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JAの活動:JA全農創立50年特集 なくてはならない「JA全農」を目指して

なお残る〝県境の壁〟 全国統一組織の全農の役割は 福島大学・小山良太教授【JA全農創立50年】2022年3月29日

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全国統一組織になったJA全農。福島大学食農学類教授の小山良太氏は全国組織の特徴を生かし、過剰な産地間競争を超えて「新しい産地の枠組みの構築が求められている」とし、グローバル経済下ではルールメーカーになることが優位性を発揮する条件となるという。全農の役割を提言してもらった。

2000年前後から長年の課題であった農協系統組織の再編が進み、都道府県共済連の全共連への統合や経済事業の全国二段階制、広域合併農協の出現など、系統組織は大きく変化した。本年で統合連合となった全農が誕生して約20年が経過した。地域ごとにみると、ほとんどの都府県が全農への統合を果たし、ホクレン、愛知、宮崎、鹿児島など一部の経済連は県域2段階を残し、それ以外は各地域の事情もあり1県1農協や県農協の形態を選択してきた。

事業論の研究遅れ

福島大学食農学類教授 小山良太氏福島大学食農学類教授
小山良太氏

およそ20年前の全農統合当時、県域の連合会機能については組織論的には論じられることはあったが、事業論としては研究が少ないことが指摘されていた。経済事業に関しては、販売事業、購買事業でも、その品目によって、また地域によって事業のもつ性格は異なり、そこでの単協、連合会、全農の機能分担など地域の課題は多様であった。当時、経済事業改革が進められ、営農関連事業の収支改善、収益力の向上が求められていたが、そうした大きな課題に対して、平均的、一律的な議論の展開ではなく、地域ごと、事業ごとの制度設計が求められていた。そのため県本部制の導入により地域ごとの事業特性に合わせた統治形態が採用されることとなったのである。

統合の問題としては、県本部は損益管理が中心業務であり、財務計画を立てることが難しく、投資型、開発型の農協運営や地域農業振興が困難になることが懸念された。それへの対応として、営農振興・企画部門を県域に保持すべく、全農県本部、中央会、県(行政)の連携による新たな仕組みが必要とされていた。

県域2段階を残した地域には共通する特徴があった。①経済事業規模が大きく、早期から食管制度型の産地から市場対応型の産地へ転換していた地域であった。②これまでの産地づくりの過程で自治体農政と県域農協事業の推進が一体となって展開しており、③地域投資の主体として農協が位置付いてきた。それゆえ、④全農への資産の統合への抵抗が強く、地域農業振興部門の喪失への懸念が、全農統合への抑止として働いていた。

全農統合を行った地域でも農業基幹地域、かつ経済連が一定の事業規模(基盤)を有する場合、統合後も産地における経済事業の基盤を県域で保持するための工夫を模索してきた。

つまり、全国統一組織となった全農において、組織としてのスケールメリットと農業・農村という地域性を伴う産地機能(事業基盤)をどのように再構築するか、全国的な組織力と地域・産地の事業展開のあり方が問われた20年であったと言える。

全農統合に伴うJAグループの組織力を発揮したのが東日本大震災であった。一つは発災時の緊急対応の迅速であった。先日(2022年3月16日)の福島県沖地震に対してもそうであったが、地震直後の水、食料、ガソリンの供給体制や避難先での預貯金の出し入れなど単協の事業範囲だけでは難しい状況が頻発している。

11年前の東日本大震災の際も、岩手、宮城、福島の津波被災地域に対して食料供給など災害支援や物資が不足する中でJASSのガソリン供給などJAグループの組織力が発揮される場面が随所にみられた。

風評対策大きな力

特に原子力災害の被害地域となった福島県においては、全国約720万トンのうち33万トンを生産していた米の安全性確保と取引の再開に関して、全農本体から米流通の専門人材の派遣を受け、福島県中央会、全農福島県本部、県内単協の連携のもと、風評対策と新規市場開拓を進めてきた。その結果、用途別販売の新たな出荷形態、新品種の導入、自治体と連携したオール福島の販促イベントなど、放射能汚染対策から市場戦略へと福島県産米の新しい流通の形を模索しうる段階まで来ている。
このことは、全農と統合した後に県域の営農振興機能を各組織と連携しながら進めていくという、組織と事業の課題に対する一つの形であるといえる。

問題は、結局、県域ごとの産地間競争の枠組みを超えられないことが、同じ全農県本部ごとの市場競争を過熱させ、結果として、供給過剰下で米価の下落を招いてしまっていることである。原子力災害により後発産地としての位置づけに落ちた福島県産米は、不利な競争条件下に置かれており、通常の産地間競争に晒(さら)される体力がない。特に営農再開途上にある浜通りの旧避難地域は深刻である。通常の市場競争とは異なる新たな生産、流通の仕組みを導入することが求められている。

産地対応枠を超え

米は主食であり、貯蔵技術が確立しているため通年供給が可能で、消費動向から業務用米需要が増えており、市場開拓のため新品種の開発も旺盛である。その結果、産地ブランド競争が繰り広げられ、いわゆるレッドオーシャン(競争の激しい市場)の状態にある。

米の主産地の経済連の多くは全農に統合してきた。逆に言えば、県域2段階の残した経済連は、もともと園芸作物、畜産などの産地化に成功してきた市場対応型、マーケティング型の地域であった。そこで、米においても広域の販売戦略と産地間調整を超えた生産戦略を構築できないかと考えている。

例えば、北海道が行っているような良食味米産地とそれ以外による生産体系のすみ分けと用途別の販売戦略を米の主産地である東北6県プラス新潟県も含めた広域米流通網で対応できれば、全国約720万tのうち260万t(全国シェア36%)を東北・新潟で確保することが可能となる(北海道55万t、7・6%)。家庭用、中食用、外食用と用途別に使用される米を需要に合わせて生産(産地のすみ分け)し、市場対応していくことで、過剰な競争を超えて新しい産地の枠組みを構築することが求められている。

これらの課題に取り組む上でも、現状分析のための統計資料「系統経済事業基礎統計」は重要であり、県ごとの指標をあらためて分析したい。

また、アジアモンスーン地帯、水田農業を基幹とする国々におけるグローバルな認証制度の設計に全農が有する知見が生かせるのではないか。グローバルGAPなど西欧型の認証の仕組みを超えて、アジア圏の地域特性を鑑みた制度設計に先取りして参画することは重要である。グローバル経済下では知財管理だけではなく、ルールメーカーになることが優位性を発揮する条件となる。全国組織としての全農の新展開に期待したい。

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