい使い方(46)【今さら聞けない営農情報】第312回2025年8月23日
「いまさら」では農薬を正しく、安全に、しかも高い効果を得るため、農薬の正しい使い方の基礎知識をご紹介しています。農薬の防除効果は、有効成分をいずれかの方法で作物に付着または吸着させることができてはじめて発揮されますので、高い効果を発揮させるには、有効成分をいかに効率よく作物に付着させるかが鍵となります。現在、濃厚少量散布機械の一つであるドローンで農薬を散布する際の留意事項を掘り下げて紹介しています。
前回、ドローンで濃厚少量散布を実施する際のメリットをご紹介しましたので、今回はデメリットを紹介します。
1つめのデメリットは、使用する農薬によって効果の安定性が左右される点です。
農薬の有効成分が防除効果を発揮するためには病原菌や害虫に直接作用する必要があります。そのため、農薬の有効成分が作物上の病原菌や害虫が寄生する場所全てに満遍なく農薬が付着するように散布することが農薬散布の基本であり、それが実現できていれば農薬の有効成分は持っている性能を最大限発揮できます。ところが、散布の仕方によっては、例えば葉裏などのように有効成分が付着していない部分が生じる場合があります。ドローンのように作物の上空から噴霧ノズルで散布する場合、特にイネ科以外の作物の場合に、葉表に多くの薬液が付着し、葉裏への付着量は少ないか全く付着していないケースが見受けられます。このようなケースでも、散布した農薬の有効成分が浸透移行性や浸達性を持っていれば、葉表に付着した有効成分が葉裏にまで浸透し、葉裏でも防除効果を発揮することができます。しかしながら、農薬の有効成分には浸透移行性を持たない予防効果が主体のものも多いため、使用する農薬の特性を予めよく把握して使用時期や散布液量などを工夫する必要があります。
2つめが園芸作物における濃厚少量散布の登録農薬が圧倒的に少ないことです。園芸作物は作物全体に農薬を満遍なく付着させた方が防除効果も安定するため、作物の形状からして濃厚少量散布法は不向きなものが多いようです。そのこともあってか、「無人ヘリ散布」登録は水稲に多く、畑作や園芸作物での登録農薬はまだまだ少ないのが現状です。近年は地上散布の登録があれば、薬害試験のみで濃厚少量散布の登録を取得できるようになっており、農薬登録のハードル自体は下がっています。しかしながら、実際には効果面での不安もあり、園芸作物への濃厚少量散布の登録拡大は思うように進んでいません。
3つめのデメリットは、薬害の発生リスクが高くなることです。特に、園芸作物の場合は前述のような事情で試験例は増えているものの、濃厚少量散布の実施事例は水稲に比べて圧倒的に少ないため、実際に活用する場合に思わぬ薬害が起きるリスクは否めません。そのため、実際の使用にあたっては、事前に自身の圃場条件における薬害の有無を小面積で確認した後に濃厚少量散布を導入する方が安心できるでしょう。
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