JAの活動:何が求められるか JA新任常勤理事研修会
【JA新任常勤理事研修会】「共感」と「利他」の概念持ち 奥村昭博・慶應大学名誉教授2021年10月13日
JA全中は今年の8月、令和3(2021)年度の「JA新任常勤理事研修会」をオンラインで開いた。研修会では、いまJAの役員にはどのような役割が求められているかについての講義とJAの実践報告を行った。JA全中の菅野孝志・副会長の訓話と、慶應義塾大学の奥村昭博名誉教授の講義、それにJAおきなわの普天間朝重理事長、JA京都にのくにの迫沼満壽組合長の報告の要点を紹介する。
奥村昭博
慶應大学名誉教授
いま時代は大きな変革期にある。世界が地殻変動を起こしており、こんな時代にこそリーダーシップが求められる。リーダーに必要なのは、目標・ビジョン・大義であり、そのいずれも、今年の五輪、コロナ対策ではみられなかった。楽観主義・主観主義、仮説に基づいた意思決定などをみると、第2次世界大戦との歴史的相似性を感じる。
今日、JAの経営者に求められている役割は、(1)企業(組織)価値の向上(2)イノベーションの遂行(3)投資責任(戦略的意思決定)を果たす(4)社会的責任の一層の推進(5)地域創生の責務を果たす(6)「人財」の育成――である。
一般企業の組織価値は株価によって評価されるが、JAは組合員への利益還元が価値の指標となる。同時に食料の安定供給だけでなく、地域あるいは社会への見えざる貢献が問われる。今後、経済活動以上に、社会にいかに貢献するかが重要になる。
JAは地域の"顔"である。地域と共生し、それぞれの地域で雇用、経済活動、生活基盤の安定に対する責任がある。例えば地域住民の生活を根底から変える支所(支店)の統廃合などは、その影響力を考えて行わなければならない。JAの経営者はソーシャル・イノベーター(社会変革者)であるべきである。
人財の育成も大きな役割である。JAは農業従事者の教育・育成、支援だけでなく、新規就農者や後継者育成に努めなければならない。職員の育成も同じ。経営の神様といわれた松下幸之助氏や京セラの稲盛和夫氏の言う「経営の要諦は未来志向の人財育成」である。
これまでリーダーには「徳」「指導力」「専門的知識」が必要とされてきた。しかし、今日、相次ぐ自然災害やコロナ禍などで、ともに信頼し合って問題に対処しようという価値観が生まれている。それは「共感」という「利他」的倫理観である。JAの理念に基づいて考えると、JAのリーダーは「共感」のリーダーシップを発揮できる立場にある。
つまり、(1)地域生活者やステークホルダー(利害関係者)に対して、ニーズをくみ取り、共感した上で行動する(2)組織内の「仲間」に対しても共感に基づいたリーダーシップを発揮する(3)相手の立場をよく理解し、現場に入り込んでその深層をみる――ことが求められる。つまり「共感」をコアとする新しい組織づくりが求められる。
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