JAの活動:【2024年新年特集】どうする食料・農業・農村・JA 踏み出せ!持続可能な経済・社会へ
【提言2024】100年後考え適地適作 福島大学食農学類教授 小山良太氏2024年2月7日
2023年、世界は地球沸騰化の時代に突入、地上ではロシアのウクライナ侵攻が続き、さらに中東情勢も深刻化、混迷と対立が深まるなかで2024年を迎えた。本紙新年号は「踏み出せ! 持続可能な社会へ」をテーマに、世界情勢と日本の未来を見越して、農政をはじめとした政治、政策、そして農業協同組合への提言を幅広く識者に発信してもらう。
福島大学食農学類教授 小山良太氏
地球環境の変化は、我々も含むありとあらゆる生き物の生活環境に大きな影響を及ぼすようになっている。福島県では、震災・原発事故から13年を迎えようとしている。福島県漁業は2021年4月に10年間続いた試験操業を終了し、本格操業へ向けて動き出した。10年間、限定的な漁業を続けてきた影響もさることながら、この間の海水面温度の上昇、季節の変化、更には漁でとれる魚種の変化など、原子力災害への対応に加えて地球温暖化由来の環境変化への対応に直面している。魚種で言えば、震災前にはほとんど見られなかったトラフグ、タチウオ、伊勢エビといった漁獲が増え、それに合わせた漁法を導入する漁業者の増加や新規市場開拓など流通戦略も含めた新ブランド化が始まっている。
地球温暖化を防ぐための対策は最も重要であるが、環境変化に合わせた、変化を取り入れた新たな農林水産産業の生存戦略の構築も不可欠である。
農林水産業は自然の物質循環の仕組みを利用し、作物を育だてたり、自然の恵みを採取する産業である。土地の肥よく度、気候条件を満たした「適地」に最も効率的に物質循環の恵みを得られる作物を栽培する「適作」を行うことで、持続可能な農業生産を展開してきた。その物質循環をコントロールすべく、化学肥料の開発・投入を拡大し、食料の増産と安定化を達成し、人類の人口増を可能にしてきた。
今問われているのは、この適地を担保してきた条件が失われつつあるということである。気候の変化だけではなく、土壌の肥よく度も失われつつある。未来の食料・農業を考える時に、現状の延長上の技術開発や経営革新だけでは追いつかないのではないか。新たな適地を検証するためには、土壌成分、性質、微生物の影響も含めた土壌分布図(SOIL MAP)のビックデータを整備し、50年、100年後にも持続可能な土地条件を析出し、そこで生産可能な作物、農法を再検証する作業が求められている。つまり、フォアキャストではなくバックキャスト志向でこれからの農林水産業の「形」を見定めることが必要なのではないか。「今」小麦、大豆、飼料が輸入できないから水田を転換し、畑作を全国的に増やすことが50年後の食料の安定供給に寄与することになるのか、その地域の50年後の適地に適っているのか、を様々な視点で検証することが研究者の責務である。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(174)食料・農業・農村基本計画(16)食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する目標2025年12月27日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(91)ビスグアニジン【防除学習帖】第330回2025年12月27日 -
農薬の正しい使い方(64)生化学的選択性【今さら聞けない営農情報】第330回2025年12月27日 -
世界が認めたイタリア料理【イタリア通信】2025年12月27日 -
【特殊報】キュウリ黒点根腐病 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【特殊報】ウメ、モモ、スモモにモモヒメヨコバイ 県内で初めて確認 高知県2025年12月26日 -
【注意報】トマト黄化葉巻病 冬春トマト栽培地域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
【注意報】イチゴにハダニ類 県内全域で多発のおそれ 熊本県2025年12月26日 -
バイオマス発電使った大型植物工場行き詰まり 株式会社サラが民事再生 膨れるコスト、資金調達に課題2025年12月26日 -
農業予算250億円増 2兆2956億円 構造転換予算は倍増2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(1)2025年12月26日 -
米政策の温故知新 価格や流通秩序化 確固たる仕組みを JA全中元専務 冨士重夫氏(2)2025年12月26日 -
米卸「鳥取県食」に特別清算命令 競争激化に米価が追い打ち 負債6.5億円2025年12月26日 -
(467)戦略:テロワール化が全てではない...【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月26日 -
【スマート農業の風】(21)スマート農業を家族経営に生かす2025年12月26日 -
JAなめがたしおさい・バイウィルと連携協定を締結 JA三井リース2025年12月26日 -
「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」採択 高野冷凍・工場の省エネ対策を支援 JA三井リース2025年12月26日 -
日本の農畜水産物を世界へ 投資先の輸出企業を紹介 アグリビジネス投資育成2025年12月26日 -
石垣島で「生産」と「消費」から窒素負荷を見える化 国際農研×農研機構2025年12月26日 -
【幹部人事および関係会社人事】井関農機(1月1日付)2025年12月26日


































