JAの活動:【2024年新年特集】どうする食料・農業・農村・JA 踏み出せ!持続可能な経済・社会へ
【農業産出額トップ3 ・新春座談会】ホクレン篠原末治会長×JA茨城県中央会八木岡努会長×JA鹿児島きもつき下小野田寛組合長②2024年1月12日
「農に生きる」を誇りに産地を超え食卓守る
【出席者】
▽ホクレン会長篠原末治氏
▽JA茨城県中央会会長、JA全農副会長八木岡努氏
▽JA鹿児島きもつき組合長下小野田寛氏
▽司会・文芸アナリスト大金義昭氏
食料・農業・農村基本法が25年ぶりに改正される見込みの2024年は、現場実践を伴ってこそ、本当の転換の年となる。すでに培ってきた現場での実践から未来を描くため、農業産出額上位3道県のトップに意気込みを話し合ってもらった。(座談会は2023年12月18日に実施)
〝物語〟を発信/輸出も視野に
ホクレン会長 篠原末治氏
■■ 所得増大
大金 「好きこそ物の上手」だけれど、「好き」だけでは農業が続けられない。「農業者の所得増大」については?
八木岡 一人の農業者の努力だけで何とかなる時代ではないから、同じ作物に取り組む人たちが部会で切磋琢磨(せっさたくま)し、協力し合うことで産地力を高める。これがJAの「強み」ですよね。しかし、作ったものをどう売っていくか。「出口」が肝要です。茨城は東京に近く、多様な販売ルートがあって系統販売率が3割ほど。品目も多いために絞り込みやブランド化が難しく、その点では北海道がうらやましい。
篠原 コロナ禍による行動制限が3年ぶりに解除され、経済もようやく動き出しました。しかし、資材価格の高止まりで経営環境は厳しいまま。飼料は「系統飼料結集運動」を基軸に、専門的なサポートを強化し、生産性の向上とコストの抑制に挑戦しています。販売やブランド化は、これまで「北海道の米」などと大きく括(くく)っていた戦略から、道内産地を押し出したブランディングをめざしています。また、産地と取引先とのマッチング機会を創出するために、「みどり戦略」に沿って生産されたお米の「みどりの北海道産米チャレンジ」なども実施しています。
大金 北海道も様変わりしていますね。かつてはロットで大量に出荷する「食料供給基地」というイメージでしたが。
篠原 無論、それも大事なミッションです。
下小野田 鹿児島でも販売単価を引き上げるために、「どういう形で栽培しているか」を伝えるなど、産地特性や生産者のストーリーの発信に力を入れています。JA管内は県内一のピーマン産地なのでピーマンの収穫祭を開き、消費者の皆さんとの交流を深めています。資材は輸入品が多く円安の影響もあって高騰し、JAだけで抑えるのは難しい。堆肥を化学肥料とブレンドするなど、地元資源の活用にも注力したいと考えています。
■■ 加工・物流
大金 農業の可能性や未来を切り開くには、経済事業を展開するJAの役割が極めて大きい。加工や物流・商流の改革ではどんなチャレンジをしていますか。
篠原 生産物の付加価値を高めようと、北海道産の米糠(こめぬか)を集めて「こめ油」を作り、機能性表示食品としてブランド化しました。搾った糠は系統の飼料工場で活用しています。JA全農と連携して「電気」の供給も開始しています。
八木岡 去年7月、北海道の十勝で開かれた農機の国際展示会に行ったのですが、高価な最新の大型農機に目を見張りました。耕された畑を見ると、何百mも先まで畝(うね)が真っすぐ! 同じ土俵で競い合うのではなく、茨城は茨城のやり方で頑張ろうと痛感しました。
大金 「働き方改革」の余波で物流が滞りかねない「2024年問題」にも直面していますが。
八木岡 大消費地に近く、輸送距離が短いという利点のために、首都圏での対応はかえって立ち遅れています。労働時間規制で残業代が稼げなくなった小さなトラックの運転手が離職すると、飼料の個配や農産物の集荷が難しくなる。「地産地消」の「強み」を生かしながら、ダメージを少しでも減らしたい。
篠原 北海道も深刻ですよ。物流では、発送から到着までパレット積みのまま運ぶ「一貫パレチゼーション」に取り組んでいます。トラック運転手の省力化もあるし、拘束時間短縮にもなる。赤字ローカル線をどうするかが課題になっていますが、幸い、貨物鉄道輸送は当面維持する方向になりそうです。北海道の農畜産物は全国の食卓を支えているので、何とかこれを維持したいと考えています。
八木岡 JA全農もJRと連携し、鉄道や船の活用を広げています。
下小野田 鹿児島も大消費地や首都圏から遠い。「2024年問題」で輸送のコストアップが避けがたい。どう価格転嫁できるか苦心しています。東京まで運ぶのではなく、もっと近くで販売できないかとか、アジアに近いという利点を生かして輸出を増やせないかとか。
大金 ドバイに行ってこられた?
下小野田 昨年10月に行ってきました。千葉のJAいちかわと昨年から友好協定を交わしています。中東に梨を輸出しているJAいちかわとご一緒させていただき、和牛と「辺塚だいだい」をプレゼンしてきました。和牛はハラール認証が不可欠ですが、「辺塚だいだい」は帰国後、さっそくサンプルを送っています。現地にある日系商社を通じて販売する予定です。
八木岡 1次加工も課題ですね。たとえば有機農業は、以前は直売が中心でした。学校給食や生協に安定供給していくとなれば、使いやすいように予冷や冷凍、カットなどが必要です。
篠原 加工では「健康」「簡便」「環境」など新たなカテゴリーで商品開発を進めています。健康面では、先ほどふれた「こめ油」のほか豚肉、タマネギなどを機能性表示食品として販売。簡便性では北海道産米を使ったミールキット(パエリア、中華おこわ、ジャンバラヤ、鶏五目)の商品化、さらに環境面では大豆ミートの商品化、米の「ゆめぴりか」の環境負荷軽減を追求した販売などにもチャレンジしています。
下小野田 私たちも農畜産物の価値を伝えるために、加工にチャレンジしています。お茶由来の成分「カテキン」やサツマイモ、ビタミンEを強化した飼料で元気に育ったブランド豚「茶美豚(チャーミートン)」を使った「茶美豚まん」も開発しました。ホルモンや角煮、「辺塚だいだい」を使ったジュースやドレッシングも販売しています。
篠原 どうしたら付加価値を高められるかですよね。しっかり議論するなかで、縦割りだったホクレンも横の連携がとれ、小回りが利くようになってきました。今後も事業間の横連携を図っていきたい。
八木岡 JAは見事なくらいに縦割りの組織だから(一同笑)。やはり、経済事業で結果を出さないと迫力がない。それには「脱・縦割り」です。JA全農もそういう方向性になってきました。ただ、トップがそう心がけていても長い歴史に培われた岩盤もあるので時間がかかる。
大金 その岩盤によって農業が守られてきた面もありますからね(笑)。でも、これからは「総合力」を事業横断的に発揮しないと生き残れない。それには下小野田さんなどが実践しておられるオープンマインド・オープンスタンスが問われる時代ですね。
八木岡 やはり、率先垂範です!(笑)
篠原 私たちは農産物が作れる。だけど、売るにはパートナーがいて初めて売買が成り立つ。いろんな人の知恵を積極的に取り入れていきたいです。
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