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JAの活動:築こう人に優しい協同社会

【提言】企業、協同組合は、何を信じて進むのか 蔵王酪農センター理事長・冨士重夫氏2021年12月10日

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JAグループは先の全国大会で「持続可能な農業・地域共生の未来づくり」を採択した。協同組合はこれからどう進むのか、企業との違いは何なのかなど、元JA全中専務で現在宮城県の蔵王酪農センター理事長の冨士重夫氏に提言してもらった。

冨士理事長蔵王酪農センター
冨士重夫理事長

(1)法人という組織の特質

法人とは何か? 何をしでかすか分からない化け物のような存在と言われる。そもそも、売買とか金銭消費貸借などの取引に関する法律行為ができるのは、意思決定を行い実行できる自然人の成人である。法人とは法律によって取引に関する法律行為をできる権限を与えられた組織である。

その種類は、株式会社や協同組合、社団法人、財団法人など様々なものがある。これら法人組織の違いは「目的」と「事業運営システム」にあると言える。株式会社の目的は株主、投資家への最大の利益配当であり、協同組合の目的は組合員の幸せと豊かな暮らしの実現である。

「道徳なき経済は悪、経済なき道徳は寝言」と言ったのは渋沢栄一である。皆が幸せにならないと自分も幸せにならないと言う彼は、『論語と算盤』においても道徳(論語)と商業(算盤)を両立させる重要性を説いているし、また「士魂商才」武士の心と商人の才覚を兼備すべしと主張している。

株式会社でも、こうした人が経営者で、法人の意思決定を行なっていれば協同組合的事業運営になると思うが、協同組合は人が誰であろうとも事業運営システムが協同組合原則に立脚しているところが株式会社とは違う。

(2)雪印乳業の歴史的経過

北海道の協同組合からスタートして二十数年を経て株式会社に転換して行った雪印乳業。

大正14年に黒澤酉蔵氏たちにより設立された北海道製酪販売組合が始まりである。その後、北海道興農社を経て昭和22(1947)年に、北海道酪農協同株式会社に改組して、昭和25(1950)年に雪印乳業となり、日本のトップ乳業会社に成長して行く。

その雪印乳業が平成12(2000)年に大きな食中毒事件を起こして、消費者から強い批判と不信を受け、市乳部門と乳製品部門を分離し解体された。北海道の大樹工場で製造された脱脂粉乳が停電により、エンテロトキシンA型に汚染され、それを加熱すれば大丈夫との誤った認識で出荷したことにより発生した大規模食中毒事件であった。

この事件では、利益至上主義や悪い事を隠す体質であったり、上層部に情報が伝わらない組織構造など、企業トップの対応や言動の問題も指摘された。

今日、全農、全酪連系のメグミルクと合併し「雪印メグミルク株式会社」となって我が国の酪農家と消費者を結び付ける新たな組織となって歩んでいる。

(3)SDGsの重要な担い手である協同組合

今、SDGsが企業の流行のように取り上げられているが、国連が貧困、格差の解消や環境破壊を改めるよう各国が取り組むべきであると提起したのは、このような事態を生み出した利益至上主義、市場原理主義、グローバリズムといった考えに基づく「新自由主義」からの脱却をはかり、持続可能な社会経済システムへの根本的な価値観の転換をしなければ人類の幸せは無いとの考えによるものである。このSDGsに取り組むにあたって、特に貧困・格差の削減や仕事の創設などに果たす協同組合の役割が評価され、協同組合が持続可能な社会経済システムの重要な担い手とされているのである。

(4)協同組合の運営参画の危機

では、日本の協同組合の最大組織であるJAの現状はどうだろうか。

設立から約70年程度経過しており、この過程の中で合併を繰り返すなどして組織や事業の規模も大きくなり、組合員全員の直接民主主義から間接民主主義の総代制度になり、祖父や父か自ら作った組合からの代替わりが進んでいる。自分たちが作った組合ではなく、既に存在している組合であり、総代でなければ直接議決権を行使することもない。総代の人でさえ。その総代会の全国平均出席率は50%程度となっているのが現状である。

組合員の大多数が稲作をして、農業や地域の課題も共通していた設立当初から、果樹から野菜、施設園芸、畜産、酪農など多様な農業が多様な類型によって営まれ、個人や法人や共同組織など様々な形態が存在している。

共益権という、議決権行使や運営に参画するという権利の無い准組合員が増大し、正組合員の数より多い組合の割合も拡大し、准組合員の事業量も拡大している。准組合員は、組合員である。員外利用者ではない。 

組合員が自らの営農や生活に係る事業を行う協同組合を作り、出資し、事業利用し、自ら議決権を行使し、運営に参画して行くという協同組合の本質、特質が弱くなっている。組織基盤の弱体化、運営参画の危機、民主的運営の危機という認識を強く持つ必要がある。

組合員や役職員の教育はもちろん大切であるが、組合員による組織活動、協同活動を活発に行う仕掛けやシステムを作り、第2、第3世代、准組合員に三位一体の協同組合を実感してもらう取り組みが重要だと思う。

今、労働者協同組合、ワーカーズコープの方々の発言や行動が情熱的だ。協同組合としての法整備が無かった時代から組織を作り、事業を行い、活動して来た。そして今、法整備が実現し、名実ともに協同組合として歩み出している。まさに第1世代である。自分たちで作って来た協同組合であるので理念や行動に輝きがある。

(5)協同組合の事業運営システム

株式会社と協同組合の「事業運営システム」の違いはどんな点にあるのか。

誰がオーナーかと言えば、株式会社は投資家であり、協同組合は組合員である。事業展開の仕方は、株式会社はグローバル主義であり、協同組合は地域主義である。利益分配について言えば、株式会社は外部流出型であり、協同組合は循環型である。経営戦略は株式会社は短期主義であり、協同組合は持続可能型であり、ガバナンスは株式会社は合理的効率主義で、協同組合は人間主義である。

ドイツ語で解説すると「ゲマインシャフトが家族」であり、「ゲゼルシャフトが企業」であり、その両方を併せ持つ組織「ゲノッセンシャフトが協同組合」である。

こうした協同組合の特質を生かした事業運営を実施し、総合事業の力を発揮した事業展開して行くのがJAである。

(6)JA自ら「行動指針」を示し実践する

多様な正組合員(個人、法人、集落営農、専業、兼業、単作、複合など)のそれぞれの具体的な意思反映の行動プロセスを示し、地域住民の大宗を組合員として、地域一体となって地方創生や地域活性化を目指す役割を担う具体的な内容を示す。准組合員として多様な事業利用を通した、地域農業や地域経済への役割を示すなど、協同組合としてオーナーである組合員の民主的運営を、具体的に実践している姿を示すことが重要だと思う。

そして今のJAにおいては、地域住民全体として、信用、共済の事業利用によって得られた利益は、地域農業振興や地域経済のために活用する姿勢をJAの財務会計の基本方針として明確に示す必要がある。総合事業の展開によって、そのトータルな事業によって地域農業や地域社会のためにJAの役割を発揮し「食と農を基調とした協同組合」としての経営理念にもとずく事業運営を展開することを内容とする「行動指針」を示し実践して行くことが必要である。

ふじ・しげお 1953年東京都生まれ。77年中央大学法学部卒業後、全国農業協同組合中央会入会。常務理事、専務理事を経て、2017年一般財団法人蔵王酪農センター理事長

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