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JAの活動:今、始まるJA新時代 拓こう 協同の力で

【提言:農業協同組合に望むこと】栗本昭 法政大学教授 組織と事業を抜本改革 SDGs実現へ協働を2019年10月18日

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 いま世界は大きな変革期を迎えている。市場競争を前提とした資本主義経済は、世界規模で格差と貧困を拡大し、いまやその限界が誰の目にも明らかになっている。次のあるべき社会の姿を誰も描き切れないなかで、唯一救いの神として、「競争」の対極にある「協同」の組織「協同組合」が注目されている。協同の組織である農協がこれからどのような役割を果たすべきか。法政大学大学院・連帯社会インスティチュート栗本昭教授は、国連のSDGsをもとに、世界の協同組合と連携し、その役割を果たすべきだと主張する。

栗本昭 法政大学大学院・連帯社会インスティチュート教授栗本昭 法政大学大学院・連帯社会インスティチュート教授


◇「失われた30年」平成時代の帰結

 平成の30年間は人口の減少、格差の拡大、グローバル化、情報化が同時進行した変動の時代であった。人口は超高齢化と超少子化によって2011年から減少しはじめ、東京への一極集中と地方における農業の縮退、地域経済の疲弊、自治体消滅の危機が進行した。労働の規制緩和とともに非正規雇用が増大し、格差と貧困が増大した。また、冷戦終結とともに市場経済が世界に広がり、規制緩和とWTOの発足、自由貿易協定の拡大によってグローバルな競争が激化し、アジア諸国が躍進するとともに、日本はかつて世界を席巻した半導体や家電などの分野で敗北した。
 さらに、インターネットやスマホを通じた情報化が生産と生活のあり方を抜本的に変えるとともに、米中企業の躍進と裏腹に日本企業は後退を重ねている。経済の落ち込みを税財政でカバーするため公共事業と減税が繰り返され、日本は世界最大の財政赤字を抱えるに至った。その結果、日本の国民一人当たりのGDPは「ジャパン・アズ・ナンバーワン」から20位台の半ばに後退し、平成時代は「失われた30年」となった。このような状況の下で政府の行財政のみならず、すべての企業、団体が変革を迫られている。

◇農協改革は自立のチャンス

 この間、日本の農協も大きな変化に直面してきた。総合農協数は合併統合の結果、4000弱から607に減少した(令和元年7月末)。組合員数は30年間で微増して1000万人を超えているが、それは准組合員数の増加によるもので、2009年からは正組合員数と逆転し、その差は拡大している。日本の農協は専門農協を中心とする欧米の農協や、ボトムアップの日本の生協と異なり、農業政策によって農業・農村のインフラとしてトップダウンで作られてきたことから、農政の下請け機関、圧力団体、協同組合の三位一体(藤谷築次氏)、全戸加入、系統制度、総合農協という制度化された農協(大田原高昭氏)など、協同組合学会の会長をつとめた農協研究者による特徴づけが行われているが、いずれも自主的な農協への改革の必要性を訴えている。
 農業をめぐる制度も食管制度の廃止と農地法の改正による企業参入によって保護から競争に転換しているが、オムロンやファーストリテイリング(ユニクロ)などが農業参入を試みてすぐに撤退しているように、資本力があれば農業経営に成功するという保証はない。農協についてもこれまでの保護行政(1950年代の農協整備促進法、1960年代の農協合併助成法、各種補助金等)が終焉に向かう中で、農協が第4の協同組合原則『自治と自立』を実現する必要がある。2015年の農協法改正を自立のチャンスにするために、行政主導の受け身の改革から農業者による主体的な改革をすすめることが求められている。

◇組織・企業としてのイノベーションを

 農協改革においては地域の農協(JA)の自主的な改革の取組みが基本である。それは組合員の利益を実現するために事業活動を行うということである。農協法第7条は農協の目的を「組合の行う事業によってその組合員及び会員のために最大の奉仕をすること」と規定し、「農業所得の増大に最大限の配慮」、「農畜産物の販売その他の事業において、事業の的確な遂行により高い収益性を実現」することを求めている。これまで販売、購買等の経済事業の赤字は信用、共済の金融事業の黒字によって穴埋めされてきた。経済事業の赤字幅は年々縮小してきたとは言え、マイナス金利のもとで信用事業による赤字補てんの余地は今後ますます縮小することが予想されており、事業構造改革による経済事業の黒字化、赤字事業の整理・移転を避けて通ることはできない。
 組合員のニーズや意見に基づいて経済事業を黒字化することは喫緊の課題である。また、不採算事業について他の協同組合、団体との協働、合弁、事業譲渡もありうる。その場合、コンサルタントや学者の見解を聴くのはいいが、決定するのはあくまで組合員、農協自身である。イノベーションを起こすことができるのは、組合員や農業の現場と日常的に接触し、その問題点や悩みをつかむことができるJAである。幸い、全国各地のJAで様々のイノベーションが起きており、農水省のウェブサイトには「農業の発展に成果を出している農協の取組事例」として多くの成功例が紹介されている。このような事業改革を進めるうえで、組合員の組織や活動の活性化、とりわけ女性や若手のリーダーの活躍が重要である。
 連合会は単協に対する支援、サービス提供など補完的役割を果たすことが本務である(補完性の原則)。会員単協の事業と経営を支援し、その成功例を全国に普及することが重要である。平成に元号が変わる1988年から1991年にかけて全国農協大会の決議は単位農協の広域合併と連合会の「中抜き2段階」、すなわち都道府県連合会の全国連への統合という組織整備方針を打ち出した(日本生協連は1959年に事業2段、指導3段に再編する「組織綱領」を決定し、現在生協の事業はほとんどの地域で日本生協連と事業連合・広域生協の2段階に統合されている)。
 共済事業においては全国統合が実現しているが、経済事業と信用事業の統合は道半ばである。連合会は単位農協の事業と経営を支援するために、経済組織としてのビジネスモデルを確立し、ガバナンス上の改革を進めることは喫緊の課題である。また、業界団体として再編される中央会は農協陣営を代表し、政策調整や広報渉外、教育研修を進めることが求められている。

◇目標を共有しパートナーシップで


子ども食堂を運営するJAも子ども食堂を運営するJAも

 国連は1960年から10年毎に発展途上国の経済・社会の開発目標(「国連開発の10年」)を設定して取り組んできたが、新千年紀に入ってそれは「ミレニアム開発目標」(MDGs、2000-2015年)にひきつがれ、さらに環境問題を統合して「持続可能な開発目標」(SDGs、2016-2030年)が設定された。「持続可能な開発」は消費と生産、産業とインフラ、人口と輸送、農村と都市、経済と社会を含む現代の流行語となった。それは持続可能な未来をめざす国連の政策の到達点であり、先進国も含めて変革を求めている。政府のみならず、民間セクターも含めて目標を共有し、創造性とイノベーションの発揮が期待されている。誰も単独では達成できない目標だからこそ、パートナーシップ・協働が不可欠である。
 協同組合は第7原則『地域社会への関与』を実践するために地域経済・社会の問題への取り組みをすすめてきた。ICAは2012年の協同組合の10年に向けたブループリントにおいては、「経済、社会、環境の持続可能性において定評あるリーダーとなる」という「2020年ビジョン」を掲げ、SDGsについては「Co-ops for 2030」というサイトを設け、各国協同組合のコミットメント(公約)を集約している。
 日本生協連は「2020年ビジョン」として「私たちは、人と人とがつながり、笑顔があふれ、信頼が広がる新しい社会の実現を目指します」を掲げ、2007年以降、社会・環境に関する取り組みの進捗状況を評価し、課題を特定するために、年次の「社会的取り組み報告書」を発行している。これらの取り組みをさらに推進するため、 日本生協連は2018年6月の第68回総会において「コープSDGs行動宣言」を採択し、ホームページに「SDGs と生協」コーナーを設けて推進している。2017年にパルシステム生協連合会、2018年に日本生協連は、政府による「ジャパン SDGs アワード」で SDGs 推進副本部賞を受賞した。
 JAとしての重要な視点としては、自己改革とSDGsを同時に進めること、他の協同組合や企業の取り組みに学ぶこと、これまでの各分野の取り組みをSDGsの目標に沿って位置付けること、ソーラーシェアリング、食品ロス削減など新たな取組みをすすめることを提起したい。具体的な進め方としては、「SDGコンパス」を使って事業プロセスを設計すること、優先課題、目標を設定し、経営に統合すること、PDCAによる推進と持続可能性報告書の作成を行うことが重要である。

◇おわりに

 筆者はこの50年間、主として日本生協連の職員として活動してきたが、同時に協同組合の価値と原則、日本と世界の協同組合の歴史と理論、とりわけ法制度やガバナンスに関する比較研究をすすめてきた。日本の農協と生協は組合員数から見ても事業高から見ても世界有数の組織に成長したが、大きな環境変化の中でこれまでの組織と事業のあり方を抜本的に見直す必要に迫られている。この小論では部外者としてあえて辛口のコメントを行ったが、日本の農協が自主的な改革をすすめてさらに発展することを期待したい。

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