JAの活動:第61回全国青年大会
日本の農業担う責任自覚を JA全青協・黒田栄継会長に聞く2015年3月2日
第61回JA全国青年大会へ向けて
OneForAll,AllForOne?協同?我らの思いが未来をつくる
・日本の食に責任
・現場の発想から
・協同の価値示す
・「改革」で意見書
JA全青協は平成26年5月に創立60周年を迎えた。今日、日本の農業、JAは、TPP問題や「農協改革」など、かつてない厳しい環境に直面している。いまJA青年部になにが求められているか。第61回JA全国青年大会を前に、黒田栄継会長に聞いた。
ポリシーブックで政策実現めざす
◆日本の食に責任
――いまJA青年部に求められる役割はどのようなことでしょうか。
黒田 数は少なくなりましたが、JA青年部は間違いなく、将来この国の農業を背負っていく人たちの集まった組織であり、人を育てる組織です。青年部の活動のなかで、全国で、いろいろな考え方を聞いて、まだまだ日本の農業の可能性がたくさんあると感じました。これまで我々の先人たちが積み重ねてきたものを改めて見直し、それをしっかり共有して伸ばしていくことが大事だと思っています。
農業の役割は、農産物直売所の全国的な展開などにみられるように、農山漁村とのつながりが欲しいという国民も少なからずいる中で、大きくなっています。それは、我々の先輩たちが国民や消費者とつながりを作ろうと努めた取り組みの成果でもあります。
いま農業は厳しい状況にありますが、人間が生きていく上で欠かせないのは食です。しかも日本の食文化は世界的に高い水準にあります。食べるものがいらないということは、これからも決してありません。我々は国民の食料、健康をしっかり背負っていかなければなりません。これは時代がどう変わっても必要です。このことをしっかり認識して、責任をもって取り組めば、農業は決して先のない産業ではありません。
気になるのは、食料・農業・農村基本計画などで、食べ物の大切さは指摘していますが、食を中心とした農山漁村の価値がいまひとつ明確でないことです。この国として、しっかりした農業の価値を示すべきだと思います。
ヨーロッパでは、農業が大事なことは消費者・国民が理解し、できるだけ国産品を買い、農業の補助金も、それは農家を助けるためではなく消費者の利益のためであると理解しています。そうするためには生産者も責任をしっかり果たすという、消費者、生産者相互の認識を構築していかなければなりません。
◆現場の発想から
――それを訴えるのが青年部の役割ですね。
黒田 青年部は農業の経営者です。先祖が築いた土台の上で経営をしています。都市と農村が切り離された現在、青年部は、消費者とのつながりをつくり、農業を知ってもらうだけでなく、我々が消費者のニーズをしっかり把握し、それに応えられるように、全力をあげて取り組んできました。
改めて、これから必要なのは食育だと思います。この言葉は平成17年の食育基本法から始まりましたが、食べ物が大事ということと農業が大事ということは、意外とイコールになっていません。それをどう近づけていくかに、我々の役割があるのではないでしょうか。
そしてしっかりした政策提言をすることです。それも現行の政策を出発点にするのではだめです。我々は現場の人間です。現場の課題を洗い出してそのなかから解決策を考えなければなりません。その上で、足らざるところは訴えていく。農業、食を支える人間としての責任があります。
この考えで青年部は、ポリシーブックを通じて関係各所と対話をしてきました。これからも、こうした現場の感覚を大切にしたいと思います。地方創生が注目されていますが、日本の農業は、その地方に合ったスタイルがあります。それをしっかりと押さえなければなりません。自分たちの魅力を理解していないと、政策提言しても相手には伝わらないのではないでしょうか。
◆協同の価値示す
――青年部はどのようなことを次代につないでいくべきでしょうか。
黒田 農業は目的ではなく、生きていくための手段です。国民に有益なものが農村にあればそれを維持していくことです。農業者は厳しい天候のなか、お互いに助け合ってきました。そこに協同の価値観が生まれ、それを伝えるために農業を営むのです。
協同活動や伝統文化の維持と、経済効率を求めることが相反しているとは思いません。協同の価値観が、所得の向上に結び付いている事実も多くあります。周囲の意見に惑わされず、自分たちの良さを見直すことが大切だと思います。
――青年部の盟友は、いま農業やJAについてどのような考え持っていますか。
黒田 この一年、多くの盟友と意見交換をしてきました。そのなかで、多いのは、農協にはすばらしい役割があり、それをしっかり果たすことが、結果的に一番効率がよく、それが地方を支えていくことになるのだという意見でした。
それは現状維持がよいということではありません。我々は経済活動をしているということをしっかり押さえながら、協同組織の本当のよさを最大限に発揮するにはどうすればよいのか、という悩みが多く聞かれました。今回の農協改革は、改めてそれを問い直す機会になったのではないかと思っています。
◆「改革」で意見書
――ひと口に農協改革といっても、農協は地域によって差がありますが。
黒田 そうです。きちんとやっている農協もあります。すべてを批判するのは納得できません。我々は昨年9月、「JAグループの自己改革に関する意見書」を発表しました。その中では、地方を支えているというなら、もっと生産者に利用される事業をやってください、農協の基本は営農経済活動だというような、厳しい意見も出しました。
青年部員は農協の利用者であり、出資者、経営者でもあります。経営者としての責任をしっかり果たしていくことが求められます。
――これからの青年部にどのようなことを期待しますか。
黒田 人数的には一気に増やすことは難しいでしょう。いま新規就農者が増えていますが、こうした人たちに力を貸し、地域を盛り上げるべきだということが重要だという意見を、ポリシーブックで多くの組織が取り上げています。どちらかというと内向的な青年部ですが、これまでみられなかった期待できる動きです。
新しい価値観を受け入れていけるのが青年部です。その時代時代で必要な人のつながりをつくれる組織でありたいと思っています。順番待ちでなく、我々が次の時代をつくるのだという自覚と意識を持つことが、いまわれわれ青年部に求められていることではないでしょうか。
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