JAの活動:何が求められるか JA新任常勤理事研修会
【JA新任常勤理事研修会】「三方よし」の精神で 普天間朝重・JAおきなわ理事長2021年10月13日
JA全中は今年の8月、令和3(2021)年度の「JA新任常勤理事研修会」をオンラインで開いた。研修会では、いまJAの役員にはどのような役割が求められているかについての講義とJAの実践報告を行った。JA全中の菅野孝志・副会長の訓話と、慶應義塾大学の奥村昭博名誉教授の講義、それにJAおきなわの普天間朝重理事長、JA京都にのくにの迫沼満壽組合長の報告の要点を紹介する。
普天間朝重
JAおきなわ理事長
コロナ禍は沖縄の農業とJAの事業に大きな影響を与えた。石垣牛の販売不振で枝肉相場が下落し、肥育センターの経営が悪化。また観光客依存の高い農産物直売所が苦戦、また葬祭事業などの取扱高が急減している。
さらにマイナス金利の長期化で貸出金利息は年々減少し、コロナ禍によってマイナス金利はさらに長期化する恐れがある。一方、農林中金の奨励金が段階的に引き下げられ、JAおきなわではおおむね毎年2億円ずつの減額になる見込みだ。
こうした危機を突破するにはどうするか。「ストックデールの法則」というのがある。ベトナム戦争で捕虜になったアメリカ兵で、拷問に耐えて生還したのは、厳しい現実を受け入れて「最後は勝つ」という信念をもった者だった。クリスマスまでには、あるいは復活祭までには釈放されるだろうと希望をつないだ人が、失望の結果死んでいったという。
どんな状況にあっても、自分の置かれた現実のなかで最も厳しい現実を直視しなければならないということを教えている。拷問に耐えられなかったのは楽観主義者だった。
歴史作家の童門冬二氏は「改革を拒む三つの壁」を挙げている。「物理的な壁」「仕組みの壁」「意識の壁」であり、なかでも一番難しいのが「意識の壁」だという。私が経済担当専務に就任した時、意識改革のための行動指針を職員に示した。「体を張れ」(体を張らなければ何も動かない)、「前へ進め」(とにかく前に進もう)、「道を開け」(そうすれば自ずと道は開ける)である。
意識の壁が突破できれば成果はついてくる。平成24(2012)年度まで、毎年3億円から10億円近い赤字だった農業事業の収支が改善し、黒字に転換できた。とくにシークワーサーの値決め・買い取り・複数年契約の実施、離島におけるサトウキビのJAによる完全受託、耕作放棄地への植え付けなどで、農産物取扱高の改善につなげた。
JA沖縄は令和元(2019)年機構改革を行った。基本理念は「原点回帰」、基本方針として総合事業機能発揮、期待効果として事業横断を掲げた。従来、農業、生活、信用、共済の事業本部別に区分けしていた機構を、「農業振興本部」と「暮らし丸ごと応援本部」に分け、農業部門と信用・共済・生活が合体した生活部門という区分にした。つまり、従来の事業ごとの考えは他業種との競争を意識するあまり事業縦割りのなかで、事業推進という意識になりがちだったものを、もう一度原点に返り、「農業を振興する」「組合員の生活を支える」という使命を形にした。
近江商人の、商売のあり方に「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」がある。売り手、買い手も満足し、商売を通じて地域社会の発展や福祉に貢献しなければ、商売は継続できないということだ。職員が働きやすい職場環境にすることも大切で、職員の負担になっている共済一斉推進を廃止した。また産休中も就業とみなし、昇格の足かせにならないよう、女性の働きやすい職場づくりを進めている。
組合員の生活を支える農産物直売所
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