JAの活動:JA全国女性大会特集2018 農協があってよかった―女性が創る農協運動
【インタビュー・JA全国女性組織協議会 川井由紀会長】ふみだす勇気が仲間と地域、JAを変える2018年1月18日
JA全国女性組織協議会は1月24日~25日に東京都内で第63回JA全国女性大会を開く。「仲間ととともに」「ふみだす勇気」を強調する川井会長に大会を前にJA女性組織への思いを聞いた。
--JA自己改革の目標のひとつである「地域の活性化」は、女性組織の力が期待されています。
私たちの活動のテーマは食と農、そして地域の暮らしです。それをJAの名のもとの女性組織が行うということです。そのなかには食と農について若い世代に伝える活動もありますが、私たちの親の世代、おばあちゃんの世代が私たちと一緒に楽しめるいろいろな活動も喜ばれています。地域で顔見知りの若い世代が自分たちのためにやってくれる活動は非常にうれしいと言ってくれます。
JAでは今、支店統廃合も進めているところも多いですが、そのまま閉じてしまわないで上手に利用しながら今までのつながりを大事にしていかなければいけないと思っています。私自身も利用していた近くの支店がなくなりましたが、地域のみんなが集まれる拠点にしようと女性部が中心になって積極的に話し合いをしています。
支店を加工施設にしたり、みんなが集まれるサロンのようにしたり、ミニデイサービスの拠点にしたり、本当にこうした食と農と暮らしをテーマにした活動は地域にとって素晴らしい活動だから、これからも若い人にもつながっていってくれたらいい。世代が代わりながらも地域の活動に関わっていける機会をつくれたらいい。地域とともに仲間とともに、一緒に年を取っていくということも大切だと思います。
(写真)JA全国女性組織協議会 川井由紀会長
--JA全国女性協の3か年計画のスローガンは「JA女性 ふみだす勇気‐学ぼう、伝えよう、地域とともに」です。このスローガンに込めた会長の思いを改めてお聞かせください。
このスローガンは今の女性協の活動にとってはもちろん、女性組織としてJAの自己改革を後押しするにもぴったりの言葉だと思います。ですから今大会のメインテーマもこれでいこう、と決めました。
本当に、一歩踏み出しながらJAの自己改革とは何かということを学ばなければなりません。そして、それをどう伝えていくのか、仲間と地域にどう落とし込んでいくのか、も大事です。だからまさにこの言葉なんです。
男女共同参画は何年も前から言われて、女性組織もまず部員になり、それからJAの総代になりましょう、運営委員や理事にもなりましょう、という運動を進めてきました。JAのことを知り参加・参画へと一歩、一歩踏み出しながら、今、自分たちがここにいるんだということです。そして、これをまた人に伝えようということです。
最初の一歩を踏み出そうと呼びかけることももちろん大事ですが、ここまで来た自分たちもさらに毎日、踏み出そう、と。私も、よしがんばろう、と日々踏み出しています。
--会長にとって、あるいは地域にとってJAとはどんな存在だとお考えですか。
私は米を作って、繁殖牛経営もしていますから、JAの担当営農指導員が巡回し牛のことについてチェックしてくれますし、いろいろな相談に乗ってくれて、獣医や畜産センターの人たちとつなげてくれる役割を果たしてくれています。JAの役割は大きく、JAがなかったら牛も米も出荷できません。とくに中山間地域の小規模な農家にとって、JAがとりまとめて販売してくれるのはありたがいことです。 野菜も同じことで、農家がいろいろな野菜を作れるのも、JAがまとめて選果場に出荷して系統販売してくれるから成り立つのであって、全部自分たちがどこに販売するかを毎日毎日考えなければならないとなったら、大変なことです。
日本は中山間地域が多く、小規模な農家が多いのですから、その農家がいろいろ生産して生活していくには、それを集め束ねてくれる農協が必要だと思います。
それだけではなく生活するにはAコープで買い物をしたり、ガソリンも入れなければなりません。田舎では銀行は、ぱぱっと無くなってしまいましたから、JAの信用事業がなかったら生活はどうなるのかということです。まさに生活そのものです。
--JAの自己改革について女性組織としてどういう取り組みをしますか。
自己改革の後押しとは何かということをJA女性組織56万人に伝えるために、今度の大会では初めての試みとして寸劇を上演します。これは自己改革の背景を知ってもらうものですが、これをきっかけにみんなが各地に持ち帰って、自分たちでも寸劇を考えて上演し、組合長さんにコメントを加えてもらうなどして、地域の女性部員やフレミズに理解を広げていってほしいと思います。
しかも一回では終わりませんから、自己改革についてまた寸劇づくりを考えようとなれば、自分たちで地域のことやJAのことを話し合うようにもなると思います。そのきっかけづくりにしてもらえればなおいいと思います。そこにJAの役職員も参加してもらえるようになればいいと思います。
自己改革の重点事項は農業者の所得増大と農業生産の拡大ですが、実は、この地域にはこんな作物が合ってます、作ってみませんか、いついつその勉強会をしますよ、といったことはJAの広報誌にも掲載されていると思います。いろいろな提案をしてくれているのに、それが当たり前になってしまっていて気がついていないということもあると思います。ですから、私たちの取り組みは農協がやっていることをもっと理解しようということでもあります。そういう女性部の活動をJAの役職員も利用して自己改革で何をしようとしているのか、分かりやすく伝えてくれたらと思います。
JA女性組織は、「学習」「対話」「発信」を軸にJAの自己改革を後押ししていきたいと思います。
--改めて女性農業者として日頃の思いをお話しください。
日本には日本の農業のあり方があるのであって、世界の基準に合わせることはないと思います。日本らしさの農業で日本人に合ったものを、日本人が作って食べることがいちばんいいと思います。そこには、農業を大規模化し生き残れるようにするということには当てはまらない部分があると思います。
たとえば山間部が多いけれども、だからおいしいミカンができたり、棚田の風景があってそこでおいしい米ができたりということだと思います。それを生かした農業が結局は大事ではないかと思いますが、大規模化の追求はそういう面を切り捨てるように思えてなりません。手間暇かかるけれども環境を生かした農業で日本人に合う農産物をつくっていく。それがいつまでも続く日本だったらいいと思います。
(関連記事:近年のJA全国女性組織協議会会長)
・【鈴木JA全国女性協会長・石田龍谷大教授 対談】横・世代の連帯が大事(17.01.25)
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・【インタビュー】これまでの60年を振り返り、未来に向け転換しよう 瀬良静香・JA全国女性組織協議会会長(13.01.21)
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