【改正農協法成立】現場の反応 組合員対応へ組織再編を 教育文化活動で基盤固め2015年9月14日
インタビュー・JAいわて花巻高橋専太郎代表理事組合長
・機能分担で系統を強化
・全国一丸で輸出振興を
・協同組合を後世に伝承
・准組合員は同じ“村人”
改正農協法が国会で成立し、来年4月に施行される。今回の改正は政府の「農協改革」の考えのもとで行われたものだが、JA自身がどんな農業と地域づくりに貢献していくのかを一層明確にして、法や制度の見直しに対応していくことが求められる。今、現場はどう考えているのか。改正法成立直後に、JAいわて花巻の高橋専太郎組合長に聞いた。
◆機能分担で系統を強化
――改正農協法成立を現場ではどう受け止めていますか。
農協法改正は、全中の一般社団法人化、全農の株式会社、先送りされたが准組合員の差別化(利用制限)などが問題になりました。
今回の法改正が議論されるなかで、農協に対する縛りが強くなり協同組合の自主、自立、民主的運営といった基本理念が揺るがされないか、農業者の声が国や農政に反映できなくなるのではないか、全中、県中の組織見直しでJAグループの総合調整機能に不安がないか、などを現場では強く感じてきました。
ただ、法改正が成立したうえでは、組合員に応えるためにどうJAグループを変えていくかを考えるべきだと思います。
そのなかでとくに思うのは全中や全農の果たす役割、機能分担をきちんとしてほしいということです。
◆全国一丸で輸出振興を
――具体的な課題は?
たとえば米では所得向上に向けて飼料用米の作付け拡大をし、主食用米の在庫を削減する取り組みをやってきました。ただ、消費量も減少し飼料用でも限度があることを考えると、在庫水準を超えた分については輸出も考えるべきです。国内に在庫としてあれば必ず市場に戻って価格に影響を与える。そのときに必要なことが政府と全農が一体となって海外に輸出することです。
所得向上のために輸出が重要だといいますが、各県それぞれが取り組んではだめです。全農本部が機能を発揮し政府と一体となってオールジャパンでやるべきだというのが私の主張です。
その一方で国内向けの主食用米については県本部のもとで産地間競争をする。良い農産物が穫れたときには高く売れる、そういう米を作るように農家を指導していく。良いものが高く売れる市場は必要でそこに主体性をもってわれわれが取り組むということは大事なことです。それを農業所得の向上につなげるということだろうと思います。
組合員のための農協改革は、連合会がこういう機能を発揮すべきではないかということです。さらに子会社を含む全国連、県連の組織統合、スリム化も課題だと思います。
中央会についても私は全中と県中の一体化の方向にいってほしい。むしろ全中の駐在というかたちで各県に必要とされる職員を置く。全国的な調整機能を果たすためにもそういうかたちも考えるべきではないかと思っています。それで全国的な総合調整機能を果たしてほしい。こういうかたちで組織のスリム化をしていきながらJAの賦課金の削減も考えるべきではないでしょうか。
私はJAグループの系統組織自体は絶対に必要だと考えています。この組織がなければ組合員はどうなるか分からない。ただ、今回は組織再編にしっかり取り組むことが必要だということです。
◆協同組合を後世に伝承
――単協では何に取り組みますか。
農村はやはり村人たちがつくってきた農業協同組合が基本です。われわれの先祖がつくったものを大事に後世に引き継いでいかなければならない。これが地方創生であり、地域の活性化につながるということを今考える必要があります。
これを維持していくためにも、協同組合とはどういうものであるか若手の職員にも地域農業の担い手といわれる人たちにもきちんと伝えていかなければなりません。
たとえば、現場の農業生産で肥料や農薬についてわれわれは組合員に押しつけているわけではありません。産地がまとまっておいしい米をつくるために、いもち病やカメムシの被害にあってはならないということから、一斉防除が大切になる。そのために農協は営農指導をしている。いわば産地間競争に負けないように営農指導をするということ。組合員みんなでいいものをつくるための方法です。
もうひとつは産地間競争のためには量を集めなければならない。ところが、産地では収穫期になると商系業者が入って農家から買い取り、それをすぐに市場で売ります。しかし、われわれは今年の米は来年の稲刈りの時期まで低温保管をして1年後まで消費者にきちんと届けようと事業を築いています。こういう共同販売を壊してしまったら安定的に供給するということができず、国民も大変な思いをするのでないか。
そういう系統組織の役割もこの際、広く伝えていくべきだし自らも考える必要がある。こういうことが教育文化活動だと私は思っています。
◆准組合員は同じ"村人"
――准組合員問題をどう考えますか。
村人が村をつくってきたという意味からしても准組合員の利用規制、差別化はまったく実態にあてはまりませんよ。正組合員と准組合員は一体です。
たとえば、われわれのJAでは27支店ごとに支店行動計画を立ててもらっていますが、計画の共通の柱は、持続的農業の確立のほか、混住化社会における次世代組合員との絆づくり、農村の歴史・伝統文化を大切にすることを掲げています。27支店とは、つまり、27の農協です。それが合併をしたわけですが、それぞれの文化を取り上げてしまったらいけませんし、また、それを担い引き継いでいくのに正組合員も准組合員もありません。
支店でのふれあいトークはわれわれ常勤役員が農協の方針や、今の農協法改正の問題点などを伝えていますが、そこに准組合員の方々もいる。正組合員も准組合員も一緒になって、ここで農業をやりたい、暮らしたい、そのためには農協がしっかりしてくれなくては困るよ、という声を受け止め農協運営を考えています。
理事構成もすでにわれわれのJAはほとんどが担い手で、大きな法人の経営者もいれば、青年部の代表もいます。ただ、農協経営をするには担い手だけではできませんが、かといって経営の専門家が入れるべきということではありません。経営の専門家がトップになっても農協の経営はできません。
協同組合の運営には自主、自立、相互扶助という基本的な理念があります。これを分かっていなければ誰もついてきません。われわれの組織・事業には何のために、誰のためにという理念と人のつながりが基本です。
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