JAの活動:何が求められるか JA新任常勤理事研修会
【JA新任常勤理事研修会】現場の声原動力に 本気で臨めば気力沸く 菅野孝志・JA全中副会長2021年10月13日
JA全中は今年の8月、令和3(2021)年度の「JA新任常勤理事研修会」をオンラインで開いた。研修会では、いまJAの役員にはどのような役割が求められているかについての講義とJAの実践報告を行った。JA全中の菅野孝志・副会長の訓話と、慶應義塾大学の奥村昭博名誉教授の講義、それにJAおきなわの普天間朝重理事長、JA京都にのくにの迫沼満壽組合長の報告の要点を紹介する。
菅野孝志
JA全中副会長
昭和47(1972)年、福島県の松川町農協(当時)に奉職した。そのころ農協の図書コーナーにあった賀川豊彦の小説『乳と蜜の流るゝ郷(さと)』に出会った。自分の住む地域を豊かにするため、農協のやるべきことに関し、当時の農業と産業組合についての状況が今も通じることが多いと感じた。復刻版が出ているのでぜひ読んでいただきたい。
地域をどうするかが小説の主人公である東助の問題意識である。彼から学ぶことは、挑戦する力、実務力・企画力、そして人を集める力である。いま、コロナ禍で会議の多くはオンラインやSNSになっているが、JAにとって組合員とのフェイス・トゥ・フェイスは欠かせない。JAに行けば何か楽しみがある、新しい情報が入る希望の場所だと、組合員に感じてもらえるようにしなければならない。
JAの運営は、声なき声をいかに聞くかが重要である。松川町農協のAコープの設置を決める総会のとき、出席した男性の多くは反対し、700人ほどの出席者の8割を占める女性の発言はなかった。しかし議長が「設置」を宣言すると満場の拍手があった。Aコープがほしいというのが女性の本音だったのだが、その声が表に出なかったのだ。このためどうしたら組合員の声が聞けるかを常に意識し、小まめに集落座談会を開いてきた。
JAの情報はほとんどが職員を通じて伝わる。そのため職員には組合員と話ができる能力が求められる。コーディネーターとオルガナイザーとしての能力である。役員はそれをトータルに補佐し、そのための仕組みをつくらなければならない。
協同組合には教育が欠かせない。JA新ふくしまのとき「教育文化活動研究会」を発足させた。また職員を対象とした「吾妻創造塾」を開講し、50代も含めた年代別研修も実施した。講師はJAの常勤役員や地域の経営者だが、職員が学び成長することで役員も学ぶ環境ができる。おかげで職員のモチベーションが高まり、東日本大震災でも、事業実績が落ち込むようなことはなかった。
震災から10年、負の部分だけではないが、福島の大地は荒れた。心も荒れかねない。改めていま変わるときだと思う。それは地域の農業振興をベースに地域のど真ん中にあって自立できる組織への変換である。地域の人が「JAはすごいね」と言われるようにしたい。そのためには大地に生きる人たちの意見を聞くことであり、現場を見て考え、考えを形にしたい。
本気で臨めば気力が湧くものであり、本気と気力は共鳴する。「あいつは本気なのに、俺はどうなのか」と、周りの人も前向きに考えるようになる。
最後に新任常勤理事の皆さんへの期待を述べたい。営農経済理事としては農家組合員の実態(生産・販売・農業・経営)に寄り添うことである。この地域の農業にどのような可能性があるか、営農指導員や若い農業者を集め議論することだ。
金融共済理事としては、いかに職員への目配りをするかである。職員に一声かけ、喜んで現場に足を向けられるようにしたい。また総務・企画理事は農協全体の姿を組合員にどう伝えるかが大事。それがJAに対する組合員の理解につながり、結果として職員のモチベーション高めることにもなる。
経営者はJAのあり方を自分でよく考えその思いを自分の言葉で職員、組合員に伝えて動かしてほしい。また組合員の営農と暮らしの現場、職員が働く現場に足を運び、職員の気持ちを感じ取り、声をかけてほしい。職員は経営者の後ろ姿から学ぶ。自分を信じて行動していただきたい。
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