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【特集:第66回JA全国女性大会】提言:「政治を語り 要求する」女性部へ――スウェーデンから愛をこめて 姉歯曉 駒澤大学教授2021年1月19日

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姉歯曉駒澤大学教授は、現在、北欧スウェーデン南部の学園都市・古都ルンドに交換教授として滞在し調査・研究活動を行っている。そんな姉歯教授から、JA全国女性大会によせて、スウェーデンと日本の女性の社会的なあり方の比較を交えながら、全国のJA女性部のみなさんへ期待をこめたエールを寄稿していただいた。姉歯教授は女性部にこれから求められることは、「学び、行動する」ことから「政治を語り、要求する」女性部になることだと語っています。

極地キルナでのオーロラ(筆者撮影)極地キルナでのオーロラ(筆者撮影)

全国の農家女性の皆さん、日本の、そして世界の農業と食料、自然の行く末に心を留められている皆さん、スウェーデンのルンドから新年のごあいさつと、「第66回JA全国女性大会」の成功をお祈りしてメッセージを送らせていただきます。

筆者近影筆者近影

1.コロナ禍の食を支えてきた日本の「農」の力

まず最初に、このパンデミックの中にあって、マスクや防護服などの圧倒的な不足という工業分野における脆弱(ぜいじゃく)性が露呈する一方で、カロリー自給率が4割を切っている日本において食料パニックが発生しなかったことに、自給率1%の東京都民の一人として心から感謝申し上げたいと思います。外食産業、学校給食への供給量の圧倒的減少、物流の混乱といった苦境の中で、輸入食材における物量の確保や国内の農業支援を徹底して行ってきた農水省、JA、農家の皆さんの努力は計り知れないものであり、ネット上で展開された新たな消費者への販路の構築を通じて、国内農業との結びつきを実感した消費者も多かったのではないでしょうか。

これまでの輸入依存の食料供給体制の限界がコロナによって明らかになりました。以前から繰り返し言われてきたことですが、「有事にはまず食料の囲い込みが起こる」という歴史的事実が今一度確認されたのです。

人間にとって食べることは生存の基本要件であるだけでなく、コロナとの闘いにおいて重要な毎日を過ごす気力や忘れてしまいそうな笑顔を取り戻すための必須要件でもあります。スーパーの棚のあちこちがトイレットペーパーの買い占めやら麺類の買い占めで空になったあの時期、空の棚を見ること自体がストレスになるといっていた知人の言葉を思い出します。そんな風景の中、いつもと変わらず店に新鮮な野菜や肉、魚が並んでいることにどれだけ多くの人が救われたことでしょうか。

ここ、スウェーデンでも買い占めがほとんど発生しなかったと言われています。その理由は政府に対する信頼の高さによるものです。感染症対策の専門家が座長となり、政府から独立してコロナ対策を行い、毎日何時間もかけて国民の前で定時に状況を説明し質問を受ける、専門家委員会に政府は一切介入せず経済政策でこれをバックアップするという姿勢が評価されました。

日本ではトイレットペーパーなど紙製品や消毒用アルコールなどに対する買い占めが生じました。それだけ「自助だけを求める」政府に対する信頼度の低さが示されたとも言えます。そんな中にあって、日本で食料の買い占めを生じさせない対応が取れたことを今後のためにもしっかり検証し、将来に向けた食料安保の確立を急ぐべきだと思います。

PCR検査をしているテントPCR検査をしているテント

2.女性により多くの影響が出ている

私たちの新型コロナウイルスCOVID-19との闘いもとうとう年を超えてしまいました。感染拡大(パンデミック)がここまで長期にわたって人々の生活に多大な影響を与え続けることになろうとは当初は予想されていませんでした。しかし、コロナとの闘いが長引く中で、このコロナが及ぼす影響が、誰にでも、どこでも平等に現れるものではないこと、従って、コロナとの闘いが単なるウイルスとの闘いだけに収まるものではなく、社会的、経済的な問題としてこれまでの総括を要求されているのだということが明らかになってきています。

コロナ禍の影響はあまねく平等なものではなく、とりわけ、次のような社会的弱者に負荷がかかっていることがわかっています。高齢者、女性労働者、特に非正規で働く女性たち、ひとり親世帯、特に母子世帯、また言葉の壁や社会的交流の壁があり情報共有が難しい移民労働者など、いずれも世帯所得が少なく、就業も不安定な人々です。

コロナの影響で経済活動が収縮した4月の対前年同月比で見た女性の「雇用者数」は男性の2倍もの減少となりました。もともと非正規で不安定な就業状態に置かれてきた女性たちが真っ先に首切りの対象となっているのです。その中には母子世帯の女性たちも多く含まれています。母子世帯の女性たちの平均所得はコロナの前から全世帯平均の約半分の270万円と極めて苦しい状態に置かれてきましたが、こうした女性たちがコロナ不況で仕事を失うケースが数多く報告されています。フードバンクで食料を受け取る女性たちの中から、子どもに3食食べさせることで精いっぱいで自分の食事は1日に一食といった訴えや、すでに子どもたちにも十分に食べ物を与えることができないといった悲嘆に満ちた声もよせられています。

日本の非正規雇用に目を向けると、男性が約2割にとどまっているのに比べて、女性では非正規が5割を超えています。女性労働を不安定、低賃金のままに利用し尽くして発展してきた日本の経済システムを今こそ転換させなければなりません。

3.福祉政策こそがジェンダー平等の要:スウェーデンの経験から

スウェーデンの女性たちは言います。「まだまだ育児が女性の肩にかかっている。保育園の送り迎えは圧倒的に女性の役割のまま、賃金格差もまだ解消されていない」。まだまだ女性たちの闘いは続いています。

それでも、スウェーデンのジェンダー平等の進展度は日本とは比べようもありません。スウェーデンは女性の労働力率が退職前までの全年齢層で8割から9割と極めて高く、結婚、出産、育児でも離職することはまずありません。労働組合組織率が欧州でもダントツの7~8割を維持しているので、労働条件も日本では考えられないほど恵まれています。労働時間も短く、年間約1600時間程度(日本は約1800時間)、週50時間以上働く労働者の比率は約2%(日本は約3割)、自営業を除いてお昼休みはきっちり休み、郵便物は1日に1度の配達、土日は郵送物は届きません。

日本における過労死や働き盛りの年齢の男性の自殺率の高さはスウェーデンでは驚愕以外の何者でもありません。台所で女性だけが食事を作り、男性がテレビを見てビールを飲んでいる風景は想定できません。こうしたスウェーデンの男女平等は女性たちを中心とした運動の成果です。女性たちが政治を語り、政治に関与し、長い闘いを通じて作り上げてきたものです。

そのスウェーデンでは、福祉政策が長い間、男女平等を推進する要となってきました。戦争に参戦しなかったスウェーデンでは戦後の経済復興がいち早く進み、それまで家庭の中で育児や家事に専念してきた女性労働力を活用する政策が進みました。そのためには育児や介護から女性たちを解放するための保育所、介護施設の建設が重要です。こうして新たに生まれた保育士やヘルパーなどのケアスタッフの仕事が女性たちの職場となりました。公営の保育所や介護施設は男女平等の賃金形態をとり、長時間労働や過重労働も回避されたので、女性が進出するには好都合でした。

農村女性のジェンダー平等もこの政策の中で大きく前進しました。ここで女性たちが得た賃金は、その後、特に景気後退期の農家の家計を支える大きな力となっただけではなく、高齢者を老後の不安から解放し、さらに介護者と被介護者という関係を抜きにした愛情だけで結びつく家族関係をも実現することにつながりました。

このスウェーデンの経験は、JAがヘルパー資格取得運動を展開してきたことを想起させます。家庭内の介護者という身分から介護職への転換を図り、女性の自立と地域の介護需要との連携を図る、高齢となった家族や自分自身も安心して老後を送ることができる、そして家族も安心して家族の介護を任せることができる施設は高齢者の介護の重圧に耐えてきた農家女性にとっては何よりも重要な必須インフラです。そのためには介護職に就く人たちの労働条件と何より賃金水準を向上させることが必要です。介護施設で働く人々の経済状況を整え、生活環境を向上させることがいかに大切なことなのかは、スウェーデンの現状を見ればよく理解できます。

遠足の途中、ルンド大聖堂の前の階段で休んでいる保育園の子供達と先生遠足の途中、ルンド大聖堂の前の階段で休んでいる保育園の子供達と先生

4.スウェーデンの「失敗」から日本のこれからを考える

スウェーデンでは、コロナで施設や自宅で介護を受けていた高齢者が数多く感染し亡くなりました。スウェーデンでは、1992年に広域自治体から高齢者の介護サービスや保育サービスなどを市町村に移管するエーデル改革という政策転換が行われました。民営化も進み、かかる予算を削減したい施設は移民労働者を非正規で数多く雇用することになります。移民労働者は生活環境も労働条件も脆弱で、こうした環境の中で多くのケアスタッフが感染したものと考えられています(宮川絢子「スウェーデンの新型コロナ対策は失敗だったのか。現地の医療現場から」Forbes Japan, 2020/06/16)。

また、州、市町村、そして国と三つの責任主体が高齢者介護に関する責任を分掌しており、このような有事に際して統合的に問題を把握し迅速に対処することができなかったこと、医師が不在だった施設もあり、ケアスタッフだけに判断が任されたところもあるなど、これまでの福祉政策の不備として指摘されてきた点が改善されないまま、そのツケが高齢者に大量の犠牲を出すことになったと見られています。

今、まだコロナとの闘いが続いていますが、スウェーデンではすでに各種政策の批判的検証が始まっています。上記のような分析結果もその一部ですが、ここからも、スウェーデンのこの失敗したと言われる高齢者介護の姿は、今日本政府が目指している介護のありようと酷似していることがわかります。

日本の介護施設では、デイサービスなどの利用者が減少し資金繰りが厳しくなっているにもかかわらず、施設内感染を防ぐための作業は増えています。今こそ、介護報酬の引き上げ、大幅な賃金引き上げで介護スタッフを応援しなければなりません。JAは、ヘルパー資格の取得促進だけではなく、そうして資格を取得した女性たちの労働条件を向上させる交渉にも果敢に乗り出す必要があります。

JA女性部もまた、介護現場の条件改善など、政治に物申す行動が今こそ求められているのではないでしょうか。自立できるだけの賃金水準を獲得することが、家庭内における女性の地位を押し上げることにもつながります。

男女平等は残念ながら起業だけでも、また農業政策だけでも成し遂げることはできません。女性の解放が福祉政策、ジェンダー平等政策そのものでこそ実現できることはスウェーデンの経験が物語っています。

5.「学び、行動する」ことを「政治」につなげる

一方、周囲を見渡すと、今や農家女性のJAにおける活動の比重が農業そのものよりも地域の介護や助け合いに置かれるようになっていることが見て取れます。そうであれば、この非常事態にあって税金の使い方が分かっていない政府に税金の使い方を教えることができるのは、地域に根ざし、協同の力で暮らしの課題に寄り添ってきた女性たちです。

女性たちは長い間政治を語らないようにしながら仲間作りをしてきました。すでにそれでは済まなくなっている、それがコロナのもとで明らかになった日本の現状です。

「学び、行動する」だけではなく、これまで積み重ねてきた協同の力、地域や仲間とつながるスキルを活かして「政治を語り、要求する」女性部へと前進していただきたい、そのことを期待してエールとしたいと思います。

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